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叡王戦第3局は21時から千日手指し直しに、衝撃の幕切れを徹底検証

time 2018/05/12

第3期叡王戦七番勝負第3局、金井恒太六段vs高見泰地六段の対局は、112手で千日手が成立しました。指し直し局が21時から行われています。


衝撃の幕切れを迎えた千日手局を検証します。

研究が実を結ぶ

後手の高見六段が第1局に続いて得意の横歩取りを採用したのに対し、金井六段が序盤から殆ど時間を使わずに積極的に端から仕掛けました。

現地で大盤解説を行っていた広瀬章人八段によると、最近金井六段と行った研究会でこの局面が出現し、その感想戦では▲2四歩が有力とされたそうです。形勢は微差ではありますが、本局でも金井六段は▲2四歩と選択し、事前の研究が十二分に物をいう展開になりました。

怪しい勝負術

中盤のねじり合いを経て、直前に金井六段が△6六歩を手抜いて▲1三飛成と斬り合ったのが好判断で、ここでは先手の勝ちが見えてきています。例えば△6七歩成、▲同金、△6六歩、▲5六金、△6七角には▲1六桂が▲3二成香以下の気づきづらい詰めろになり、△3四金にも▲4五金が再び▲3二成香以下の詰めろなので後手が勝てません。

しかし高見六段はここで△6三銀(!)という強烈な勝負手をひねり出しました。先手玉は香を渡すと△6七歩成以下の詰みが生じるのですが、少し前に▲6四香に対して△5二金と寄ったばかりでもあるため、先手からは非常に見えづらい一手でした。

ただし、金井六段が▲5六銀と手厚く受けた手が冷静な一手で、実際の形勢はむしろ差が開いています。しかし持ち時間が切迫する中で全く読みになかったであろう勝負手が飛んできたことは少なからず金井六段の動揺を誘ったはずで、この後のドラマの伏線となりました。

その発端となったのが△6四香に対する▲5八玉で、△6六桂と手順に活用されて先手玉も怖い形となりました。代わりに▲6六歩と中合いし、△同桂に▲6八金寄と受けて後手から詰めろが続かないことが読み切れていれば、金井六段が問題なく勝ち切っていました。しかし、△6六同桂と呼び込む形は馬、桂、香が先手玉を睨んだいかにも何かありそうな局面になるだけに、秒読みの中で直感的に読みを打ち切ってしまっていたとしても無理はありません。

勝利を逃す

その後も金井六段の勝ちは何通りかありましたが、その中の一つへ向かっていると思われた最中にドラマは起きました。

高見六段が△4四歩と詰めろを受けた局面ですが、ここから▲3一飛、△4三玉、▲4一飛成、△4二飛、▲同竜、△同玉と進み、同一局面に。金井六段としては秒読みの中で千日手含みに時間を稼ぐチャンスかと思われましたが、何とここから▲3一飛から同じ手順を繰り返して本当に千日手が成立しました。

▲4一飛成に代えて▲3六歩、もしくは▲4二同竜に代えて▲2一竜と打開していれば、依然として金井六段が勝勢に近い形勢でした。第2局で逆転負けを喫した記憶と、本局でも△6三銀に象徴される勝負手を高見六段が連発した結果が、秒読みの金井六段の決断を鈍らせたと思われます。

出典:ニコニコ生放送

最終手の▲4二同竜を指す直前の金井六段は両手で頭を抱えていました。勝勢の将棋を取りこぼした動揺は大きいでしょう。

出典:ニコニコ生放送

千日手指し直し局は高見六段の先手で21時から始まっています。精神的な動揺、持ち時間の差(高見六段が79分、金井六段が60分で開始)、そして先手番が高見六段へ移ったことなどから、勝負の流れは高見六段へ傾いていると思いますが、金井六段は踏ん張ることが出来るでしょうか。

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