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将棋名局集「初代永世竜王」:羽生vs渡辺 第21期竜王戦第7局

time 2018/02/23

2017年の竜王戦で羽生棋聖は渡辺竜王を破り、史上初の永世7冠を達成しました。しかし、最後の永世称号となった永世竜王位は、獲得まで後1期に迫りながら、過去に2度渡辺竜王にタイトル戦で敗れてチャンスを逃しています。本局は永世竜王位に王手を掛けて臨んだ最初のシリーズの最終局です。


第21期竜王戦七番勝負第7局

2008年12月17日
羽生善治4冠(3勝) vs 渡辺明竜王(3勝)
対局場:山形県天童市「ほほえみの宿 滝の湯」
持ち時間:各8時間

羽生4冠はこの年名人に復位し、永世名人の資格を獲得しています。同時に2004年以来となる4冠に返り咲き、満を持して竜王戦に登場してきました。通算7期獲得による永世竜王位まで後1期です。

一方、2004年に森内俊之竜王からタイトルを奪取し、二十歳にして一躍トップ棋士に躍り出た渡辺竜王。その後も難敵相手に防衛を重ね、こちらも連続5期獲得での永世竜王位に王手を掛けています。

勝った方が初代永世竜王という大勝負は、羽生4冠が3連勝で一気に王手を掛けます。しかし、第4局で渡辺竜王が「何度も負けを覚悟した将棋なのに、なぜ自分が勝っているのかがわかりませんでした」と語る逆転勝ちを収めたのを境に流れが一変し、第5、6局は渡辺竜王の快勝となります。

永世竜王位を賭けた第7局は、後手の渡辺竜王が第6局に引き続き急戦矢倉を採用しました。

5筋を交換した後手は、この後角を7三へ引こうとしています。通常の矢倉では3一~6四~7三と3手かけて角を7三の好位置へ移動させるのを、5五~7三の2手で済ませて手得し、さらに同時に5筋の歩交換も済ませてしまおう、というやや欲張った構想なわけです。それを許しては面白くないので、先手は後手の体制が整う前に速攻を仕掛けたいところです。

第6局では羽生4冠は▲7九角と引き、△7三角、▲4六角、△6四銀に▲7五歩と仕掛けましたが、その後渡辺竜王に新手が出て短手数で敗れています。

本局では▲2五歩、△3三銀に▲6五歩と突き、左銀で後手の角へプレッシャーを掛けに行きました。

一気に決戦へ

速攻の方針に基づき、先手は▲7五歩、△同歩、▲8六歩、△同歩、▲8二歩と攻め続けます。通常は自分の玉に近い場所で戦いを起こすのは良くないのですが、この場合は後手の攻撃態勢がまだ整っていないため、成立しているようです。ただし、この後先手は香得の戦果を挙げますが、後手も戦力を手順に中央へ集結させ、一進一退の攻防が続きます。

ここから▲6三歩成、△同金、▲6四銀、△6二飛、▲5二香成と踏み込む手順を、渡辺竜王は軽視していたと語っています。後手の攻め駒も先手玉へ迫っていますが、それ以上に先手の金得が大きく、羽生4冠がややペースを握ったようです。

ここで先手は▲6一飛、△4一香、▲5四銀成と指しました。2筋の拠点との挟撃体制を目指して左辺から攻めつつ、飛車を6筋から自陣にも効かせた味の良い手順のようですが、△3五角とぶつけられて形勢を損ねました。2筋と自陣に同時に効く絶好の位置にいる4六の角との交換を迫られ、先手と後手の玉の安全度が一気に逆転しています。

▲6一飛では、▲2二銀、△同銀、▲同歩成、△同玉、▲2三銀(△同玉は▲2四飛以下寄り)、△3一玉と形を決めてから▲4八飛と駒を補充しておけば、先手が優勢を維持できたようです。

しかし、羽生4冠も玉を上部へ脱出しながら粘り、決め手を与えません。

二転三転

ここで△6四歩と打った手が危険でした。▲6六角が詰めろ逃れの詰めろとなる絶好の一手で、形勢は急接近します。

正着は△7六銀だったようですが、この局面での残り時間は先手が4分、後手が6分。竜王位を賭けた大一番ということもあり、ここではすでに棋力だけではなく、指運や精神力の絡んだ勝負になっていたのかも知れません。

運命の分かれ道

ここが最後の勝負所でした。この瞬間先手玉は詰めろではなく、後手玉には有力な詰めろの掛け方が2通りあります。しかし、後手にも先手玉に王手を続けながら自玉を安全にする手段が残されており、局面は難解を極めます。

▲4八飛なら先手の勝ち筋だったようですが、管理人の棋力ではその結論を聞かされても「そうなんだ」と思うだけで、完全には理解できません(^-^;。実戦は▲2四飛と走ったため、△6四歩、▲5五玉に△4四銀打から攻めながら先手の攻め駒を一掃出来る展開となり、後手が勝ちになりました。

名勝負に名局なし、という言葉があるように、トップ棋士同士がタイトル戦などの大舞台で戦っても、ちょっとした調子の差などで思いがけず一方的な展開になってしまうこともあります。しかし本局は、勝者が初代永世竜王という歴史的な大一番で、内容も非常に濃密な大熱戦となりました。

渡辺竜王は本局を制し、その後2012年まで前人未到の竜王9連覇を果たします。羽生世代がタイトルを独占する中、孤軍奮闘する渡辺竜王の超一流としての評価を確固たるものとしたのが、本局での勝利だったのではないでしょうか。

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