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将棋名局集「203手」:羽生vs中村 第61期王座戦第2局

time 2018/03/04

2017年に悲願の初タイトルを獲得した中村王座ですが、その4年前には同じ王座戦で羽生王座を土俵際まで追い詰めながらも惜敗しています。本局はその中から、王座戦の歴代最長手数を更新する大熱戦となった一局です。


出典:産経新聞

第61期王座戦五番勝負第2局

2013年9月18日
羽生善治3冠(0勝) vs 中村太地六段(1勝)
対局場:兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」
持ち時間:各5時間

2011年度に歴代2位となる8割5分1厘の高勝率を挙げるなど、毎年のように高成績を残していた中村六段。タイトル戦初挑戦となった2012年の棋聖戦では羽生3冠にストレート負けを喫してしまいますが、2013年度はここまで14勝3敗と勝ちまくっており、第1局では対羽生戦6局目にして初勝利を収めています。

一方の羽生3冠も、この年は名人戦こそ森内名人に1勝4敗で敗退しましたが、棋聖戦で渡辺3冠、王位戦で行方八段を下して3冠を堅持しています。王座戦は充実著しい両者の激突となりました。

矢倉模様の出だしから、後手の中村六段が雁木へ変化します。

2017年頃からプロで大流行している戦型とは意味合いが異なりますが、それでも当時としては非常に珍しい形だった雁木を採用している辺りに、中村将棋の序盤の明るさが感じられます。

両者共に手が出しづらい持久戦になり、この時点で既に19時を過ぎています。千日手も頭をよぎりそうな局面ですが、中村六段は△1二香と打開を目指しました。以下▲8八金、△1一飛、▲7八金右、△1四歩と進んで開戦します。

先手は玉が堅い上に駒も目いっぱい働いていますが、後手も角桂交換の駒得を頼りに徹底抗戦の構えで、攻めが続くかどうかは微妙な情勢です。

ここで▲5五歩と突いたのが非常に味わい深い一手。5筋に歩が利けば4五桂がより働くことや、後手の4三銀が動けば▲3四香と走れることに目を付け、攻めに深みを与えています。また、△4四歩だと7一角の利きが止まるため、▲3三歩、△2二玉に▲2六桂が厳しく、後手は玉頭の嫌味を中々解消できない形です。

中村六段は△1八歩、▲3九飛、△1七角成と飛車を追いますが、先手も飛車が3筋へ回った瞬間を活かして▲3四香と後手玉へ襲い掛かります。

先手が決め手を逃し、泥仕合へ

羽生3冠は▲3三飛成と成り込みましたが、△1四玉と上部脱出を目指され、ここから入玉を巡る死闘が100手以上繰り広げられることになります。

▲3三飛成では、▲1五歩、△3九馬、▲3三桂成と飛車を見捨てて攻める手がありました。後手は1筋に歩が打てないことが痛く、△1四香には▲2六桂で、△1四角(!)にも▲同歩、△同玉、▲2六銀で、先手は最小限の攻め駒しかないものの、後手玉はギリギリ寄っていました。

両者一分将棋の秒読みが延々と続く中、後手の粘りが功を奏し、ようやく入玉が見えてきた局面です。しかし、△2三香が痛恨のミスで、すかさず▲同成桂と指されて形勢は急接近します。△同銀は▲1七竜以下寄り、△同金には▲1四竜(△同金には▲3五銀打以下詰み)と取られてしまうため、後手は香をタダで取られてしまいました。

しかし、中村六段は気力を奮い立たせて△3六玉と指し、▲2四竜に△2五銀打と持ちこたえます。

後手玉は入玉を果たしましたが、ここで▲4九香がぴったりの一手。△同玉は▲5九金、△同銀成は▲6七銀以下詰みなので、後手は次の▲5九金と▲4八金の狙いを同時に受けることが出来ません。やむなく△4八歩と打ちましたが、▲5九金、△4七玉、▲4八金で、先手はついに後手玉を押し返すことに成功しました。

しかし、中村玉は中段でなおも耐え続けます。

激闘の果てに

手数は180手を超えましたが、後手玉が寄るかどうかは依然として微妙な情勢です。ここで△2六金と打てば、まだ優劣不明の激戦が続いていました。

中村六段は△同銀成、▲同歩に△3六銀(!)、▲同歩、△3七金と、受けの鬼手をひねり出しましたが、結果的には▲1八銀から先手に押し切られてしまいました。

王座戦史上最長手数となる203手の大熱戦の末に、若き挑戦者をねじ伏せた羽生3冠は、この後フルセットの激闘の末に王座を死守しました。さらに翌年以降も、豊島、佐藤(天)、糸谷と、並み居る若手強豪を相手に防衛を続けます。そして、王座通算24期という無敵の牙城をついに崩したのは、2017年に再び挑戦を果たした中村六段でした。

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