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将棋界の引退制度とフリークラス

time 2018/03/02

勝負の世界である将棋界では、成績が振るわなければ定年前に引退を強いられる規定があります。この記事ではプロ棋士の引退制度と、それにまつわるドラマをご紹介します。


プロ棋士の定年は?

棋士の定年は原則として65歳ですが、成績次第でそれより長くも短くもなり得ます。

長くなるケースは、66歳以降も順位戦のC級2組以上に在籍している場合です。この場合、C級2組から降級してしまうまで現役を続けることが出来ます。昨年まで現役最年長棋士だった加藤一二三九段は、77歳でC級2組から降級し、残念ながら引退となってしまいました。

短くなるケースには、「フリークラス」という制度が関わってきます。

「フリークラス」とは?

順位戦の一番下のクラスであるC級2組では、毎年全参加者のうち成績下位の20%に「降級点」がつきます。降級点を通算3回取ってしまうとフリークラスへ降級となり、翌年以降は順位戦が指せなくなります。

フリークラスへ降級すると、一定の成績を挙げれば再びC級2組へ昇級することが出来ますが、それを達成する前に65歳を迎える、もしくは10年が経過してしまうと、引退となります。

そのため、55歳までにフリークラスへ降級してしまうと、定年前に引退に追い込まれる可能性が生じるわけです。

「フリークラス」へ降級してしまう成績とは?

C級2組は10局戦うリーグ戦ですが、例年3勝以下の参加者には降級点がつくことが多く、4勝以上だと免れることが多いです。また、プロ棋士全体を見ても、勝率の下位20%以下となるボーダーラインは大体勝率4割前後のようです。

そのため、C級2組に在籍し、勝率が4割を切る状態が長期的に続くと、フリークラスへ降級してしまう可能性が高いと言えます。

「フリークラス」から昇級するには?

フリークラスから昇級するためには、成績にまつわるいくつかの条件のうちいずれかを満たさなければなりません。そのうち、最も現実的なのは以下の二つです:

  1. 年間対局の成績で、「参加棋戦数+8」勝以上の成績を挙げ、なおかつ勝率6割以上。
  2. 良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上

しかし、先に挙げたように、フリークラスへ降級してしまった棋士は4割以下の勝率が数年以上続いていたため、6割以上勝つことはかなり困難です。事実、フリークラスの制度が誕生して以降、降級後に再びC級2組へ復帰出来た例は僅か2人しかおらず、茨の道となっています。

その他の「フリークラス」転入例では、さらに若くして引退となるリスクも

三段リーグで次点を2回取ってプロ入りを選択した棋士や、アマチュアからプロ編入試験に合格した棋士も、フリークラスへ編入されます。現在までこれらの例でプロになった棋士は全員C級2組へ昇級を果たしていますが、もし10年以内に先に触れた一定の成績を挙げられなければ、やはり引退となってしまいます。

特に三段リーグから編入する場合は、20代で念願のプロ入りを果たしても、最悪の場合30代で引退に追い込まれるリスクを背負うことになります。

ちなみに、佐藤天彦名人は16歳の時に2度目の三段リーグで次点を獲得しましたが、フリークラス入りの権利を行使せず、2年後に三段リーグを2位で突破して四段に昇段しています。

「フリークラス」最終年に、引退を懸けた死闘も

直近では、フリークラス編入後10年目を迎えた中尾敏之五段が、牧野光則五段との対戦で、戦後最長手数を更新する420手に及ぶ大激戦を繰り広げました。この対局の次点で中尾五段の今年度成績は16勝8敗で、C級2組昇級まで後2勝に迫っていましたが、敗れると年度内に残された対局数の関係で引退の可能性が非常に高くなる、まさに引退を懸けた一戦でした。

負ければ引退!?中尾五段vs牧野五段は異例の超長手数の末指し直しに

成績が伴わなければ引退に追い込まれてしまうことは勝負の世界の常です。そして、「フリークラス」が引退へ直接つながっているからこそ、棋士にとって順位戦は特別な棋戦なのですね。

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