2018/10/16
角道を止める昔ながらの振り飛車がプロの公式戦から姿を消し始めてから、かれこれ10数年が経過しました。大多数が居飛車党であるトップ棋士達がこぞって研究を重ねた結果、藤井システムが居飛車穴熊に対抗し切れなくなったことが最大の要因ですが、ここ数年はそれに加えて将棋ソフトが軒並み振り飛車を嫌っていることも影響していると思われます。
角交換型の振り飛車は現在でも公式戦で現れますが、将棋ソフトの評価は芳しくありません。例えば、初手から▲7六歩、△3四歩、▲6八飛と進んだ局面では、「elmo」の評価値は先手から見て早くも約-150へ下がります。
さらに、▲7六歩、△3四歩、▲6八飛という指し方にハマっているという振り飛車党の井出集平四段が、試しに△4二飛と真似された際の指し方をソフトで検討してみた所、衝撃の解答が・・・
最近先手6八飛オープニングにハマっているのですが、真似されたときの指し方をソフトに聞いてみました。
最善手2八飛相振りは終わった。
(井出) pic.twitter.com/3MZMCeMCUZ— 東竜門〜関東若手棋士〜 (@wakate_shogi) May 2, 2018
また、管理人が「elmo」に同じ局面を検討させたところ、5手目▲2八飛に対する後手の最善手も△8二飛だと言われてしまいました。
(ただしさすがに最序盤なので、▲2八飛や△8二飛と他の指し手との評価値の差は、考慮時間によって逆転する程度の微差です)
ペア将棋で▲6八飛、△4二飛、▲2八飛、△8二飛と進んでしまったら、パートナー同士の喧嘩は避けられないでしょうね(^-^;。
ソフトがここまで極端に嫌う振り飛車ですが、相居飛車とは全く質の異なる振り飛車対居飛車の対抗形に持ち込むことには相手の研究を外す、経験値の差を活かすといった効果も期待できるため、人間同士の戦いでは振り飛車が必ずしも戦法として劣っているとは言い切れません。特にアマチュアにとっては、プロより持ち時間が短いことと、プロより読みの力が劣るため経験や知識に頼ることが多いことにより、一手のミスが序盤から勝敗に直結しやすい相居飛車の戦いを避けた方が勝率が高い場合もあるでしょう(かくいいう管理人も振り飛車党です)。
棋士と比べると女流棋士には振り飛車党がかなり多いことも、棋士>(ごく一部のトップアマ)>女流棋士>アマチュアという棋力の序列を考えると、先ほど述べた人間同士の戦いに関する理屈と整合性があります。
とはいえ、現在では人間を実力的に凌駕している将棋ソフトの評価がこれほど厳しい以上、プロレベルでは振り飛車党がかなり減少している現状はある意味必然なのかも知れません。振り飛車が現代将棋で生き残るためには、中盤以降に経験値の差を活かす技術がこれまで以上に要求されているようです。