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将棋名局集「七冠時代の終焉」:三浦vs羽生 第67期棋聖戦第5局

time 2018/04/02

将棋ソフト不正使用疑惑による冤罪事件で、2016年末に3か月の出場停止を強いられた三浦弘行九段。技術的なブランクに加え、精神的ストレスによる大きなハンデを背負わされましたが、2017年度は24勝15敗という堂々たる成績を収め、改めてその実力を示しました。特に2月以降は順位戦最終局で渡辺明棋王を破って自力残留を決めた他、豊島将之八段、斎藤慎太郎七段、千田翔太六段といった若手強豪をなぎ倒すなど、6勝2敗と気を吐いています。


本局は三浦九段が若手時代に当時の羽生善治七冠の牙城を崩した、歴史的な名局です。

第67期棋聖戦五番勝負第5局

1996年7月30日
三浦弘行五段 vs 羽生善治七冠
対局場:新潟県岩室温泉「高島屋」
持ち時間:各5時間

2月に谷川浩司王将から王将位を奪い、史上初の七大タイトル独占を果たした羽生七冠。その後も名人戦で難敵森内俊之八段を4勝1敗で危なげなく下したことで、多くのファンが七冠時代の長期化を予想していました。

そんな中で開幕した棋聖戦に名乗りを挙げたのが、2年連続の挑戦となった三浦五段。前年には羽生六冠が3連勝で一蹴しましたが、三浦五段はその後も各棋戦で安定して勝ち続けていました。そして棋聖戦第1局を84手の短手数で勝利すると、第4局では羽生七冠の粘りに手を焼きながらも167手の熱戦を制し、勝負は最終局までもつれこみました。

第5局は三浦五段の先手で始まり、相掛かりからお互いに矢倉模様へ。

後手の飛車の横利きが二重に止まったタイミングで、先手が▲5六角と3四歩へ狙いを定めた局面。先手が積極的にリードを奪おうとしていますが、△7五歩、▲同歩、△6五歩、▲同歩、△7三桂と進んでみると、歩損ながら桂の働きの差が目立ち、後手が主導権を握った形となりました。以下▲6七金右に△9五歩、▲同歩、△4九角とスピード感のある攻めを続け、羽生七冠が攻勢を掛けます。

三浦五段、踏ん張る

後手の攻め駒が急所に迫り、先手は正念場を迎えています。銀取りを受ける第一感の▲6七銀では、△8七馬、▲同金、△同飛成で、次に△8八金、▲同飛、△6九金という強烈な狙いもあり支えきれません。

ここで三浦五段が指した▲6四歩が、局面の均衡を保つ唯一の妙手でした。△同銀なら▲6七銀と打ち、今度は△8七馬、▲同金、△同飛成に▲5二角成、△同玉、▲9六角と王手竜取りで反撃できます。そこで羽生七冠は▲6四歩に△7七歩からなおも攻め続けましたが、三浦五段も最善手を重ねて一進一退の攻防が続きます。

七冠を惑わせた反撃

後手の猛攻の間隙を突いて三浦五段が▲7六桂と反撃し、△4三金打に▲同角成と切った局面。△同金左には将来の▲2三飛成が残り、△同金右だと将来▲8四桂と取られた後に左辺から飛車で玉を狙われる手が厳しくなります。

応手が非常に悩ましいところで、羽生七冠は△同金左と取りましたが、結果的には△同金右と取ればやや後手に分がある形勢でした。本譜は△同金左に一転して▲6八歩と受けた手が粘り強い一手で、激戦が続きます。

▲4三同角成の局面を現在の視点から見ると、2018年2月の朝日杯準決勝、藤井vs羽生戦を連想してしまいます:

この将棋でもどちらの金で取るか非常に悩ましい場面で羽生竜王は△同金左と取りましたが、直後に局面の均衡を崩す疑問手を指してしまいました。絶対王者対若き挑戦者の勝負で、非常に似た難解な選択を迫られた羽生竜王が、結果的に同じ手を選んで敗れているのは、偶然とは言え興味深いところです。

致命的な敗着

形勢不明の殴り合いが数十手に渡って続いていますが、ここで後手が△3九角と打ったことでついに均衡が大きく崩れます。▲2三飛成に△5七角成と成ったものの、▲6八金で先手玉を一気に寄せ切ることは出来ず、先手の攻めを呼び込んだ上に▲8四桂と飛車を取られる手も残った後手は収拾困難に陥りました。

本譜のように飛車の横利きが消えても先手玉を寄せ切れないのであれば、△3九角と打った時に羽生七冠に大きな誤算があったようです。代えて△6六歩と打っていればなおも激戦が続いていましたが、先攻を許してから40手以上も形勢を離されずに踏ん張り続けた三浦五段の勝負術が、羽生七冠の思考を狂わせたとも言えるかも知れません。

▲3四桂を見て羽生七冠が投了し、史上初の七冠時代は5か月で幕を閉じました。△同金には▲4三銀以下の詰みがあり、△5一玉には▲8一飛が王手馬取りとなって望みがありません。

「応援にこたえたい」

若干22歳で初タイトルを手にした三浦九段でしたが、その後は長年に渡って安定した勝率を残しながらも大舞台では惜敗が続き、通算5度のタイトル戦登場の中で栄冠を手にしたのはこの時だけでした。しかし、先月東京新聞に掲載されたインタビューでは、「棋士として求められているのは、最善を尽くし、その結果をファンに見てもらうこと。また大きな舞台に出ることで、応援にこたえたい」と力強く語っています。最近の三浦将棋からは、今年度の大きな活躍を期待させる充実ぶりがうかがえます。

三浦九段が最短で大舞台に登場する可能性があるのは、ベスト8まで勝ち進んでいる棋聖戦です。

東京新聞:不正疑惑晴れ復帰から1年 支えに感謝棋道磨く 三浦弘行さん

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