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将棋名局集「震える指」:渡辺vs羽生 第51期王座戦第5局

time 2018/03/06

羽生竜王が勝利を確信した時、駒を持つ指が震えるのは有名ですが、その現象が見られるようになったのは30代半ばからです。本局は初めて羽生竜王の指が震えた、渡辺棋王との最初のタイトル戦からの一局です。


第51期王座戦五番勝負第5局

2003年10月15日
渡辺明五段(2勝) vs 羽生善治王座(2勝)
対局場:神奈川県「横浜ロイヤルパークホテル」
持ち時間:各5時間

史上四人目の中学生棋士となった渡辺明五段。デビュー直後こそその本領を発揮するまでにやや時間がかかりましたが、四年目のこの年は7割五分に迫る高勝率でタイトル戦初挑戦を果たすと、羽生4冠を先に2勝1敗と追い込むなど、互角以上に渡り合います。

羽生4冠が千日手指し直しの末に第4局を制し、勝負の行方は第5局までもつれ込みます。先手の渡辺五段が矢倉を選択し、最終局にふさわしいがっぷり四つの戦いになりました。ここから先手は▲3五歩、△同銀、▲同銀、△同歩、▲1五歩と総攻撃を仕掛けます。

後手が反撃に転じ、局面は全面戦争の様相を呈しています。渡辺五段は▲同銀と応じましたが、結果的には▲1一香成と攻め合った方が良かったようです。△1三歩には▲同香成、△同桂、▲1八飛で、飛車が存分に活躍出来そうな形です。本譜は後手からの玉頭攻めが厳しく、先手は守勢に立たされます。

執念の頑張り

6三銀、7九桂など、苦しい受けを強いられいる先手ですが、ここからさらに▲7二銀打が必死のクリンチ。後手玉への挟撃体制の要である6三銀を死守し、間違えたら許さないというプレッシャーを掛け続けます。しかし羽生4冠も△1一歩と手筋の一着を放ち、差は中々縮まりません。

決め手

ここで△8七歩成、▲同玉、△6七歩が決め手となりました。▲同桂は△6六歩、角を逃げても△7五角~△8四飛と大駒が先手玉を直撃する形となり、収拾がつきません。

△6八金を見て渡辺五段の投了となりました。頭金まで指された投了図から、あと一歩でタイトルを逃した無念さがにじみ出ています。

「宇宙人」の指先

この対局の終盤で、羽生4冠の指が震えて駒がつかめない場面が数回見られました。控室のモニターからもはっきり確認できるほどの震えで、相手の駒をゆがませるほど着手に苦労していたそうです。そしてこれ以降、タイトルが懸かるような大一番の最終盤では、勝ちを確信した羽生4冠の指が震えるシーンが度々目撃されるようになります。

「羽生マジック」による驚異的な勝ちっぷりから、7冠達成前後には「宇宙人」とも称された羽生竜王。次世代を担う若き挑戦者との極限の凌ぎ合いの中での指の震えは、宇宙人が初めて人間らしさを覗かせた瞬間でした。

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