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斎藤七段が王座戦挑戦者に!渡辺棋王を惑わせた渾身の勝負術を徹底検証

time 2018/07/27

第66期王座戦挑戦者決定戦、渡辺明棋王vs斎藤慎太郎七段の対局は、斎藤七段が117手で勝利し、中村王座への挑戦権を獲得しました。


渡辺棋王に形勢でも持ち時間でもリードされた苦しい状況で見せた、斎藤七段の渾身の勝負術を検証します。

用意の作戦

斎藤七段の先手で角換わり腰掛銀へ進み、渡辺棋王が後手番ながら積極的に仕掛けました。

△6五同銀に対して▲5八玉と寄った局面。駒がぶつかったのを手抜いて玉を移動させる不思議な一手ですが、ここから△5六銀、▲同歩に△5四銀(!)が一見するとさらに違和感を感じさせる手でした。

6三の傷を消すためとはいえ、交換したばかりの銀を一方的に手放すのでは後手が面白くないようですが、実はこの局面は公式戦の実戦例こそないものの、プロや奨励会員の研究会では数か月前から水面下では現れていたようです。後手は先手の玉頭の薄さが大きいと主張しており、渡辺棋王が仕掛けから殆ど時間を使っていないことからも周到な事前準備を感じられました。

勝ちづらい展開

お互いに玉形を整備した後に7筋で戦いが始まりましたが、後手がいつの間にか銀矢倉の堅陣に組み替えたのに対し、先手はバランスを取るためとはいえ不安を覚える4七玉型を強いられています。ここで強く▲6二と、△7八と、▲6三飛成と攻め合っていれば形勢は難解でしたが、△3五歩から玉頭戦に持ち込まれることを覚悟せねばならず、玉が薄い先手としては非常に選びづらい順ではありました。

本譜は斎藤七段が▲7七同金と取ったため、△7三金、▲7四歩、△6四金、▲7三歩成、△6五桂と、金を活用しつつ手順に先手の金銀を剥がしにかかった後手がややリードを奪いました。

斬り合いに活路

先手が飛車を2筋へ転換して反撃の準備を整える間に、後手は8筋を破って確実な攻めを見せています。ここで真っ先に目につく▲2四桂は△同歩、▲同歩に△2八歩~△2三歩で、▲5五桂は△同金、▲同銀、△7七とで、いずれも先手玉の薄さによる反動が厳しく後手が指せそうです。しかしここで▲8二歩、△同飛、▲6一角と迫ったのが巧みな勝負手で、△7七とに▲8三歩、△8一飛、▲4三角成、△同金、▲5二銀と進み、後手玉もかなり弱体化しました。

後手の飛車は8一よりも8二の方が受けに利きそうなだけに、わざわざ▲8二歩と叩いてまで▲6一角と打つ手は見えづらい発想ですが、▲5五桂では△同金と取られてしまう以上、急所の4三銀を剥がすためにはこれしかない手順でした。厳密にはまだ後手がリードしていましたが、命がけの斬り合いに持ち込んだ決断がこの後功を奏します。

数手進み、先手が▲4二銀不成とさらに後手の守備駒を剥がした局面。ここで渡辺棋王が△6六とと攻め合ったのが痛恨の一手で、▲3五桂でついに形勢が入れ替わりました。以下△5六と、▲3八玉に△3五歩と取れないのが痛く(▲3三銀成以下長手数の詰み)、△4七銀から猛追したものの先手玉は僅かに詰みませんでした。

△6六とでは△4二同銀と取り、▲3五桂に△3三金と徹底的に受けていれば依然として後手に分がある戦いでした。感想戦では渡辺棋王に自玉の詰み筋に関する錯覚があったそうで、最終盤のため修正が利かない致命傷となってしまったようです。

開き直りの逆転術

夕食休憩の時点では斎藤七段が残り29分に対し、序盤を早指しで飛ばした渡辺棋王は1時間46分と、後手ややリードの形勢以上に持ち時間の上でも先手がかなり勝ちづらい展開でした。その苦しい状況の中で一直線の斬り合いに勝負を託した斎藤七段の開き直りが結果的に渡辺棋王のミスを誘いましたが、斎藤七段が持つ棋界屈指の終盤力が与えた無言のプレッシャーも、勝負に影響を及ぼしたのかも知れません。

勝った斎藤七段は昨年の棋聖戦に続く自身2度目のタイトル挑戦を決めました。棋聖戦では羽生棋聖(当時)に全体的に押される場面が目立ちましたが、決勝トーナメントで高見叡王、久保王将、藤井七段、渡辺棋王とそうそうたる強敵をなぎ倒して来た今回は昨年以上の勢いと棋力の充実を感じさせる内容で、初タイトルの期待が膨らみます。また、中村王座とのタイトル戦は東西の「王子」の異名を持つ若手イケメン棋士同士の対決でもあり、一段と注目を集めそうです。

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