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将棋名局集「5連続挑戦」:渡辺vs佐藤(康) 第19期竜王戦第2局

time 2018/04/16

会長職の激務をこなしながら、現在も第一線で戦っておられる佐藤康光九段。本局は佐藤九段が5回もタイトル戦の挑戦者になる大活躍を見せた2006年度の将棋の中から、160手を超える大熱戦となった一局です。


第19期竜王戦七番勝負第2局

2006年10月31日
渡辺明竜王(0勝) vs 佐藤康光棋聖(1勝)
対局場:富山県宇奈月温泉「延対寺荘」
持ち時間:各8時間

前年度もタイトル戦に4度登場するなど充実期を迎えていた佐藤棋聖は、2006年度はさらに爆発的な勢いで白星を量産しました。棋聖戦では3連勝で5連覇を果たすと、その後も王位戦、王座戦、竜王戦と連続で挑戦者に名乗りを挙げました。王位戦と王座戦では羽生3冠に惜敗したものの、本局までの成績は34勝12敗(うち7敗は羽生3冠とのタイトル戦)かつ12連勝中と、絶好調を絵に描いたような活躍ぶりでした。

一方の渡辺竜王は、2年前に若干二十歳で竜王を獲得し、その後も7割前後の高勝率を維持していましたが、竜王戦以外のタイトル争いには加われていませんでした。佐藤棋聖との対戦成績もここまで1勝5敗と大きく負け越しており、竜王戦開幕前は「佐藤棋聖に勝つという姿がイメージ出来ませんでした」という本音を、七番勝負終了後に語っています(「渡辺明ブログ」より)。第1局で佐藤棋聖が快勝したこともあり、挑戦者のタイトル奪取を予想する声が高まっていました。

進化する「緻密流」

後手の佐藤棋聖のゴキゲン中飛車に対し、渡辺竜王は早めに角交換をする「丸山ワクチン」で対抗しました。振り飛車側が角交換を歓迎することが多い現在の目から見ると居飛車がやや損に思えますが、ゴキゲン中飛車に対して有力とされる「超速▲3七銀」はこの当時はまだ存在しませんでした。

また、当時の佐藤棋聖は「緻密流」と呼ばれた居飛車党本格派のイメージがまだ強かったのですが、後手番では本局のような振り飛車も変化球として採用していました。このような時期を経て、現在ではダイレクト向かい飛車などの力戦調の将棋を好む独創的な棋風へと進化を遂げています。

先手は玉頭の厚みで優位を築こうとしていますが、1六歩を保留しているのがやや欲張った指し方で、△5九角の打ち込みが成立しました。対して▲1六歩は△2五桂、▲同飛、△4八角成が受けづらいため、渡辺竜王は▲6五歩と左辺から反発しましたが、後に△1五角成から馬を活用する順が間に合い、後手がややリードを奪いました。

力強い捌き

▲6四歩と銀を殺されて後手が困ったようですが、手抜いて△4五桂と跳ねたのが力強い反撃。▲6三歩成には△同金左、▲6六銀、△5七桂成と進み、桂が急所に働く上に次にいきなり△7八馬と切られる手が非常に厳しく、先手は銀得でも耐え切れません。本譜はやむなく単に▲6六銀と引きましたが、△6四銀、▲7四歩、△6三金左と後手は全ての駒が躍動しました。

難解な斬り合いへ

渡辺竜王も勝負手を連発して決め手を与えていませんが、ここで△7一金と冷静に受けていれば佐藤棋聖がリードを保てていました。▲4四飛、△同歩、▲5三角打には△6二銀打で受けが利く形で、▲5四歩のような確実な攻めでは△6八歩成から後手が攻め合い勝ち出来そうな情勢です。

本譜は単に△6八歩成と決めに出た手がやや危険で、▲6一金からギリギリの一手争いへ突入しました。

非常に難解な終盤戦の中、ついに渡辺竜王にチャンスが訪れた局面。ここで▲6三金と開き直っておけば先手が勝ちだったようです(△同銀は▲8二金以下詰み)。△7七成桂(▲同歩は△9六桂以下トン死)からかなり王手が続く非常に怖い局面ですが、結果的には後手が手順に自玉の詰めろを解消するうまい手順はなかったようです。

本譜は▲6三金に代えて▲8二金、△9四玉、▲7二金右と迫ったため、△7九角、▲同玉、△6九飛、▲8八玉、△8九金、▲9七玉と、▲9五香を消してから△8二銀と取る手が詰めろ逃れの詰めろとなり、後手の勝ちが決まりました。

▲7二金右では先に▲9五香と走る手もありましたが、△同玉、▲8六銀、△9六玉、▲9七銀、△9五玉、▲9六歩と攻めながら自玉を補強しても、△9四玉、▲6三金の瞬間に△7七成桂から殺到され、持ち駒の金を合駒に使わされてしまう展開になります。その先の変化は非常に膨大で、両者共に秘術を尽くした末に何と千日手(!)になる変化などもありましたが、先手が勝つのは容易ではないようです。

162手目、△5七角を見て渡辺竜王の投了となりました。以下は長手数ながら先手玉は詰んでいます。中段で接近した両者の玉や、取られる寸前の△8二銀、及び後手玉に肉薄する▲3五竜や▲6三馬などの配置も激闘の様子を物語っています。

大勝負での悔しさ

熱戦を制して2連勝スタートを切った佐藤棋聖でしたが、本局が第1局とは対照的な大熱戦となったことで、渡辺竜王も「戦えるという手応えを掴んだ」と後に語っています。そしてその言葉通り第3局以降は渡辺竜王が反撃に転じ、最終局までもつれ込む死闘の末に竜王位を死守しました。

この年の佐藤棋聖は続く王将戦と棋王戦でも挑戦者となり、7度のタイトル戦のうち実に6度も登場するなど、歴代3位タイとなる86局もの対局が組まれる超多忙な一年を過ごしました。しかし棋聖防衛に加え棋王位は獲得したものの、その他の4度のタイトル戦では敗退し、大活躍の割には大一番での惜敗も目立つ結果となってしまいました。

佐藤九段はタイトルを通算13期(歴代7位)獲得されていますが、タイトル戦登場は実に37回に上り、大一番で数多く悔しい想いを経験されています。最近では名人戦や叡王戦の前夜祭で、プレーオフや本戦で敗退した自身のことをジョークにして笑いを誘っていましたが、上位まで勝ち進みながら大舞台を逃している悔しさは今も感じておられるでしょう。現役の会長としてタイトル戦に登場する姿を待ち望むファンは今も多いはずです。

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