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名人戦第3局は羽生竜王が快勝、圧巻のバランス感覚と最速の勝ち方を検証

time 2018/05/09

第76期名人戦七番勝負第3局は、羽生善治竜王が佐藤天彦名人を111手で下し、対戦成績を2勝1敗としました。


出典:Abema TV

竜王に定跡無し  

角換わり腰掛銀の先後同形に近い形から、先手が9筋を突き超したのに対して後手が△6四角と打って△7五歩から歩の交換を目指した局面。▲同歩と穏やかに指す手もありましたが、羽生竜王は▲5七角と真っ向から咎めに行きました。以下△7六歩、▲同銀、△7四銀、▲7五歩、△6三銀に、▲7七金と立ったのが形に捉われない力強い一手で、先手が左辺の手厚さを主張する戦いになりました。

名人の構想力

53手目の羽生竜王の封じ手は▲7八玉でした。後に▲6六歩、△同歩、▲6五歩から6四角を目標に盛り上がって▲4六角や▲5七角~▲6六角を狙う手段があり、この辺りは先手の模様が良さそうな局面に見えました。

しかし▲7八玉に対して佐藤名人が△4二角と引いたのが気づきづらい妙手で、6四の好位置をあっさり放棄して▲4六角に△6四銀と組み替えたことで、先手陣の厚みに対抗出来る形になりました。

△6四銀に対して▲2四歩、△同銀、▲2二歩、△同金、▲7四歩と決戦を挑む手もかなり有力でしたが(7三桂を入手すれば▲3四桂が痛打になります)、この展開は▲7八玉と寄った封じ手が7筋の戦場へ近づく悪手となってしまうだけに、先手としても実戦的には選びづらいでしょう。本譜は羽生竜王が▲5八金から陣形整備を選んだことでじりじりとした展開が続きました。

不可解な仕掛け

中央の小競り合いの末に5段目に歩が8枚も並ぶ珍しい局面に。佐藤名人はここから△9四歩、▲同歩、△同香、▲9五歩、△7四歩と仕掛けましたが、この後の進行を見ると無理攻めだったようです。以下▲同歩、△7五歩、▲7三歩成、△7六歩、▲同金、△7五歩に、あっさり▲7四とと捨てたのが妙手で、△同飛、▲8五金、△7一飛と手番を握ってから▲2六桂と反撃した手が非常に厳しく、先手が優位に立ちました。

△9四歩では△6三金と上がっておけばこれからの将棋でした。後手は桂や歩を渡すと▲2六桂や▲3六歩、△同歩、▲3五歩が厳しいものの、現状では先手から仕掛ける手段は難しく、△2二玉などと自陣にさらに手を入れてからいつでも△7四歩と仕掛ける権利が残っている後手がむしろ作戦勝ちになっていた気がします。このような平凡な構想を見送って△9四歩の決戦策を選んだからには(千日手でも構わない後手番であることを踏まえるとなおさら)、佐藤名人には勝算があったはずで、この後の変化の中で何らかの誤算があったのだと思われます。

勝利宣言

先手優勢ながら玉の薄さも気になる局面で、▲7四歩から丁寧に受ける手も考えられましたが、羽生竜王は43分の長考の末に▲3四桂と踏み込みました。安全勝ちを捨てて最短の勝ちを目指した指し方で、局面の形勢と時間の使い方を考慮すると勝利宣言のような一手です。以下△7七銀、▲6九玉、△8一飛、▲5四歩、△8五飛、▲6四角、△4一玉に、▲5九玉と寄る手がぴったりで(▲5八玉は△8七飛成が詰めろ)、先手玉へ詰めろが続かず羽生竜王の1手勝ちがはっきりしました。

先手がリードを奪えそうな序盤を佐藤名人が△4二角~△6四銀という気づきづらい構想で持ちこたえ、一時は作戦勝ちになりそうな局面になっただけに、△9四歩以降の進行で比較的はっきりと差がついてしまったのは残念でした。終局の数手前の佐藤名人は、リップクリームを塗り、水を一口飲み、ティッシュで鼻をかみ、今度はアップルジュースをゆっくりと飲んだ後に席を立たれました。投了直前の佐藤名人のルーティーン(第1局のように既に秒読みになっている場合を除く)であるリップクリームから投了までにさらに心の整理の時間を要したことにも、もしかすると本局の内容に対する後悔の念が表れていたのかも知れません。

羽生竜王が第2局の完敗の鬱憤を晴らすような快勝を飾ったことで、挑戦者が2勝1敗と再びリードを奪いました。しかし佐藤名人が後手番での得意戦法である横歩取りを温存したことや、先手番となる第4局は名人の地元福岡で行われることもあり、七番勝負の行方は予断を許しません。羽生竜王は直近では名人戦第2局と王位リーグ(対木村九段戦)の後手番の将棋で、いずれも序盤でリードを奪われて敗れていることもあり、羽生竜王の戦型選択も注目されます。

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