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棋王戦の行方を左右する振り駒:各タイトル戦の先手番勝率の傾向

time 2018/03/24

渡辺明棋王が六連覇を、永瀬拓矢七段が初タイトルを懸けて争う、第43期棋王戦五番勝負最終局が3月30日に行われます。ここまで4局は先手番が全て勝利しているのみならず、棋王戦では一昨年から先手番が計10連勝しており、最終局では振り駒で先手番を得た方が少なからず有利になりそうです。


出典:Abema TV

一方で、ほぼ時期に行われていた今期の王将戦では、後手番が5勝1敗と大きく勝ち越しています。一日制の棋王戦と二日制の王将戦の違いについて、渡辺棋王は以下のようにコメントしています:

2日制だと何が違うのかは興味深いですが、確かに自分も竜王戦七番勝負では先手番をキープし合うという展開はあまり経験がないです。後手は正しく指さないと持っていかれる、という局面が多いのは間違いないと思いますが、それが2日制だと夜を挟むので精度が上がる、ということでしょうか。2日制は中盤で半日以上のインターバルが入るので読みの深さ、その将棋の理解度は1日制とは違ってきます。

(「渡辺明ブログ」より)

そこで、直近10年の、各棋戦におけるタイトル戦の先手番勝率を調べてみました。

タイトル戦の先手番勝率(直近10年)

先手番勝率は一日制のタイトル戦では55.9%、二日制は48.9%と、確かに少なからず差がありました。さらに、「竜王戦では先手番をキープし合うという展開はあまり経験がない」という渡辺棋王の印象通り、最近の竜王戦は先手番の勝率が40.7%と、タイトル戦の中では傑出して低くなっています。

このサンプル数では一日制と二日制の勝率差が統計学的に有意だとまでは言えませんが、後手番の時に序盤から均衡を保つことは、現代のトップ棋士同士では持ち時間が短い時の方が難しいことは確かなようです。

渡辺棋王は特に先手番が欲しい

一日制タイトル戦の傾向のみならず、今年度の両者の成績を見ても、先手番を得た方がアドバンテージを握りそうです。

自身初の負け越しが決まっている今年度の渡辺棋王は、先手番の成績が13勝9敗なのに対し、後手番では6勝18敗と大きく負け越しています。渡辺棋王は通算でも先手番の勝率が後手番と比べて約9%高く、平均的な棋士以上に先手番を得意とするタイプではありますが、今期は特に後手番で苦戦が目立っています。

一方の永瀬七段の今年度成績は先手番で21勝3敗、後手番で20勝8敗。こちらも先手番の方が勝率が高いですが、渡辺棋王ほど極端な勝率差はありません。先手番をより渇望しているのは渡辺棋王だと言えそうです。

渡辺棋王と永瀬七段の振り駒運

直近3年間の公式戦で先手番になった対局の比率は、渡辺棋王、永瀬七段共に約49%でした。棋王戦最終局は振り駒運がやや悪い棋士同士の対決ということになります。

振り駒だけで勝敗が決まらないことは、公式戦全体の勝率が約52-53%で概ね安定している将棋界の長い歴史が証明しています。しかし、30日に行われる棋王戦第5局が、午前9時の対局開始前に行われる振り駒から目が離せないことも確かでしょう。将棋界にとって激動の一年となった2017年度を締めくくる大一番で、最後に笑うのはどちらでしょうか。

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