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深浦九段が羽生竜王に勝利:「羽生さんに勝った責任」と共に藤井七段と再戦

time 2018/05/25

第66期王座戦決勝トーナメント1回戦、羽生善治竜王vs深浦康市九段の対局は、114手で深浦九段が勝利しました。深浦九段は準々決勝で藤井聡太七段と対戦します。


トップ棋士同士の白熱のねじり合いを検証します。

出典:Abema TV

角の処置

後手の深浦九段が得意の雁木模様に構えたのに対し、羽生竜王は早繰り銀から速攻を仕掛け、深浦九段も反発したことで序盤早々から決戦に突入しました。

両者の銀が角頭を目指して突撃していますが、先手が手番を握っている一方で玉は後手の居玉の方が戦場から遠く、形勢は何とも言えません。第一感だと何はともあれ▲3四歩と打ってみたくなりますが、羽生竜王は味消しと見て単に▲5五角と出ました。しかし△6四銀、▲6六角に△3四歩と引っ張り込んだのがこの場合は妙手で、以下▲同銀、△同銀、▲同飛に△8六歩、▲同歩、△7五銀打と進むと、先手の角だけが目標にされる展開となりました。

後手は△3四歩で歩損をしたものの、先手の飛車を近づけたことで角がいじめられづらくなっており、この手があるのであれば先手はやはり▲3四歩を決めた方が無難だった気がします。

異次元の大局観

後手の攻めが決まったかに見える局面で、▲同銀や▲同桂だと8八角が半永久的に働かなくなってしまいます。消去法で本譜の▲同角しかありませんが、ほぼ無条件で角銀交換の駒損となったように思われました。

しかし以下△同銀成、▲同銀、△7三桂に、▲8三銀と打ったのがいわゆる「羽生ゾーン」と呼ばれるいかにも羽生竜王らしい指し回しでした。△4二飛に▲7四銀不成と進んでみると、後手の飛車が抑え込まれたことや次の▲6三銀成が後手の居玉に対して非常に厳しい狙いとなっていることもあり、むしろ後手が焦らされる展開になっています。

△7三桂では代わりに△8八歩(▲同銀なら△5五角)と攻める手も有力でしたが、後手としては△8四飛と走れない(▲3三飛成~▲9五角が王手飛車)ことが多くの変化で予想以上に響いています。▲7七同角と取って指せる、というのがもし羽生竜王の当初の予定通りだったとすると(さすがにどこかのタイミングで何らかの予定変更があったのだと想像しますが)、恐るべき大局観です。

強烈な勝負手

その後も激しいねじり合いが続いて迎えた終盤戦。後手玉は▲6一飛成以下の詰めろで、先手玉に詰みはなく後手が困ったようですが、深浦九段は強烈な勝負手を用意していました。

△7七銀、▲8九玉、△8八銀成(!)、▲同玉、△6六飛

玉を3三角のラインに引きずり込んでの△6六飛が絶妙な手順で、▲6一飛成には△同飛が逆王手になります。

感想戦ではこの局面が延々と検討されていましたが、▲5二銀、▲4二銀、▲6三桂など有力な変化が多岐に渡り、先手に勝ちがありそうな手順が多かったものの、明快な結論は出なかったようです。本譜の▲6六飛も候補手の一つではありましたが、△同角、▲7九玉、△7三飛と進み、形勢不明になりました。

攻防手がめまぐるしく飛び交った末の最終盤。先手玉は詰めろではないものの、後手の大駒の利きが絶大で後手玉に駒を渡さずに詰めろを掛けることも難しい局面です。羽生竜王は▲8七角と受けに回りましたが、結果的にはこの手が敗着で、△7七飛成で受けに窮しました。▲8八銀打には△5七馬(!)からの気づきづらい即詰みがあります。

▲8七角では代わりに▲7六歩(馬取り)と打ち、△9九馬には強く▲5九金引と催促していれば、まだ激戦が続いていたようです。とはいえ、この最終盤の忙しい局面で飛車筋を受けただけの▲7六歩は実戦的にはかなり指しづらい一手ではあり、少し前の△6六飛の局面では先手に有力な候補手が複数あったのと比べると、流れとしては既に相当先手が勝ちづらい展開ではありそうです。

「羽生さんを負かした責任」

中盤で角銀交換の駒得を果たしながらも、▲8三銀からの「羽生ゾーン」により意外にも優勢を築く手順が見つからなかった深浦九段。相手が羽生竜王ということもあり、並みの棋士であれば焦りから自滅してしまってもおかしくない展開でしたが、そこから形勢を離されることなく終盤まで追走し、△8八銀成~△6六飛という強烈な勝負手を繰り出したのはさすがの底力でした。

「将棋星人」の異名を持つ羽生竜王に対し、深浦九段は少し前にニコニコ生放送で「地球代表」なる称号を襲名(?)されていましたが、本局の終盤ではまさに地球の運命を懸けていたかのような非常に難解なねじり合いが展開されました。1時間を超える長い感想戦の中で羽生竜王がいつになく悔しさをにじませていたように思えたのも、恐らく気のせいではないでしょう。

昨年の叡王戦で羽生竜王を破って本戦出場を決めた際、深浦九段は「羽生さんを負かした棋士には責任がある」と語り、その言葉通り本戦では藤井四段(当時)に大逆転勝ちを収めました。

今期の王座戦も奇しくも当時と似た展開となっていますが、準々決勝の藤井七段戦で再び「地球代表」の意地を見せることが出来るでしょうか。

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