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増田六段が高見叡王に勝利、将棋界屈指のそっくりさん対決の大熱戦を徹底検証

time 2018/06/23

第44期棋王戦予選決勝、高見泰地叡王vs増田康弘六段の対局は、増田六段が180手で勝利しました。


高見叡王(左)、増田六段。出典:日本将棋連盟 

将棋界屈指のそっくりさん対決となった若手強豪同士の大熱戦を検証します。

矢倉は始まったのか?

先手の高見叡王が得意の矢倉を目指したのに対し、増田六段も△4二銀、▲2五歩、△3三銀と同じく矢倉模様に構えました。増田六段と言えば、1-2年ほど前からプロ棋界で突然復活した雁木戦法の優秀さに一早く気づいた棋士の一人で、「矢倉は終わった」という名言(?)は一躍有名になりました。その増田六段が△3三銀と上がったのは意表と言ってもいい出だしでしたが、「がっぷり四つに組み合う従来の相矢倉は」終わったが、後手番の急戦調の矢倉は終わっていない、ということなのでしょうか。

やはり雁木へ

相矢倉模様の出だしでしたが、長い序盤の駆け引きを経て、いつの間にか両者共に雁木に組み替えるいかにも現代将棋らしい展開となっています。△2七銀の飛車取りに対し、先手が▲7七桂と打って切り返したところですが、ここで△8七飛成(!)と斬り込んでいれば、▲同金、△3六銀成と進んだ局面で先手陣の乱れが大きく、後手がはっきり優勢だったようです。本譜の△8一飛でもやや後手が指せそうな形勢ですが、ここから高見叡王も持ち前の中終盤の勝負術を駆使して決め手を与えません。

プレッシャーを絶やさない逆転術

その一端が20数手進んだこの局面での▲4八桂。3六馬に右辺が制圧されそうな場面でしたが、以下△3八歩成、▲3六桂、△2八と、▲4四歩、△3八飛、▲5八銀、△4四銀に、▲7五桂とこちらの桂も駆使して後手陣にプレッシャーを掛け続けます。

この粘りが功を奏したのか、増田六段にも焦りが生じます。依然として後手がリードしていますが、残り時間が切迫する中、ここで後手は△7六歩、▲7八金に、打ったばかりの歩を△7七歩成と成り捨てる時間稼ぎを余儀なくされました。以下▲同金、△4八飛成、▲4七金、△7六桂打、▲7八玉、△5九竜に、▲6九銀打もこの一手とはいえ粘り強い受けで、本譜のように△5三金上と手を戻すようでは明らかに後手が変調です。

ついに逆転

その後も目まぐるしく形勢が動く中、ついに後手に明快に勝つチャンスが訪れます。▲8五角に対して手堅く△6三桂と合い駒をしておけば、先手には次の△7六銀の詰めろ以上に早い寄せがなく手段に窮していました。本譜は△4三玉と逃げたため、▲7二歩、△7六銀に▲同角が再び王手となり、△6五桂、▲同角、△同歩に▲7一歩成と飛車を奪われてついに形勢が入れ替わりました。

最後のミス

先手が4五に竜を作って後手玉を追い詰めていましたが、後手も手順を尽くして王手の連続で王手竜取りを実現させてその竜を除去しました。先手玉は非常に危険で、後手玉は一見上部が広そうな形ですが、ここで一旦▲7七玉と早逃げしておけば難解ながら先手に分がある形勢だったようです。持ち駒が飛車しかない後手からは思いの他詰めろが掛けづらく、一方持ち駒が豊富な先手は次に▲5七桂が非常に受けづらい詰めろになります。

本譜は時間に追われる中、高見叡王は▲7五歩と受けましたが、△8四金と活用されてかえって攻めが加速してしまいました。以下は増田六段が着実に先手玉を追い詰め、180手の大熱戦に幕を下ろしました。

本局は中盤から増田六段が少しづつリードを奪いましたが、決め手を与えずに怪しく追いすがる高見叡王の勝負術も見事でした。それだけに最終盤で勝機をつかみ切れなかったのは残念でしょうが、最後にミスをした者が敗れる将棋というゲームの宿命でもあります。最終盤のドラマも含め、両者が勝負手を連発する中で形勢が目まぐるしく揺れ動いた終盤戦は迫力満点で、リアルタイムで観れなかったことが悔やまれるほどの大熱戦でした。

勝った増田六段は棋王戦本戦進出を決め、初戦で中村太地王座と対戦します。昨年度は順位戦昇級を果たすなど、7割5分に迫る高勝率を記録しましたが、一方で藤井聡太四段(当時)に敗れて29連勝を達成された悔しさも残った一年だったはずです。今年も竜王戦で藤井七段との再戦(藤井七段が決勝トーナメント1回戦で都成竜馬五段を破ると、2回戦で増田六段と対戦します)が現実味を帯びていますが、他棋戦でも昨年以上の更なる活躍を期待したいところです。

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