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藤井六段が大石七段に勝利、秘術を尽くした逆転勝ちを徹底検証

第44期棋王戦予選、大石直嗣vs藤井聡太六段の対局は、133手で藤井六段が勝ちました。藤井六段が終盤の巧みな粘りで逆転勝ちを収めた一局を検証します。


玉頭位取り

後手の大石六段のダイレクト向かい飛車に対し、藤井六段は玉頭位取りへ。

藤井六段は今月5日の古森悠太四段戦でも角交換振り飛車に対して位取りを採用しており、中盤で厚みを活かしてじわじわと優位を広げる指し回しを好まれているようです。

しかし、本局はその中盤で珍しく見落としがありました。

盲点の返し技

先手に玉頭で圧倒的な厚みを築かれてゆっくり出来ない大石七段は、ここで△2五歩と技を掛けに行きました。▲同桂、△2三歩に、藤井六段はノータイムで▲3四飛と寄りましたが、△3一飛が狙いすました一着でした。先手の桂を手順に呼び込む考えづらい順ですが、この場合は3四飛の捕獲が間に合う形で、藤井六段は長考を余儀なくされました。

▲3四飛では▲3三桂成、△2四歩、▲3二成桂とシンプルに攻め合えば、次の▲4二成桂~▲4三成桂が厳しく先手が優勢でした。本譜は3四飛を助ける代償に後手の駒を存分に捌かせてしまい、藤井六段としては▲3四飛が悔やまれる展開となってしまいました。

頑強な自陣飛車

一段目がスカスカの先手陣に対し、△2九飛と打たれた手が非常に厳しい局面ですが、ここで▲8九飛が粘り強い受けでした。△同飛成だと▲同玉、△2九飛に▲7九歩と打ち、単に▲7九歩と受ける手と比べ▲8九玉の一手が右辺から遠ざかる分だけ得になります。ただし、後手としてはそれでもこの手順に進めた方が良かったようです。

本譜は▲8九飛に対して△2八飛成と逃げたため、▲2九歩、△1九竜、▲8五歩と進み、瞬間的に先手の飛車の働きが後手の竜を上回る形となり、後手優勢ながら嫌味がある形になりました。

粘り勝ち

藤井六段が巧みに局面を複雑化していますが、ここでじっと△7四歩と傷を消しておけば後手が優位を保てたようです。▲6二歩成には△5五桂、▲同歩、△6二銀とさらに面倒を見ておけば、玉頭に傷を抱えた先手からは強く戦えません。

本譜は△8六桂と決めに出た手が危険で、▲7八桂、△同桂成、▲同玉、△8六香、▲8七歩、△5八銀に▲2八金が頑強な受けで形勢が入れ替わりました。▲7五桂や▲8六歩~▲8五歩を見せられて忙しくなった後手は△8七香成、▲同銀、△6五歩から強引に攻め続けましたが、持ち駒を蓄えた藤井六段が最後は一気の反撃を決めて逆転勝ちを収めました。

本局は藤井六段には珍しい見落としがあったようで、大石七段が中盤でリードを奪いましたが、そこから藤井六段が局面を複雑化させる巧みな粘りで相手のミスを引き出しました。△3一飛と寄られた局面は先手がかなり困っていたと思いますが、そこから大石七段には40手近くも目立った疑問手がなかったにもかかわらず決定打も得られなかったのは、藤井六段の逆転術のなせる業でしょう。

藤井六段はこれで今年度3戦全勝となりました。昨年度の勢いを持続させたまま、5月には史上最年少の七段昇段が懸かる竜王戦(5組準決勝で船江恒平六段と対戦)や、タイトル挑戦を目指す王座戦(決勝トーナメント1回戦で屋敷伸之九段と対戦)の大勝負を迎えます。

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