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藤井七段の絶妙手「△7七同飛成」は何位?将棋史に残る「名手」ランキング

time 2018/06/07

6月5日に行われた第31期竜王戦ランキング戦5組決勝にて、藤井聡太七段が石田直裕五段を破り、5組優勝と決勝トーナメント進出を決めました。その終盤戦で現れた「△7七同飛成」という飛車を歩と刺し違える寄せの強手は、公式戦の歴史上でも屈指の名手でした。


一手だけでその将棋を観る者の記憶に永遠に記憶させるほどのインパクトを残す「名手」。「△7七同飛成」を含め、過去の公式戦の中から「名手」ベスト5を、管理人の独断と偏見で選びました。

第5位

1971年の第30期名人戦第3局、大山康晴名人vs升田幸三九段戦。升田九段が棋士人生晩年に「升田式石田流」を引っ提げて名人戦の舞台へ戻ってきたシリーズで、史上最も有名といっても過言ではない絶妙手が生まれました。

7九角に狙われている4六銀の受け方が難しそうですが、ここから△2六歩、▲同飛に△3五銀(!)が天来の妙手でした。

当たっている銀を、さらにただのところへ逃げる△3五銀。▲同角と取るしかありませんが、そこで△3四金とすれば、▲同金には△3五角、▲同金に△5九角が王手飛車になりますし、▲3三歩と切り返しても△3五金と角を取る手がさらに飛車取りになるため先手陣は崩壊します。△3五銀と捨てて先手の角を近づけることで、△3四金が強烈になっているわけです。

第4位

1993年の第62期棋聖戦第1局、羽生善治3冠vs谷川浩司棋聖・王将の一戦。若き日の羽生3冠と谷川2冠が時代の覇権を懸けて争っていた時代に、光速流の名手が誕生しました。

▲4八飛と王手銀取りに打った手に対し、△4七角(!)の中合いが絶妙の返し技でした。▲7八飛は今度は△同飛成、▲同玉の時に4七角が働き、△6九銀以下詰み。本譜はやむなく▲同飛と取りましたが、△5一玉、▲5三香、△6二玉で、先手に角を渡したにもかかわらず後手玉はギリギリ詰まず、谷川2冠の勝ちとなりました。序盤からずっと立ち遅れていた7三の銀が、最終盤で守備の要として利いてくる辺りも、「勝ち将棋、鬼のごとし」ですね。

第3位

2012年の第60期王座戦5番勝負第4局、渡辺明竜王・王座vs羽生善治2冠の一戦。前年に19連覇中だった王座を渡辺竜王に奪われた羽生2冠は、1年後に不死鳥のごとく挑戦者に名乗りを挙げ、2勝1敗と復位に王手を掛けて臨んでいました。

先手玉に詰みはなく、一方後手玉は▲8三飛、△同金、▲同銀成、△同玉、▲8二飛、△7四玉、▲6六桂以下の詰めろです。しかしここで羽生2冠は当時誰も気が付いていなかった鬼手をひねり出します。

△6六銀(!)

先手から6六へ桂を打つ余地を消しながら、△8八角成、▲同玉、△7七銀成以下の詰めろを掛ける、詰めろ逃れの詰めろです。そのため▲同歩と取るしかないですが、銀を渡したにも関わらずこの瞬間後手玉は詰めろではなくなっています。

以下、△8九金、▲7八飛、△8八金、▲同飛、△8九金、▲7八金、△8八金・・・と進み、両者打開する手がなく、何と千日手になりました。直後に行われた指し直し局は羽生2冠が制し、3冠復帰を果たすと共に渡辺竜王に明け渡しかけていた第1人者の座を再び取り戻しました。

第2位

△7七同飛成(!)

藤井七段の△7七同飛成がここでランクイン。飛車と歩を刺し違える強手が詰めろを継続させる唯一の寄せでした。以下▲同金に△8五桂も際どく詰めろとなり、▲7六金、△7八歩、▲同玉、△7七歩、▲8八玉に△7八銀で後手の勝ちが決まりました。変化は多岐に渡りますが、いずれも際どく後手の寄せが決まっており、後手玉は飛車と桂の持ち駒だけでは詰みません。

この一手そのもののインパクトも相当なものですが、この鬼手に少なくとも11手前から、実際は恐らくそのさらに前から気づいていたという事実が、藤井七段の異次元の終盤力を象徴しています。

第1位

栄えある第1位は1996年の第9期竜王戦第2局、羽生善治6冠vs谷川浩司九段戦です。王将位を奪われ、目の前で七冠独占を達成されてしまった屈辱の敗戦から8か月。竜王戦で挑戦者に名乗りを挙げた谷川九段は、本局で歴史的名手を放って復活ののろしを上げました。

駒が何枚当たっているか分からないような忙しい局面で、さらに焦点に放り込んだ△7七桂(!)が、これぞ「光速の寄せ」というべき鮮やか過ぎる名手でした。

▲同桂や▲同金と取ると、△7六歩で後手の攻めが加速します。一方、桂を捨てる前に銀を取ると、後から△7七桂と打っても手抜かれる恐れが生じます。▲6九飛と引いたこの瞬間だからこそ、飛車取りになっていて先手も応対せざるを得ないわけです。

そこで先手は▲5九飛と角を取り、後手も△6三飛。6筋は先手の飛車の勢力圏だったのですが、いつの間にか後手の飛車が大活躍しています。以下も▲5四角に△6八角(!)と豪打がさく裂し、谷川九段が完全復活を強く印象付ける勝利を収めました。

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