2018/10/16
4月2日にNHKで放送された、「プロフェッショナル 仕事の流儀『史上最強の軌跡スペシャル』 棋士・羽生善治」。2006年と2008年に羽生竜王に密着した映像に今回新たに撮影したインタビューを加えた総集編で、47歳にして未だに将棋界のトップに君臨する羽生竜王の激闘の軌跡が振り返られています。
その中で特に印象的だったのが、2008年の第66期名人戦第2局のシーン。定跡を外れた中盤の白熱のねじり合いを、ナレーションが迫力を持って伝えます。
データによって裏付けられた戦術ではなく、一つ間違えるとあっという間に勝負がつく未知の世界。二人はそこで、真の実力勝負をする。
(中略)
独創的な手を繰り出し合う二人。混沌とした局面は、もはや二人だけの世界だ。
一手一手が勝敗に直結する局面とあって、お互いに長考が続きます。そんな中、あまりの難解さと進行のスローペースに耐え切れなくなった観戦記者が、対局室で睡魔に襲われるハプニングが・・・
思わず笑ってしまう森内名人と羽生二冠。この決定的瞬間をカメラがとらえていたこと自体が奇跡ですが、あえて何も言及しないNHKらしい真面目な編集が場面の面白さをより一層引き立てています(笑)。
ちなみに、この対局の記録係は牧野光則三段(現五段)。いびきの主は明らかに下を向いている観戦記者ですが、よく見ると牧野三段も首が不自然に傾き、目が開いているかどうか微妙な表情をしています。「もはや二人だけの世界」に突入した難解過ぎる局面は、奨励会三段の実力をもってしても全くついていけなかったようです。
このシーン以外にも、羽生竜王の2000年代の激闘の様子やインタビューがふんだんに収録されている「プロフェッショナル 仕事の流儀」。髪が長かった時代の羽生竜王の姿も新鮮です。4月7日には再放送もあるようなので、見逃した方は是非ご覧ください。