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藤井七段が八代六段に勝利、新人王への望みをつないだ勝負術を徹底検証

time 2018/07/28

第49期新人王戦、藤井聡太七段vs八代弥六段の対局は、藤井七段が132手で勝利し、準々決勝進出を決めました。


出典:Abema TV

やや苦しい局面が長く続く中、相手に悩ましい選択を迫り続けた藤井七段の逆転術を検証します。

後手番の試練

八代六段の先手で角換わり腰掛銀に進みました。藤井七段はこれで振り駒が行われた対局は8回連続で後手番と、少なからず不運に見舞われていますが、本局は持ち時間が3時間と短く、得意の角換わりということもあり序盤からかなり早指しで飛ばしました。

その藤井七段の指し手が止まったのが▲3八金と逃げられた局面。戦いが本格化し始めたにもかかわらずかなり先後同型に近い局面に合流した珍しい展開ですが、6四歩の潜在的なプレッシャーが大きく、後手としては既にあまり自信が持てない局面だったようです。藤井七段は40分を超える長考の末△9三角と打ちましたが、▲7五歩、△6五歩にやはり▲6三歩成が悩ましい成り捨てとなり、後手が守勢を強いられる展開が続きました。

悩ましい選択

後手陣はバラバラな上に飛車を2筋へ回らされたことで反撃の味も少なく、勝ちづらい局面ですが、ここで△8八歩と打った手が絶妙のタイミングでした。先手としては本来ならまだ先が長そうな中盤の段階で桂を取らせたくはないのですが、▲同銀には△7六桂があり、▲同金も大きな利かしとなるため、手抜いて攻め合うか非常に悩ましいところです。八代六段は▲4四桂の攻め合いを選択し、結果的にこの選択は正しかったようですが、後手に曲がりなりにも反撃の楽しみが生じたことで先手も攻めを急がされる展開になりました。

形勢が思わしくない場合、敵玉に嫌味を残したり、相手に難しい二択を迫るのは逆転の常套手段ですが、△8八歩はそれらを複合した、地味ながら巧みな勝負術だった気がします。

一手争いへ

△8八歩を手抜いた八代六段が猛然と攻め続けていますが、ここで△3六桂と打った手が先手としてはまたしても悩ましい勝負手でした。▲4八金型はバランスに優れた好形なのですが、好形であるが故に金取りを掛けられると味の良い応接がない場合が多く、本局も例外ではありませんでした。

八代六段はここでも▲7三歩成とさらに踏み込みましたが、▲3七金と一回逃げる手も有力でした。本譜の進行は急所の金をただで取らせるだけに本来なら選びたくなかった手順だと思われます。実際の形勢は依然として先手がやや指せそうなものの、悩ましい選択が何度も続くことによる疲労と自玉の不安定さにより、先手もかなりプレッシャーを感じる展開となっていたようです。

ミスを引き出す

最終盤で、藤井七段が△6三金と打って詰めろを防いだ局面。両者残り時間が切迫する中、八代六段が選択した▲3五歩が結果的に敗着となりました。△7四金に▲3四歩が▲3三銀以下の詰めろですが、そこで△4七歩成が4六の地点への脱出路を開くことで詰めろ逃れの詰めろになっています。以下も際どい場面もあったものの、藤井七段が冷静に自玉の安全を見切って一手勝ちを収めました。

▲3五歩では平凡に▲5二金、△3三玉、▲6三馬、△同銀、▲3五歩と迫れば先手がやや良さそうでしたが、この順も一筋縄で寄せ切れるわけではなく、形を決めるだけ決めて後手玉の上部脱出を阻んでから▲8九飛と手を戻すような激戦になります。八代六段としては、この変化手順の最終手の▲3五歩に代えて第一感だったと思われる▲5三金が、△2四歩と受けられた時に決め手がないため指せなかったのも不運でした。

やや苦しい局面が長く続いた将棋を、相手に悩ましい選択を迫り続ける巧みな勝負術でものにした藤井七段。今月は竜王戦や王座戦で痛い黒星を喫してしまいましたが、実力者の八代六段を相手に勝利を収めたことで、後手番での嫌な流れを払拭したいところです。七段昇段により来期以降は参加資格を失う新人王戦はこれで準々決勝進出となり、最初で最後の優勝まで残り4勝(決勝は三番勝負)です。

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