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詰将棋を少しでも早く解くための、実戦では役に立たないテクニック

time 2018/03/26

藤井聡太六段の4連覇で幕を閉じた、今年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦。そのあまりの解答速度に、参加した他の棋士からも白旗が上がっています。


出典:Abema Times

優勝は藤井六段ですがまあ順当すぎて特にコメントすることがありません(笑)

(「広瀬章人の一喜一憂ブログ」より)

今年の詰将棋解答選手権は9位までを棋士と奨励会三段が独占したように、詰将棋の能力と将棋の棋力はある程度比例しますが、過去には詰将棋作家が優勝した例もあります。今年3位に入った及川拓馬六段も詰将棋作家としても知られており、詰将棋への慣れも解答速度に影響を及ぼすようです。

そこで、将棋の実戦ではあまり役に立たない、詰将棋ならではのテクニックをいくつかご紹介します。ただし、詰将棋を棋力向上のための筋トレのようなものだとすると、これから触れるテクニックはドーピングをしてベンチプレスの重量を上げるようなものです。増田康広五段なら間違いなく「だから詰将棋は意味ないんですよ」と言うでしょうから、取り入れるかどうかはあくまでも自己責任です。

その1:焦点があれば捨ててみる

詰将棋には作品の芸術性を追求するという側面もあるため、実戦と比べて捨て駒が多く取り入れられる傾向があります。特に焦点(相手の駒が二つ以上利いている地点)への捨て駒は見た目のインパクトが大きく、詰将棋作家に好まれます。そのため、盤上に焦点の捨て駒となる王手があれば、深く考えずにまずはその手から考えましょう。特に飛車、角、香が利いている焦点は、捨て駒を取らせることによって守備駒の可動域が大きく変化するので、そこから活路が開けるケースが多いです。

例として、今年の詰将棋解答選手権チャンピオン戦で実際に出題された問題を見てみます。

作者:柳田明

第15回詰将棋解答選手権チャンピオン戦 第2ラウンド 第6問

ここでは3五の地点が飛車、角を含め3枚もの守備駒が利いている「焦点」なので、初手は見る聞くなしに▲3五香と打つ一手です。意味を深く考える必要はありません。

△同飛に、次も相手の飛車と角が利いている3三へ取り合えず▲3三金と捨てます。△同飛は▲4一馬以下詰むので、△同角の一手。ここまで進むと、3三角がいなければ▲4一馬と寄れることに気が付くので、次の▲4四桂も見えるはずです。以下△同角、▲4一馬、△3三玉、▲2三金、△同香、▲4二馬までの詰みとなります。

▲4四桂を打ってから△2三玉と上がる手を読めば、▲4一馬、△2四玉、▲1四馬までで詰む変化も容易に発見出来るはずで、この時点で初めて▲3五香と▲3三金の意味(▲1四馬に対する3五への逃げ道封鎖と、▲4一馬に対する△3二合を消す)に気づけばいいわけです。焦点へ捨て駒を放つ必然性を初めから論理的に考えるのに比べ、効率的に正解にたどり着けるはずです。

その2:金はトドメに残し、銀は早めに使う

「金はトドメに残せ」という有名な終盤の格言があるように、玉と金という二つの駒の性質上、最後の詰め上がりは金打ちまでとなるパターンが多く見られます。これは詰将棋のみならず実戦にも応用出来る考え方です。

一方、短編詰将棋に限ると、「銀は初手に使え」という格言も成立するようです。かなり昔ですが、持ち駒に特定の駒がある際に、その駒が初手と最終手に使用される割合を調べた方がいました:

私の手元にある詰将棋集は、全部で10冊、すべて作者は異なり、手数としては5手詰から11手詰の短編が殆どである。

さて、結果は次の通りであった。

  1. 金を持ち駒に使うもの総数329局。初手金打ち92局(28%)。終手金打ち106局(32%)
  2. 銀を持ち駒に使うもの総数248局。初手銀打ち110局(44%)。終手銀打ち18局(7%)
  3. 桂を持ち駒に使うもの総数259局。初手桂打ち64局(25%)。終手桂打ち56局(22%)
  4. 香を持ち駒に使うもの総数51局。初手香打ち19局(37%)。終手香打ち4局(8%)

こうしてみると、「金はトドメに使え」という格言は、32%の高率で確認することができた。しかし、それ以上に注目すべきは、持ち駒としての銀の使われ方である。実に44%が初手に使われているのだ。この事実から、短編詰将棋においては「銀は初手に使え」という新格言が成立する、と言って差し支えあるまい。

(「将棋世界」1981年2月号より)

個人差はあるでしょうが、詰将棋作家が11手詰までの限られた手数の中で作品を表現しようとすると、初手は銀打ちから入ることが多いようです。初手に迷ったら、まずは銀打ちから考えてみましょう。

その3:大駒はまず近づけて打ち、詰まなければ可能な限り離して打つ

これは詰将棋作家の言葉として、ある棋士が紹介していた言葉です。例えば、玉が1三にいて、持ち駒の飛車を1筋へ打って上から王手をする手を読む場合、まずは▲1四飛を読み、次に▲1九飛を読め、ということです(「可能な限り離して」なので、例えば△2八飛が存在し、1八より下から打つと容易に受けられてしまうような場合は、▲1四飛の次に▲1七飛を読みます)。

これは、詰将棋には「唯一の詰み手順」である、という制約があることを逆手に取った考え方です。先ほどの例で仮に飛車で王手をすることが正解だとすると、1四~1九の6通りの王手のうち1種類だけ詰み、残りは詰まないということになります。ということは、6種類の中で最も他の5種類と性質が違う王手が正解である可能性が高いわけです。

▲1四飛~▲1九飛の中で最も性質が違う可能性が高いのは、捨て駒であることも考えられる▲1四飛でしょう。その次は、「大駒は近づけて受けよ」という格言の逆の発想で、大駒は遠くから打った方が強力であることが多いので、駒の性能を最大限に発揮させる▲1九飛が有力となるわけです。

なお、複数ある打ち場所の中でいくつかは敵陣にある(大駒が後に成ることが出来る)場合はこの法則は当てはまらず、成れる位置から考えます(「成れる位置」が「成れない位置」とは「性質が違う王手」だからです)。

詰将棋において大駒を打つ位置を限定される理由は他にも存在するので、この法則には例外も数多く存在します。しかし、「その1」でご紹介した「焦点に捨ててみる」という考え方と同じように、「何故大駒を特定の位置に打つのか」を論理的に考えるのではなく、「詰将棋の傾向として近づけて打つか最も離して打つ確率が高い」という経験則に基づいて読むべき手を絞って行けば、結果的に早く正解へたどり着ける可能性は高まるはずです。

その4:都合が良さそうな受けから順に考える

読みを進める過程で玉方の受けが複数ある場合、直感的に最も詰みそうに思える順から考えます。その順が実際に簡単に詰んでしまえば、元の分岐点へ戻って他の逃げ方を正攻法で考えて行きます。

仮にその最も詰みそうな順でさえも詰まなければ、そもそもそこへ至るまでの攻め方が間違っていた可能性が高いわけで、先ほどの分岐点でより難しそうな変化を読む手間が省けます。

最後に、もしその最も詰みそうな順の先に、華麗な捨て駒などが登場するいかにも作意だと思われるような詰み筋を発見出来れば、先ほどの分岐点の難しそうな逃げ方にも詰む変化があるのだという確信が持てます。「この変化は詰まないかも知れない」と思いながら読むのと、「この変化も絶対に詰むはずだ」と確信して読むのでは、後者の方が格段に詰ましやすくなるため(詰将棋なら一目で分かるような詰みを実戦では逃してしまうことがあるのと同じ理屈です)、難しい変化手順の方でも詰みを発見しやすくなります。

あくまでもドーピング

出典:「ワンピース」第21巻

冒頭でも述べましたが、今回取り上げた方法論はあくまでも人工的に作られた詰将棋を解くための経験則であり、実戦で詰みを読む能力を高めることには全く効果がありません。詰将棋を棋力向上のための訓練として活用するのであれば、このようなテクニックを駆使して正解を探り当てることは、読みを以前ほど必要としなくなるという弊害にすらなるかも知れません。

それでも、詰将棋解答選手権での藤井六段の常人離れした解答速度を見ると、詰将棋を早く解くことへの憧れを抱いてしまうことは人情でしょう。一般人が藤井六段の速度へ少しでも近づくための最終手段としては、詰将棋特有のテクニックをマスターすることも必要だと思います。

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