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増田六段が藤井七段に勝利、「矢倉を終わらせた男」の矢倉の快勝譜を徹底検証

time 2018/06/29

第31期竜王戦決勝トーナメント2回戦、藤井聡太七段vs増田康弘六段の対局は、増田六段が125手で勝利しました。


出典:Abema TV

「矢倉は終わった」     

増田六段の先手で、初手から▲7六歩、△3四歩、▲6八銀、△3四歩、▲7七銀と進みました。

何気ない矢倉模様の出だしですが、先手が「矢倉は終わった」という刺激的な発言が一躍有名となった増田六段だけに、いきなり波乱の立ち上がりと言えそうです。増田六段は直近の対局でも後手番で△3三銀と上がっており、矢倉に関する見解に何らかの変化があったのかも知れません(ただしその将棋は結局その後両者共に雁木に組み替える展開となりました)。

解説者としてネット中継に登場した、増田六段と親交が深い佐々木大地四段によると、最近の増田六段は「矢倉」とは▲6六歩~▲6七金右まで組んだ形のことで、▲7七銀+▲7八金だけではまだ「矢倉」ではない、と語っていたそうです。さすがにこの見解はかなり少数派でしょうが、旧来のがっぷり四つに組み合う相矢倉と本局のような急戦調の将棋が全く別の戦型であることは確かです。

従来の常識にとらわれず雁木の優秀さをいち早く受け入れたことに増田六段の序盤センスが現れていましたが、過去の自分の常識にさえもとらわれず常に現時点で最善だと信じる手を指せることも強さの一因なのかも知れません。

序盤の意欲策

藤井七段が相矢倉に応じ、両者共に早めに桂を跳ねて攻めの形を作った後に駒組へ移りました。ここから▲5八金~▲6六歩~▲6七金左~▲7八玉という構想が半年ほど前に現れた組み方で、後手も同じ形を目指して先後同型になった時に先手から打開して優位を築けるかどうかが現代将棋のテーマの一つとなっています。ただし、増田六段があえてこの戦型を選んだ以上、研究の中で何らかの有望な手順を用意しておられたはずです。

本局は藤井七段が△6五歩と突き、▲6八銀に△4四歩と突いたことで俄かに緊張感が漂う局面となりました。

△6五歩は持久戦になれば大きな位ですが、反面△6五桂と跳ねる余地がなくなったため反撃の味は薄れました。先手がそれを見て▲6八銀と角筋を通して速攻を見せたのに対し、△4四歩がさらに強情な一手です。▲4五桂を防ぎたいとはいえ、将来▲4五歩と突く争点を得た先手が猛攻を仕掛けてくることは必至で、本譜も▲5五歩以下増田六段が攻め続ける展開となりました。

△6五歩~△4四歩はかなり意欲的な手順ではありましたが、この後の展開を見ると結果的にはやや危険だった気がします。

苦心の受け

先手が▲3四歩と大きな拠点を築き、後手に壁銀を強要して好調に攻めているようですが、ここから△2三銀、▲2九飛に△2二歩と打ったのが非常に気づきづらい受けでした。後手の2~3筋の駒はかなりの悪形ですが、先手の7七角の効きを遮断して速攻を防ぎ、△3四銀からの活用を間に合わせれば歩得や6五の位が生きてきます。

藤井七段はこの数手前から相手よりかなり多く持ち時間を投入していたため、形勢に自信があったわけではないでしょうが、△2二歩と指されてみると後手陣もまだまだ頑張れる形のように見えます。

しかしここから増田六段の攻めはさらに冴え渡り、▲4四角、△3四銀に▲2三歩、△同銀、▲4五桂と後手陣に襲い掛かります。

先手の猛攻

数手進み、増田六段は銀の質駒を強要したタイミングで▲7五歩、△8四飛、▲8五歩と最も激しい斬り合いに飛び込みました。△同飛、▲7四歩に△8九飛成と王手で成られるだけに通常ならありえない手ですが、▲7九金、△8四竜、▲7三歩成と進むと、▲5三桂成~▲4五桂のおかわりが厳しく先手の攻めが切れない形になりました。

本譜は必然的に△7八歩、▲同金、△7六歩と攻め合いになりましたが、そこで▲9五角(!)と飛び出したのが狙いの一手でした。

△同竜と取るしかありませんが、この一手で後手の竜の働きが激減します。増田六段としてはこの手に期待したからこそ▲7五歩からの一気の斬り合いへ飛び込んだのでしょう。

一瞬のチャンス

▲9五角に△同竜と取り、▲5三桂成、△同角、▲4五桂と進んだ局面。藤井七段はここで△7五角と逃げましたが、先に△7七桂と打っていればまだアヤが残っていたようです。このタイミングであれば▲同銀と取れない(△同歩成、▲同金に△4四角と手順に逃げられる)ため玉を逃げるしかありませんが、くさびを打ち込んでおけば先手玉にも将来詰み筋が生じ得る展開になります。

本譜は△7五角に▲5三歩、△4二金右、▲6三と、△4一玉に▲5一銀(!)、△3三桂、▲2三飛成(!)以下、増田六段の寄せがさく裂しました。藤井七段も30手以上粘りに粘りましたが、最後は増田六段が1時間以上残していた持ち時間を惜しみなく投入し、2六まで逃げ延びた藤井玉を捉え切りました。

本局は結果的に藤井七段の序盤の構想がやや危険で、増田六段が終始ペースを握る展開となりました。特に夕食休憩前の▲2三歩の局面では持ち時間に1時間半以上の差がついており、藤井七段の苦慮の後が伺えました。増田六段が非常に激しい斬り合いとなる決め方を選んだため、終盤には藤井七段にもチャンスが残された順もありそうでしたが、それまでに持ち時間を大量に消耗させた増田六段の指し回しと決断の良さが勝利を呼び込んだとも言えそうです。全体としてみれば先手の快勝といっていい内容でした。

勝った増田六段は3回戦で佐藤康光九段と対戦します。竜王挑戦への道はここから1組のトップ棋士が続々と待ち受ける茨の道ですが、一年前のリベンジを見事に果たした勢いを味方に付けて更なる上位進出を狙っておられることでしょう。

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