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あの棋士愛用のブランドは?勝負を分ける、将棋界の眼鏡事情

棋士には眼鏡を掛けている方が多い印象がありますが、実際に眼鏡が勝負に影響を及ぼすことも多いようです。そこで、将棋界における眼鏡にまつわるエピソードや、人気棋士が愛用している眼鏡のブランドをご紹介します。


棋士は眼鏡が多い?

将棋連盟のプロフィール写真では、約6割の棋士が眼鏡を掛けています。日本人の眼鏡使用率(コンタクトレンズとの併用を除く)は約45%らしいので、やはり一般と比べても棋士は眼鏡愛用者が多いようです。目を酷使する職業柄、視力が低下しやすいことに加え、長時間の対局中には眼鏡を外して目を休めたいこともあるでしょうから、コンタクトレンズよりも眼鏡が好まれるのかも知れません。

不調の原因は眼鏡?

1984年、十段戦第1局に敗れた直後の中原誠16世名人は、ある将棋ファンからの手紙で眼鏡が合っていないのではないか、と指摘され、視力検査へ行ってみました。

「そうすると驚いたのは、ファンの方の推測通りで、やはり目が悪かったのです。そこで指摘されたのが、盤上と目の距離が近くても「駒がボンヤリ見えているのと、はっきり見えているのは違う」とのことでした。

(中略)

将棋は頭で考えているようですが、目で考えている部分もかなりあるのです。ともかく、メガネを新しいのに取り替えてみました。

すると、これが実にいいんです。

ウン、よし・・・頑張るぞと、自信が戻ってきたのです。実際に十段戦の第二局・第三局と連勝しましたし、それから一年間ほどは勝率が七割ぐらいはいったでしょうか。

このことが契機に、いまでもちょっと変だなと感じたら、すぐに視力検査へ行くようにしています。」

(「将棋マガジン」1989年5月号より)

また、2011年に羽生名人が名人戦で3連敗を喫した際、中原16世名人は知人を介して眼鏡が合っていないのではないか、とアドバイスを送っています。すると、4月に入ってから5月15日まで1勝5敗だった羽生名人は、5月17日から6月28日まで10勝1敗と急激に調子を回復します(ただしその1敗はフルセットまで持ち込んだ名人戦第7局で、残念ながら名人は失ってしまいます)。後に羽生名人からはお礼のファックスが届いたそうです。

勝負を分けた眼鏡

2008年、羽生4冠が渡辺竜王に挑戦した竜王戦は、勝った方が初代永世竜王という歴史的なシリーズでした。

将棋名局集「初代永世竜王」:羽生vs渡辺 第21期竜王戦第7局

当時の渡辺竜王のブログによると、第1局がフランスで開催されるため、予備の眼鏡を作られたそうです。竜王戦の途中からは新調したその眼鏡を使い始めたようで、その効果もあってか、将棋界初の3連敗後の4連勝という大逆転で竜王位を死守しました。その後は2010年の竜王戦、2011年の王座戦で立て続けに羽生さんを下すなど、充実期を迎えます。

しかし、2011年末頃に羽生さんが眼鏡を新調すると、翌年は7割5分の高勝率を記録し、渡辺2冠からも王座を奪い返します。将棋界初の3冠対3冠の対決となった翌年の棋聖戦でも、羽生さんに軍配が上がっています。

将棋名局集「△6六銀」:渡辺vs羽生 第60期王座戦第4局

やはり眼鏡を新調するとしばらくは勝敗にも好影響があるのかも知れません。

眼鏡にまつわる不運も

眼鏡との相性がよろしくないのが、佐藤康光九段です。過去には様々な苦労を経験しています。

1991年、早指し新鋭戦で優勝した佐藤五段の実戦記によると:

対局前日、私は電車に乗っている最中にメガネのレンズが突然ポロリと落ちて割れてしまうというアクシデントに見舞われました。

とりあえずスペアのメガネをかけていたのですが正直言って私好みのメガネではなく、このメガネでプラウン管に映ったらイヤだなーと思っていたのですが、運良く対局当日に修理が間に合い、ホッとして対局場に向かいました。

(「将棋世界」1991年8月号より)

さらに、1997年に竜王戦の副立会人としてオーストラリアへ行った佐藤八段は、海で眼鏡を紛失してしまいます。同行していた先崎六段によると:

モテ光君の顔を見てあれっと思った。眼鏡がいつものではない。昔のイタリア映画で詐欺師がしているような、細くて小さい眼鏡をしている。

「おっ一段と遊び人ぽくなってきたねえ」

「いや違うんです。来てすぐに眼鏡をなくしまして」

「なんだい飛行機から落としたのかい」

「はあ、窓が開くわけないでしょう。海でなくしたんです」

なんでも海で泳いでいたら波にさらわれたらしく、あわてて現地であつらえたらしい。

「馬鹿だなあ、眼鏡をかけたまま泳ぐやつがいるかよ」

「いや腰ぐらいまでだったんです。ひどいんですよ。突然高い波がきまして」

言い訳をすればする程おかしい。モテ光君、すっかりドジ光君である。

(「将棋世界」1998年1月号より)

極めつけは、タイトル戦の対局中にもハプニングに見舞われています。2002年に棋聖戦へ挑戦中だった佐藤王将は:

午前中、△4四歩と指して郷田棋聖の考慮中、珍事があった。目を少し休めようと思い眼鏡を外そうとしたらフレームの付け根が折れてしまった。さすがに初めてであった。

顔に力が入りすぎたのだろうか。

幸いスペアを持っていたので事なきを得る。もっともこのスペアも壊れないとも限らない。控室に行き、修理していただくようにお願いした。

(中略)

話はそれるが昔、コンタクトにしようか迷ったことがある。

今でもたまに考えるときがある。

眼になじまなかった、ということもあるが、とある人に「顔に迫力がなくなる」と言われ、それから結局どういう訳か現在に至っている。何気ない一言で決めることもありますね。

いつも行っている美容室の店員に「外した方がカッコいいですよ」と言われると、そうしようかなという気になるときもあるが・・・

(「将棋世界」2002年8月号より)

さすがにこれほど不運が重なるとコンタクトにしたくなりそうな気もしますが、棋士という職業柄、簡単には決断できない事情もあるようです。

有名棋士愛用のブランド

出典:「将棋の渡辺くん」別冊少年マガジン2017年6月号

羽生善治竜王

現在使用しているのはZoffのZoff Smart、ZJ51019_B-1です。奥様のツイートから一躍有名になりましたね。

以前はCharmant(シャルマン)のラインアートシャルマンを使用されていました。

渡辺明棋王

999.9(フォーナインズ)、S-251T

谷川浩司九段

Eyemetrics(アイメトリクス)、ミストミント

佐藤康光九段

メガネの三城(モデル名は不明)

なお、他の棋士の眼鏡のブランドが分かる方がいらっしゃいましたら、コメントにてご教授頂けると幸いです。

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