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豊島八段が阿久津八段に勝利、序盤中盤終盤スキがない将棋を徹底検証

time 2018/04/16

第59期王位戦挑戦者決定リーグ、阿久津主税八段vs豊島将之八段の一戦は、豊島八段が81手で勝利しました。豊島八段はこれで白組リーグ3戦全勝となり、次戦で同じく3連勝中の澤田六段と対戦します。


超積極策

後手の阿久津八段の角交換振り飛車に対し、豊島八段が序盤早々に戦端を開きました。

何気ない駒組の途中のようですが、豊島八段は▲2三角、△3四角、▲4一角成といきなり襲い掛かりました。△同飛に▲3二金、△5一飛、▲3三金、△同桂、▲4二銀と進み、先手は一応駒損は回復できる形です。

先手の銀冠は本来なら持久戦を目指す駒組みであり、もちろん平凡に指し進めても一局の将棋でしたが、あえて激しい順に飛び込んだのは豊島八段らしい積極策でした。ただし本局の場合は後手の駒を手順に捌かせる意味もあり、実際の形勢はいい勝負です。

▲3三銀成に対して△1二角や△4五角も有力でしたが、阿久津八段は△2五歩と最強の手段で応じました。▲3四成銀で瞬間的に大きな駒損ですが、△2六歩、▲3八金、△4九角と進み、2筋突破が確定しました。

以下▲9五歩、△2七飛成、▲同飛、△同飛成、▲同金と進み、そこで取れる金を放置して△6九飛と打った手も妙手でした。先手は大きな駒得ながら右辺に駒が大量に取り残された形で、この辺りは後手がやや指せそうでした。

僅かなミス

先手が▲4三成銀と入った局面ですが、ここで△2九飛成と指した手が結果的には疑問手となりました。すかさず▲5二成銀と味よく活用され、△7一金打、▲6一成銀、△同銀、▲1六角、△7二銀打、▲5一金と進み、先手が食いつきに成功しました。

△2九飛成では先に△7一金打と受けていれば、後手が僅かに指せていた気がします。先手が攻めを続けるには▲9三歩成、△同歩、▲5二成銀(△同金なら▲9二歩~▲9一角。ちなみに先に▲5二成銀と捨てると△同金、▲9三歩成に△同桂、▲9四歩、△6一金と受けられます)くらいしかありませんが、これなら仮に本譜と同様に進んだとしても▲9三歩成と△同歩の交換が後手にとってかなり得になります。

スキがない受けの決め手

後手が自玉の一瞬の猶予を活かして肉薄していますが、▲8七飛が唯一の受け方で先手の勝ちが見えてきました。以下△6一銀、▲9七銀に△6九馬が詰めろにならず、▲6一角成から豊島八段が寄せ切っています。

△6九馬では△6二金打と粘る手もありましたが、▲7八銀打、△5七桂に▲8五歩が飛車に活を入れる絶好の一手となり、次の▲8四歩が厳しく後手が勝てないようです。

本局は手数こそ81手と短かったものの、序盤早々の大決戦からお互いに僅かなミスも許されない難しい局面が長く続いた熱戦だったと思います。そんな中で豊島八段の指し回しはまさに「序盤中盤終盤、スキがない」という代名詞通りの正確さで、最近の充実ぶりが本局にも表れました。次戦の澤田六段戦は全勝同士の直接対決で、勝った方が挑戦者決定戦進出へ大きく前進する大一番となります。

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