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澤田六段が千田六段に勝利、大山流の強靭な受けで穴熊を押し潰す

time 2018/04/14

第59期王位戦挑戦者決定リーグ、澤田真吾六段vs千田翔太六段の対戦は、澤田六段が140手で勝利しました。澤田六段はこれでリーグ戦3戦全勝となり、2年連続の挑戦者決定戦進出へ向けて前進しました。次戦では現在2戦全勝の豊島将之八段との大一番を迎えます。


澤田六段(左)、千田六段。出典:日本将棋連盟

ノーマル四間飛車

オールラウンドプレーヤーである後手の澤田六段が四間飛車を採用し、千田六段は居飛車穴熊へ潜りました。

本局のような角道を止める振り飛車と居飛車穴熊の戦いは、30年以上前から数多く指される中で多くの棋士が振り飛車側が苦しいという見解を持ち、藤井システムや角交換振り飛車といった戦法の誕生に繋がったという長い歴史があります。澤田六段は居飛車穴熊に組ませることを苦にしない珍しい棋士ですが、直近でも中村太地王座や佐々木大地四段といった難敵を相手にノーマル四間飛車で競り勝っています。

本譜でも4枚穴熊に対して後手番で千日手を狙う待機策ではなく、ここから△5五歩、▲同歩、△4五歩と積極的に仕掛けました。

モノレール飛車

千田六段が▲8四角と歩を取った局面。次に▲4三歩と角を移動させてから▲2四飛と活用される手が厳しいのですが、△5五銀にも構わず▲4三歩と攻め合われると玉形で劣る後手が苦しい展開です。

しかしここで澤田六段がじっと△5三飛と浮いた手が味わい深い妙手でした。▲2二歩にはその瞬間に△5五銀と出れば、今度は▲4三歩が打てないため後手が優勢になります。本譜の▲6六角にはさらに△4三飛と回り、△3七歩成~△3六歩を見せて先手の▲2二歩を牽制しました(この時に▲4五桂と跳ねづらくしています)。

玉が堅い先手に対して斬り合いを避けて寝技勝負に老獪な指し回しで、本譜は「モノレール飛車」と呼ばれる後手の三段目の飛車がこの後非常によく働く展開になりました。

抑え込み一本

右辺の桂香を取らせる間に穴熊の金銀を剥がした後手がリードを奪いつつある局面ですが、先手の大駒が後手玉を直接狙うような展開になると一気に危険になります。

澤田六段はここで△3八銀と、思わぬところへ手を向けます。へき地へ銀を打ち込む非常に考えづらい一手ですが、▲5七角、△4七銀成、▲3九角、△4六歩と進んでみると、2六飛の後手玉への潜在的な脅威が銀一枚で完全に遮断されています。

大山15世名人の力強い抑え込みや、羽生竜王の「羽生ゾーン」の柔軟な発想を彷彿とさせる△3八銀は、澤田六段が実力を見せつけた実戦的な妙手でした。

攻めを見切る

先手が必死の食いつきを見せていますが、ここで堂々と△5七歩成と成った手が決め手になりました。▲7二桂成、△同金、▲7三銀から殺到されて怖いようですが、あっさり△同金、▲同歩成、△同飛、▲同香成、△同玉と清算した局面は、上部が広い後手玉は寄らない形です。先ほどの△3八銀も先手の飛車と角を完全に抑え込む大活躍を見せ、最後は先手の攻めを冷静に見切った澤田六段が豊富な持ち駒で穴熊を押し潰して勝利を収めました。

殆どの棋士が居飛車穴熊を好む現在の将棋界において、ノーマル四間飛車で穴熊を許す澤田六段は定説に挑戦している数少ない棋士の一人です。本局のような勝ち方を見せつけられると、居飛車穴熊の優位性は決して勝敗を決する程の大きさではないことを痛感させられます。

相居飛車の戦型では、近年は将棋ソフトの影響で穴熊はあまり評価されなくなりました(特に第2期叡王戦第2局でPonanzaが佐藤天彦叡王に快勝した将棋は象徴的でした)。ノーマル四間飛車の対抗形は角交換が起こりづらいため、相居飛車とはかなり状況が異なりますが、もしかすると現代将棋のバランス重視の流れにより対抗形でも穴熊が以前ほどは脅威ではなくなる日が来るかも知れませんね。

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