2018/10/16
史上初の6者プレーオフを勝ち上がった羽生善治竜王が佐藤天彦名人に挑戦する第76期名人戦。佐藤名人は名人3連覇が、羽生竜王は名人通算10期とタイトル通算100期が懸かるシリーズは、第1局が4月11・12日に東京「ホテル椿山壮東京」にて開幕します。

2年前には当時A級1年目だった佐藤八段が、後続に2勝差をつけて順位戦を勝ち上がった勢いそのままに羽生名人を圧倒し、4勝1敗で初タイトルを獲得しました。しかし、今年の名人戦では佐藤名人が非常に苦しい戦いを強いられることになりそうです。
対照的な両者の調子
今年度前半の両者は、羽生竜王がタイトルを立て続けに失い、佐藤名人も名人防衛こそ果たしたものの勝率は5割程度と、不本意な成績が続いていました。しかし、羽生竜王は永世七冠が懸かっていた昨年の竜王戦開幕以降は13勝5敗としり上がりに勝ち星を積み重ねています。一方、佐藤名人は今期の勝率がプロ入り以来初めて5割を下回っており(16勝18敗)、自身2度目の5連敗も喫するなど(12年間で2度しか経験していないというのも凄いことですが)、未だ本調子とはほど遠い状態です。
竜王戦と重なる状況

昨年の竜王戦では、永世七冠達成が懸かった羽生棋聖に注目が集まり、渡辺竜王は背後からカメラを向けられるヒール役となってしまいました。勝敗に直接的な影響があったとまでは言えないものの、アウェーの空気感による戦いづらさはあったはずです。
名人戦にも羽生竜王のタイトル通算100期という大台が懸かっており、永世七冠ほどではなくとも羽生竜王に注目が集まる戦いとなりそうです。佐藤名人としては、これまで経験してきたタイトル戦の中で最もプレッシャーを感じるシリーズになることは間違いありません。
王位リーグと名人戦のジンクス
中原誠16世名人は過去に雑誌の記事で、王位戦挑戦者決定リーグでの対局が名人戦で調子を上げる原動力の一つになっていた、と書かれています。
これは、名人戦の前半と重なる4-5月は将棋界では他棋戦の対局が少ないという事情が影響しています。勝負勘を維持することが難しい中で、対局が組まれる数少ない棋戦が王位戦の挑戦者決定リーグなので、このリーグに出場している年は名人戦でも調子を上げやすかった、とのことです。
過去15年の名人戦の結果を見ると、対局者のどちらかのみが王位リーグに出場していた年は7年あり、王位リーグに出場していた棋士が5度制しています。
そして、今年の王位リーグには羽生竜王が前王位として出場している一方、佐藤名人は予選決勝で惜しくも敗退しています。
「羽生2冠」の驚異的なタイトル戦勝率
羽生竜王のタイトル戦登場は133回、通算タイトル数は99期なので、勝率は約74%です。ただし挑戦者として臨んだタイトル戦に限ると、35回挑戦中22期獲得で、勝率は63%まで下がります。
しかし、羽生竜王のタイトル数が2冠以下の時に挑戦者となった勝負では、勝率は逆に83%(12回挑戦で10期獲得)まで跳ね上がっています。過去25年で羽生竜王のタイトル数が2冠以下だった期間は僅か4年弱(!)しかなく、驚異的な復活力と言わざるを得ません。
竜王・棋聖の羽生「2冠」を挑戦者に迎える佐藤名人は、3冠という定位置へ復帰せんとする羽生竜王の勢いとも戦わなければなりません。
対戦成績では僅かに佐藤名人がリード
多くの観点から佐藤名人の苦戦が避けられそうにない今年の名人戦ですが、過去の対戦成績では佐藤名人が8勝6敗と勝ち越しています。最後の対局は2016年11月と、今年度の不調が始まる前ではありましたが、名人戦開幕までに当時のイメージを取り戻し、逆境を力に変えることが出来るでしょうか?
コメント
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