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広瀬八段が稲葉八段に勝利、トップ棋士の白熱のねじり合いを徹底検証

第31期竜王戦ランキング1組準決勝、広瀬章人八段vs稲葉陽八段の一戦は、138手で広瀬八段が勝ちました。トップ棋士同士の壮絶な殴り合いとなった熱戦を検証します。


広瀬八段(左)、稲葉八段。出典:日本将棋連盟

避けられない大決戦

後手の広瀬八段の雁木模様の立ち上がりに対し、稲葉八段は早繰り銀から足早に仕掛けました。対して広瀬八段も銀を繰り出し、早くも戦いに突入します。

▲3五歩、△3二金、▲7八金、△6四銀、▲3四歩、△同銀、▲5五銀・・・

両者が全く妥協せずに最強の手を選び続けた結果ですが、まずは玉を囲ってから、という一昔前の固定観念が全く通用しなくなった現代将棋を象徴するような激しさです。

角のタダ捨て

△2八角と打ち込まれた手に対し、平凡に▲3七角と合わせる手も有力で、△同角成、▲同飛(▲同桂は△4四銀、▲3六飛、△2七角)、△2八角、▲7四角といった進行もありそうでした。しかし稲葉八段は▲4三角(!)と強烈な踏み込みを見せます。

▲4三銀だと△3三金という受けがあるとはいえ、まだ中盤戦が続きそうな局面でいきなり角をタダで捨てる手は滅多に見られません。しかし△同金、▲3一飛成、△4一歩、▲2一竜、△1九角成、▲3二歩と進むと、後手は角得ながら玉の安全度に大きな差があり、形勢はバランスが取れています。

再生する玉

巧みに玉を早逃げした後手が反撃に転じ、大量の成駒に迫られた先手は受けが難しそうですが、▲5八桂がしぶとい一手。5八の地点を埋めるとともに、4六馬を消すことが出来れば先手玉は左辺への脱出路が大きく開けます。本譜も△5七馬、▲3八金、△同馬、▲6八銀打と進み、先手玉は見違えるほど耐久力が上がりました。

先ほど稲葉八段が▲4三角と打ち込んだ局面と比べると、30手以上も壮絶な攻め合いが続いていますが、いつの間にか両者の玉の安全度が上がっています。戦いながら自陣に手を入れる呼吸は強者同士ならではの技です。

△8六歩で眠っていた後手の飛車に活が入りましたが、▲9五角が攻防手となる絶好の切り返しです。△8四銀、▲8六角、△8五歩、▲6四角、△同歩に、▲5九歩と打った形が非常に堅く、先手優勢が見えてきました。手順中で△8五歩と催促した手がやや甘く、△8八歩からあくまでも攻め続けた方が良かったようです。

最終盤のミス

後手が再び猛攻を仕掛けていますが、ここで構わず▲2三竜と引いていれば先手に分のある形勢でした。△8六銀と出られると部分的には受けがない形ですが、▲5三竜、△6三金に▲7四香から王手の連続で8六銀を外す手順があって先手の勝ちになります。

本譜は▲7八玉と立った手が疑問手で、△5六銀と退路を塞がれてかえって受けづらくなってしまいました。先手も▲7四銀から後手玉に肉薄したものの、手順に自玉の詰めろを解除することは出来ず、最後は広瀬八段が華麗な即詰みに討ち取りました。

本局は現代将棋を象徴するような積極的な序盤から大決戦となりましたが、そこから形勢不明のねじり合いが延々と続きました。稲葉八段としては最終盤のミスが悔やまれるところでしょうが、各棋戦で上位に顔を出しているトップ棋士同士らしい大熱戦だったと思います。

勝った広瀬八段は1組決勝へ進出し、決勝トーナメント入りも確定させました。2月の朝日杯決勝では藤井六段に一方的に敗れた印象が残ってしまいましたが、それでも年明け以降は強敵との対戦ばかりが続く中で10勝4敗と好調を維持しています。1組からの出場者のシードが大きい(1組優勝者は決勝トーナメントベスト4、準優勝者はベスト8から登場)竜王戦では、久しぶりのタイトル戦出場を虎視眈々と狙っているでしょう。

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