将棋界に数々の伝説を残したレジェンド、加藤一二三九段。中でもおやつに関しする逸話の数は他の棋士の追随を許しません。そんな加藤九段が歴代の名棋士達との勝負で魅せた、傑作おやつエピソードをご紹介します。
1981年、加藤十段と米長棋聖は十段戦で激突しました。当時トップ棋士同士の二人は他棋戦でも頻繁に対戦しており、米長棋聖いわく「気は合わないけど、顔は合う」ライバル関係でした。
対局場の係の方:「おやつは何にされますか?」
加藤:「あっ!ええ!みかんをお願いします!皿に一杯で!ハイ」
米長:「加藤さんと同じものを。量は加藤さんのより多くしてね」
昼下がり、対局場には大量のみかんが。加藤十段が黙々と食べ始めると、米長棋聖も負けじと応戦します。両者共に指し手もそこそこに、一説には2時間以上もみかんを食べ続けました。異例の事態に、ついに記録係が耐え切れずに別室にいた立会人に「部屋がみかん臭くて死にそうです」。
中継カメラなどなかった当時。慌てて立会人が対局場へ駆けつけると、そこには大量のみかんの皮と、手を黄色に変色させた両対局者が・・・。ちなみにこのタイトル戦はみかん合戦でも優勢だった加藤十段が見事に防衛を果たしました。
「私はかつて鍋焼きうどんとざるそばを一度に食べたことがあります」
「カキフライ定食と、グリルチキン定食を一度に2つ食べたこともある」
「大阪の将棋会館で対局がある時は、鍋焼きうどんと、おにぎりを6つ頼んでいます」
(「将棋世界」2017年3月号、加藤一二三九段と藤井聡太四段の対談より)
63年にも及ぶ加藤九段の長い棋士人生を支えたのは、未だ衰えない食欲に象徴される、体力の充実だったのですね。