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渡辺棋王を襲う、一流棋士の厄年「33歳」

time 2018/03/06

竜王失冠、そしてまさかのA級陥落と、2017年度は試練の年となっている、33歳の渡辺棋王。過去のレジェンド達の棋士人生を振り返ってみても、非常に多くの棋士が33歳の年に同じような試練を味わっていました。まさに将棋界の「厄年」とも言うべき「33歳」という年齢に、超一流棋士達の身に起きた出来事をご紹介します。


出典:朝日新聞

大山康晴15世名人の場合

出典:読売新聞

1956年、当時の大山名人は升田2冠に王将戦で敗れ、さらに翌年には名人位も失い無冠に転落します。1955年には王将戦で升田王将に香落ちで敗れる(当時の王将戦はどちらかが3勝以上勝ち越すと手合いが香落ちになるルールでした)という屈辱も味わっており、この時期は全盛期の兄弟子の前に苦戦を強いられていました。

加藤一二三九段の場合

1973年、加藤八段は名人挑戦を果たしますが、中原名人に0勝4敗とストレート負けを喫してしまいます。するとこれで調子を落としてしまったのか、この年は棋士人生2度目の負け越しを経験し、タイトル戦の舞台からも3年近く遠ざかります。

中原誠16世名人の場合

1980年、時の第一人者だった中原4冠は、棋聖、十段、棋王を立て続けに失います。名人は防衛し、王位を奪取して2冠は死守したものの、この年は棋士人生で初めて勝率が6割を切るなど、米長永世棋聖や加藤九段の充実ぶりに押されていました。

谷川浩司九段の場合

出典:毎日新聞

1995年、谷川王将は羽生6冠に0勝4敗で王将位を失い、史上初の7冠王誕生を許してしまいます。勝率も棋士人生最低を記録し、羽生6冠以外の相手にも苦戦が目立ちました。

羽生善治竜王の場合

出典:毎日新聞

2003年、羽生3冠は名人を奪取して4冠となりますが、王位戦では谷川王位に1勝4敗で敗れます。するとそこから森内九段に竜王・王将を立て続けに奪われ、翌年には名人位も失い12年ぶりに1冠へ後退します。タイトルを複数持っていても不調を囁かれてしまうことがあるのは羽生竜王の偉大な実績の裏返しですが、この年は森内九段と谷川九段が共にタイトルを複数持つ形となり、羽生竜王の第一人者としての座が確実に脅かされていました。

何故「33歳」なのか?

将棋の実力は、読みの速さや正確さといった計算能力と、大局観を向上させる過去の経験値の高さに基づくと言えます。前者は二十歳前後をピークに徐々に衰えると思われますが、後者は年齢と共に向上します。

この二つの要素のバランスが変化すると共に、年齢に適した将棋の戦い方(持ち時間の配分、戦型選択など)も変わってくると思われます。羽生竜王も年齢を重ねることに関して、以下のように語られています:

メリットは、いわゆる感覚的なところでの経験値が上がるので、無駄なことを考えなくて済むとか、大雑把に局面を捉えるとか、そういうところがあります。一方でデメリットは、記憶力や、あるいは反射的にパッと対応するとか、そういうところはやはり年齢が上がってくると難しくなってきます。なので、いかにそのあたりでバランスをとるかが課題になっています。

(2017年12月、永世7冠達成後の記者会見にて)

33歳という年齢は、これまで読みの能力を強みに勝ってきた一流棋士たちが、大局観を活かす戦い方へシフトする過渡期で苦労する時期と重なることが多いのではないでしょうか。

渡辺棋王、復活なるか?

昨年の竜王戦開幕前に、渡辺棋王は「将棋がすごく変わってきていて、ちょっとそれに自分はついていけていない」と語っていました:


このような現代将棋の潮流に、過去の名棋士達も苦戦を強いられた「33歳」という厄年が重なってしまった渡辺棋王。しかし過去の例のその後を見ると、大山15世名人、谷川九段、羽生竜王のように僅か1年程度でタイトルを複数奪還するなど、V字回復を成し遂げたケースもあります。第2局を終えて1勝1敗となっている棋王を死守し、復活ののろしを上げることが出来るでしょうか。
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管理人の棋力はアマ五段くらい。好きな棋士は谷川浩司九段、「将棋の渡辺くん」に登場する渡辺棋王、佐々木勇気六段の話をする三枚堂達也六段、「りゅうおうのおしごと!」に登場する空銀子女流二冠です。

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