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順位戦プレーオフ:羽生竜王が驚異の踏み込みで挑決進出

time 2018/03/19

第76期A級順位戦プレーオフ準決勝は、羽生善治竜王が豊島将之八段に84手で勝利しました。


振り駒でプレーオフ4局連続となる先手を引いた豊島八段。横歩取りから▲3六飛と引く旧型の構えに対し、羽生竜王は△7二銀・△6二金型で対抗。それを見た豊島八段が一筋から速攻を仕掛け、両者の主張が序盤から激突します。

先手が取れる香を取らずに▲2四歩と垂らした局面。△1三香には▲3二角成、△同玉、▲1二角成で、▲2二馬を受ける手段がありません。

羽生竜王は△3八歩成、▲同角、△2七歩成(▲同角は△2八飛)、▲5六角としてから△1三香。今度は▲3二角成には、△同玉、▲1二角成に△2一歩と底歩を打つことが出来ます。いかにも羽生竜王らしい曲線的な手順で、短手数の中でも濃密な読み合いが続きます。

豊島八段は▲3五歩、△3七歩、▲3四歩、△3八歩成と攻め合いましたが、次の▲3三歩成に45分の長考を強いられており、何らかの錯覚があったのかも知れません。桂頭を歩で攻める、いかにも本筋という手順ですが、△同金と取られて2一角が空を切る形となり、後手の速度勝ちが見えてきました。

あくまで▲3二角成と切る手を中心に組み立てるために、▲3五歩に代えて▲7八玉と早逃げする手はあったかも知れません。△3七歩ならそこで▲3二角成、△同玉、▲1二角成で、後手は△2一歩と受ける持ち歩がありません。ただし、▲7八玉には△8一飛と催促する手もあり、形勢は難解です。

豊島八段も必死に攻めをつなげていますが、△3三金と逃げておけば後手は安全勝ちが望めそうな形です。しかし羽生竜王は△4八と(!)と最短の勝ちを目指し、▲2三角成(△同銀は▲4三角成で詰み)とただで金を取らせて△5一玉と早逃げする、驚きの順へ飛び込みました。

予想外の手順に、普段から対局姿勢が美しい豊島八段の背筋がより一層伸びます。しかし、いかにも寄りがありそうな局面でしたが、残念ながら先手の勝ち筋は落ちていませんでした。▲4三角成、△5二銀、▲2四馬、△6一玉、▲5一金、△7一玉、▲5二金、△同金に▲同馬と取った手が詰めろにならず、△5九とで後手の1手勝ちがはっきりしました。

難敵を下し、名人挑戦まで後1勝と迫った羽生竜王。今年度前半には立て続けにタイトルを失いましたが、竜王戦開幕以降は12勝5敗と息を吹き返しています。プレーオフ決勝で待ち受ける稲葉八段は今期順位戦でも敗れている強敵ですが、名人獲得によるタイトル通算100期達成という偉業が現実味を帯びてきた感はあります。

一方の豊島八段は、またしても大一番で羽生竜王に煮え湯を飲まされてしまいました。勝率8割を優に超えていた今期前半の勢いは、念願のタイトル獲得を強く予感させるものでしたが、王将戦と順位戦プレーオフが平行する超過密日程にも泣かされ、「不運な棋士」というイメージを払拭出来ませんでした。

真の将棋界最強は誰だ?「レーティング」が示す「不運な棋士」とは?

王将戦と順位戦では敗退してしまいましたが、豊島八段はその高すぎる安定感により、他の棋戦では現在全て勝ち残っています。来年度こそは、来年度こそは、タイトルを取って欲しいと願うファンはさらに増えたのではないでしょうか。

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