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プロとアマの実力差ってどれくらい?

プロ、アマ、女流棋士、奨励会員の実力は?

将棋の世界のプロとアマチュアの実力差は、他の競技と比べても非常に大きいと思います。例えば、プロ野球では毎年アマチュアから100名以上がドラフトにかかり、数名は1年目から1軍である程度の結果を残しています。しかし、将棋界はプロになるには原則として奨励会を突破するしかないため、アマチュア時代に天才と呼ばれたライバル達との競争に勝ち抜いた方々しかプロになれません。


そのような背景もあり、アマチュアの全国大会で上位入賞を果たしたトップアマでも、プロ棋戦での勝率は4割以下です。アマチュアは予選からの参加であることを考えると、予選を免除されるトップ棋士とアマチュアとの間には更に差があることになります。

では、プロとアマ、女流棋士、奨励会員等の実力差はどの程度なのか?この漠然としたテーマを、出来る限り客観的な根拠を示しつつ解き明かしたいと思います。

トップ棋士 vs 平均的棋士:

トップ棋士勝率7割?

年間勝率ランキングでは、例年7割後半程度が1位となっており、予選から勝ち星を稼いだ若手が上位を占めるケースが目立ちます。予選を勝ち上がって勢いに乗る若手と実績のあるトップ棋士との勝率が5割と仮定すると、トップ棋士が予選から出場して平均的棋士と対戦していれば、勝率7割程度はあるでしょう。

新四段 vs 平均的棋士:

新四段勝率6割

三段リーグを勝ち抜いた直後の新四段は、平均6割程度勝つようです。もちろん、直近では藤井六段の存在もあってこの数値は長期的平均化から大きく乖離しています。

平均的棋士 vs トップアマ:

平均的棋士勝率6割強

アマチュアの全国大会で上位入賞を果たしたトップアマでも、プロ棋戦で勝つのは容易ではありません。また、プロ入り後の年数の少ない順にプロ側の対局者が決まる朝日杯では、毎年恒例となっているプロアマ一斉対局でのプロ側の勝率は約7割6分とさらに高くなっています。

ちなみに、アマチュアからプロ入りを果たした瀬川五段と今泉四段は、アマチュア時代に「プロ棋戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上」という極めて高いハードルをクリアして、プロ編入試験の受験資格を獲得されています。ただし、この両者は共に元奨励会三段であり、元々プロに極めて近かった実力をアマチュア転向後に更に向上された数少ない例です。

平均的棋士 vs トップ女流棋士

平均的棋士勝率6割強?

ここ数年のプロ棋戦における女流棋士の勝率は2割以下ですが、これは女流棋界の絶対的な第一人者である里見女流五冠が、奨励会三段という立場により女流枠から男性棋戦に参加していなかったことが大きく影響しています。奨励会三段の上位陣が参加出来るプロ棋戦では三段が5割近い勝率を残すことが多いことから、里見女流五冠を含めた「トップ女流棋士」の実際の勝率は、トップアマと同程度となる3-4割程度ではないでしょうか。

ちなみに、里見さんは2018年2月18日に行われた三段リーグで7勝9敗となり、勝ち越し延長の目がなくなったため、年齢制限により残念ながら奨励会退会が決まりました。ただし、今後女流棋士として男性棋戦に参加し、「10勝以上かつ勝率6割5分以上」という基準をクリアすれば、プロ編入試験の受験資格を得ることが出来ます。

平均的棋士 vs 奨励会6級≒アマ五段≒女流2級

飛車落ち

奨励会に入会するためには、一般的にアマ五段程度の実力が必要だと言われています。これは「研修会」という、将棋連盟が主催する少年少女の養成機関の制度からも裏付けられます。研修会では会員同士の対局と、プロ棋士との対局の成績をもとに、A1を筆頭にA2、B1、B2・・・という順番でクラスが決められます。プロと対局する際、Bクラスは飛車落ち、Cクラスは飛車香落ちで対局するのですが、研修生が奨励会試験を受験した際、例年Cクラスの会員が当落線上となるケースが多いようです。また、A2クラスへ昇級すると(≒プロに飛車落ちで大きく勝ち越せるようになると)、15歳以下であれば自動的に奨励会6級へ編入する資格が与えられます。そのため、プロ棋士に飛車落ちで互角以上に渡り合えれば、奨励会へ入会し得る実力者だと言えそうです。

また、研修会には女流棋士を目指す方も所属しています。C1クラスへ昇級すると女流3級の資格が与えられ、2年以内に女流棋戦で一定の成績を上げると女流2級へ昇級し、正式に女流棋士となります。そのため、奨励会6級、女流2級、及び研修会Bクラスは、比較的近い実力だと言えるでしょう。

ちなみに、研修会では指導する側のプロ棋士へ支払われる手当が、棋士の成績によって変動するそうです。そのため、一般的な指導対局と比べるとプロ側の本気度も増すため、研修会での対局はかなりシビアなものになります。アマ有段者以上の棋力があり、奨励会を目指すのであれば、これほど適した環境はないでしょう。

将棋ソフト vs トップ棋士

香落ち~角落ち?

これはもはや想像の領域で、異論もあるとは思いますが、2017年の電王戦でPONANZAが佐藤名人に2連勝したことに象徴されるように、将棋ソフトの実力はトップ棋士を凌駕しています。一般的に平手で勝率7-8割であれば香落ちの手合いだと言われますが、様々な棋士の発言を総合すると既に将棋ソフトの対プロ棋士の勝率はそれ以上だと思われます。

ただし、香落ちと角落ちとの間には非常に大きな差があり、角落ちとなると上手から見て下手が明らかな疑問手を何手か指さない限り逆転は困難です。羽生竜王も以前、「将棋の神様と、角落ちならなんとか、香落ちではだめですね」と語っており、将棋ソフトが将棋の必勝法を解明しない限り、角落ちではプロ棋士が勝ち越すでしょう。

いかがだったでしょうか?アマ五段と言えば殆どの場合知り合いの中では最強でしょうし、初心者にとっては八枚落ちでも勝てない神のような存在です。しかし、そんなアマ強豪でも、プロを目指す奨励会においては一番下の6級になれるかどうかというレベルであり、更にアマチュア棋界でトップに上り詰めた方でもプロに勝つことは容易ではありません。そんなプロの中でも30年近く第一線で活躍している羽生竜王や、その時代を崩そうとしている藤井六段の実力とは・・・想像しただけでぞくぞくしますね!​​​

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