2018/10/16
2017年度の記録4部門は藤井聡太六段が羽生善治竜王以来となる4部門独占を果たし、大きな話題となりました。今年度はまだ始まったばかりですが、現時点で対局数、勝率、勝数の3部門で1位タイ(3勝0敗)となっている棋士の一人が、昨年10年に四段昇段を果たしたばかりの斎藤明日斗四段です。
まだ公式戦の対局数は少ないものの、森内俊之九段、丸山忠久九段、三枚堂達也六段といった強敵を倒して評価を上げつつある斎藤四段は、かなりのイケメン・イケボイスの持ち主でもあります。今後注目が集まりそうな斎藤四段の将棋や解説姿をご紹介します。
次世代の「東の王子」候補
こちらが今月初めに斎藤四段がAbema TVへ解説者として初登場した際の映像です。
イケメンであることもさることながら、落ち着いた深みのある声も印象的で、この放送で初めて見てファンになった方も多いのではないでしょうか。山口恵理子女流二段と並んだ画はパッと見では棋士と女流棋士を演じる役者のような華やかさで、一昔前までの将棋番組では中々見られなかった光景です。
ちなみに、斎藤四段の将棋連盟のプロフィール写真はこちら。
こちらはイケメンではあるものの、19歳という年齢相応に若干の垢ぬけなさも感じられます。将棋盤を前にすると棋士の男前が上がるのかも知れませんが、四段昇段から約半年が経過し、プロとしての生活に慣れると共に顔つきも少し変わったのではないでしょうか。
将棋界の「東の王子」と言えば数年前までは阿久津主税八段の代名詞で、阿久津八段が結婚してからは中村太地王座が「新・東の王子」を襲名していますが、将来的には斎藤四段が三代目となる日が来るかも知れません。
古風な戦型選択
4月4日に行われた新人王戦2回戦、対三枚堂六段戦。相掛かり模様の序盤から、先手の斎藤四段は最近の公式戦では非常に珍しいひねり飛車を採用しました。20年以上前に流行していたこの戦型は斎藤四段の得意戦法の一つだそうで、本局でも経験値の差を活かして序盤からリードを奪いました。
ここからで▲8二歩、△6三銀、▲4六角、△8二金に▲9五歩と突いたのが機敏な手順で、後手は受けに窮しています。△同歩には▲9三歩、△同金、▲8二歩で駒損が避けられず、本譜も後に先手が金香交換の大きな戦果を上げました。角と歩だけで巧みに後手陣を攻略した斎藤四段が、三枚堂六段の終盤の追い上げを見切って難敵を倒しています。
「鉄板流」を攻め倒す
4月13日に行われた王将戦1次予選、対森内俊之九段戦。相掛かりの出だしから後手の森内九段が積極的に銀を繰り出し、先手の玉頭に大きな拠点を築いて作戦勝ちを収めましたが、斎藤四段も巧みに右辺でポイントを重ねてねじり合いが展開されました。
後手の7筋の勢力がいかにも森内九段らしい手厚い構えですが、ここで▲7一角、△7二飛、▲5三角成と斬り込んだのが鋭い攻めで、後手玉は一気に背後を襲われたような形になりました。対して△7七桂と攻め合っていれば難解な形勢でしたが、本譜は△同金と応じたため、▲同飛成、△5二歩、▲4三竜、△7七桂に今度は▲同角と切る手が成立し、△同歩成に▲5四桂が非常に受けづらい詰めろとなって先手がはっきり優勢になりました。以降は持ち駒を投入して徹底抗戦を続けた森内九段を斎藤四段が冷静に寄せ切っています。
若手実力者との対決が迫る
自分の土俵へ引きずり込む序盤戦術や、受けの名手をも押し切る鋭い攻めを発揮し、今年度全勝をキープしている斎藤四段。今後は棋王戦では増田康広五段、新人王戦では近藤誠也五段との対戦が決まっています。通算勝率が7割を超える20代前半の若手強豪との連戦は、斎藤四段の今後の活躍を占う試金石となりそうです。