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藤井七段が里見女流四冠に勝利、稲妻をも抜き去った一瞬の斬れ味を徹底検証

第90期ヒューリック杯棋聖戦1次予選、藤井聡太七段vs里見香奈女流四冠の対局は、藤井七段が82手で勝利しました。


出典:Abema TV

里見女流四冠の先手中飛車に対し、藤井七段は2枚銀を繰り出す急戦調の構えで対抗しました。

先手が5筋の歩を交換した局面。先月行われた王位戦第1局でも出現するなど、前例も多い形ですが、ここで藤井七段が△6二金と上がったのが珍しい一手でした。桂にひもを付けることで先手が狙う▲7五歩の桂頭攻めに対して△8四飛と浮きやすくし、将来の▲5四歩に対して△5二歩と受けるスペースを作るなどの含みがありますが、玉形が薄いだけに実戦的な指しづらさはあります。しかし本譜の▲5九飛に対して文字通りノータイムで△8一飛と引いたことを見ると、角換わりなどでも頻繁に表れる△8一飛+△6二金型のバランスの良さを藤井七段は非常に高く評価されているのでしょう。

ただし、本局ではこの後里見女流四冠がテンポ良く自然な指し手を積み重ねたのに対し、藤井七段は考慮を強いられる場面が目立ち、持ち時間各1時間の対局にも関わらず30分以上の差がつく展開となりました。

先手にいつでも▲4五歩~▲5五銀と決戦を挑む権利が生じており、後手がかなり忙しい局面です。5筋の位を死守することは難しいですが、藤井七段は▲4五歩と突かれる手を嫌って△5三銀左と攻めを催促しました。以下▲5五銀、△同銀に、▲同角も有力でしたが、本譜は里見女流四冠が▲同飛を選択し、次の局面へ:

ここで△1五歩と突いたのが急所の反撃でした。藤井七段の将棋には絶妙なタイミングで端を突く手が目立つ気がしますが、本局も十数手後にこの突き捨てが絶大な効果を発揮します。

△1五歩以下、▲同歩、△5五角、▲同角、△4四銀、▲6六角、△5七銀と進みました:

△5七銀に代えて自然な△4九飛だと▲5九歩で攻めを切らされかねないため、△5七銀はやむを得ない一手でしたが、貴重な持ち駒を打って当たりを掛けた6六角は先手玉と反対側にいる上にひもが付いているため、重たい印象も受けます。そのため里見女流四冠も手抜いて▲4五歩と攻め合いましたが、結果的にこの手が疑問手となりました。

以下△6六銀成、▲4四歩に△同歩が意表の対応でした。▲6六歩で2枚替えとなるため読みを打ち切ってしまいそうですが、そこで△1八歩が先ほどの1筋の突き捨てを活かした痛打になりました。

以下▲同香に△4九飛が金取りと△1九角を見た厳しい攻めです。そこで▲2五銀と玉頭に投入し、△6九飛成に▲3四銀と斬り込めば、やや苦しいながら先手にもまだ勝機はありそうでしたが、実戦的には金をタダで取らせる手順は相当選びづらいでしょう。本譜は△4九飛に▲5八銀打、△1九角と進み、藤井七段が着実に寄せ切りました。

本局は手数こそ82手と短かったものの、藤井七段が中盤の難所で持ち時間に30分近い差を付けられた状態で1分将棋に突入するなど、先手が作戦勝ちの時間が長く続きました。里見女流四冠としては終盤に持ち時間を温存した上でリードを奪う理想的な展開となりつつあっただけに、△4四同歩~△1八歩を軽視したと思われる▲4五歩の踏み込みが悔やまれるところでしょう。今後は他の男性棋戦でも活躍が期待されます。

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