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高見六段が先勝:叡王戦第1局を徹底検証

第3期叡王戦七番勝負第1局が名古屋城にて本日行われ、高見泰地六段が76手で金井恒太六段を破り、初のタイトル獲得へ向けて幸先良いスタートを切りました。


用意の秘策

先後はあらかじめ決められており、金井六段の先手で始まった本局は、後手の高見六段が横歩取りへ誘導し、序盤から工夫を見せます。

△4二銀は僅かながら前例はあるもののかなり珍しい一手で、高見六段が本局へ用意してきた秘策でした。横歩取りの後手番では、将来2筋に飛車を戻られた際に歩を打たずに受けるために銀を2二へ上がることがほぼ常識となっており、かなり斬新な一手です。

狙いとしては、先手の出方を見てから玉の位置(6二、5二、4一)を決めようという考えと、2筋に歩を打ってでも銀を中央へ活用するメリットが大きいという、これまでの常識に挑戦する主張が挙げられます。

さらに、本譜の▲3六飛に対して△8五飛と引いた手が前例と別れを告げる高見六段の研究手で、▲2六飛に△2五歩と高い位置で2筋を受けました。以下▲2八飛、△8六歩、▲3三角成、△同桂、▲8八歩と進み、後手が調子よくポイントを重ねているようですが、歩切れになる上に2五歩が将来負担になる可能性もあり、新工夫の成否は微妙だったようです。

格調高さがあだに

▲2五桂を見せられた後手が忙しい局面に見えましたが、ここから▲6六銀、△8五桂、▲2五桂、△4五桂と進んでみると、△9七桂成以下の端攻めを見せられてむしろ先手がせかされる展開になったようです。▲4六歩には△3七角があり、かといって△4五桂を取り切れないようでは▲2五桂との間に大きな働きの差が生じてしまいました。

▲6六銀は駒を中央へ活用する、いかにも金井六段好みの本筋の一手ですが、この場合は歩切れの後手の攻めが細いことに目を付けて▲2九飛と受けに回る順が勝ったようです。次に▲4八金と指されると先手陣が盤石になるため、後手も△8五桂から攻めるしかありませんが、▲8六銀、△9七桂成、▲同銀、△9六歩、▲6六角と進むと、後手が攻めを繋げるのは大変だった気がします。

9筋の端攻めが受からない形でしたが、金井六段も右辺で巧みに手を作り、激戦が続いています。しかしここから▲7五金、△5四飛、▲6五金と進めた手順が疑問で、△5五飛、▲同金と手番を握って△7四桂と反撃した手が厳しく、一気に後手が優位に立ちました。以下は高見六段が素早い寄せを決めて開幕局を制しています。

▲7五金では、筋は悪いものの▲3四桂と俗手で迫り、△5一銀に▲2二竜と合い駒を請求しながら攻めれば局面の均衡は保たれていたようです。とはいえ、△6二玉と早逃げされた直後に▲3四桂と打つ手は非常に違和感を覚える攻め方で、これ以外に互角を保つ指し方がなかったのであれば実戦的には既に先手が勝ちづらい局面なのでしょう。

名人戦と叡王戦

横歩取りの激しい攻め合いには短手数の終局がつきものとはいえ、本局は終盤の入り口で金井六段に致命的なミスが出たことで結果的には差が開いてしまいました。二日前に行われた名人戦第1局の大熱戦の印象が強いこともあり、本局はやや物足りない内容だったと言わざるを得ません。

とはいえ、百戦錬磨のトップ棋士同士が持ち時間9時間で争う名人戦と、タイトル戦初登場の二人による1日制の本局を単純に比較することは酷でしょう。初の大舞台の緊張もほぐれるであろう第2局以降に、改めて熱戦を期待したいところです。

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