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斎藤七段が藤井七段に勝ち王座戦挑決進出、西の王子の快勝譜を徹底検証

time 2018/07/06

第66期王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝、斎藤慎太郎七段vs藤井聡太七段の対局は、斎藤七段が103手で勝利しました。


出典:Abema TV

藤井七段の必死の粘りを振り切った、「西の王子」の快勝譜を検証します。

藤井流雁木

先手の斎藤七段が角換わりを目指したのに対し、藤井七段は雁木で対抗しました。

先手後手を問わず角換わりを得意とする藤井七段が自ら雁木を選択するのは非常に珍しいのですが、ここで△7三銀の早繰り銀が本局のために用意された作戦だったようです。雁木はどちらかと言えば受け身に回りやすい戦法ですが、4三銀型に構えるだけの最小限の駒組に留めて後手番でも攻め味を見せる構想は、いかにも現代的な積極性を感じます。

7筋からの仕掛けを見せられた先手としてもゆっくり出来ない展開となり、▲5六銀、△6四銀に▲4五歩と足早に決戦に突入しました。

先手ペースに

角と銀の総交換が行われ、両者共に敵陣へ歩が伸びているのっぴきならない局面です。ここで藤井七段は△8六歩、▲同歩、△同飛、▲8七歩、△8三飛と、歩を交換しながら飛車で三段目を受けましたが、▲4五桂、△6四歩に▲6三歩が軽い妙手でした。△同飛に▲8二角が、後手の玉や飛車に近いこともあり見た目以上に厳しく、先手がややペースを握りました。

△8六歩では平凡に△6四歩と手を戻した方が良かったようです。▲4五桂に対する受けが難しそうですが、5三の地点を放置してじっと△2七角と打つ手が気づきづらい反撃です。以下▲5三桂成には△4七歩が厳しく、単に△3六角成と成る狙いもあってむしろ後手が有望だった気がします。

厚みの粘り

数手進み、先手が左辺で駒を入手して着実にポイントを挙げていますが、ここから△4六歩、▲5五桂に、飛車を見捨てて△4五馬と桂を外した手が粘り強い受けで、藤井七段も容易に崩れません。飛車を取られて大きな駒損となるだけに浮かびづらい手ですが、本局では馬の手厚さや後手玉の上部の広さ、後の△6六桂の厳しさなどもあり、後手もまだまだ戦える形です。

藤井七段は序盤早々に戦いとなる将棋では居玉のまま戦うことが多いイメージですが、中終盤では居玉の藤井玉の上部にいつの間にか強大な厚みが構築されて非常に寄せづらくなっていることが多々あります。玉の堅さよりも広さや厚みが物を言う展開に持ち込む技術が特に優れているのでしょう。

ただし、本譜は△4五馬に対し、▲7二銀成ではなく単に▲6三桂成と取ったのが妙手で、斎藤七段がうまくリードを保ちました。△同銀で8一銀が取り残されるだけに指しづらい手ですが、この場合は戦力不足の後手の持ち駒を増やさないことが重要で、次の▲6七金左が△6六桂を防ぎながら4五馬へプレッシャーを掛ける絶好の一手になりました。

勝ちを読み切る

後手が4六の拠点を死守するために△5四桂と打ち、3六馬の守備力が消えた瞬間に先手が猛攻を仕掛けています。そしてこの瞬間に▲4四歩と叩いたのが強烈な踏み込みでした。△同銀には▲2一飛成と先手で取られてしまうため、△7三金と取るよりなく、▲4三歩成、△同金、▲7三飛成、△6六桂打と進みます:

先手玉についに詰めろが掛かりましたが、ここで▲6七銀と手を戻したのが冷静な決め手でした。以下△5八桂成、▲同銀、△6七金に、▲8二竜、△5三玉、▲6五桂打、△同歩、▲同桂、△4四玉に、▲4五銀から3六馬と6七金を一掃する手がぴったりとなりました。際どい変化はあるものの、持ち駒が少ない後手は▲8二竜に対して合い駒が出来ないという制約や、先手は場合によっては▲6八金と受けてさらに駒の入手を図る手段もあるため、後手が勝てないようです。

藤井七段の必死の粘りにめまいがしそうな局面ですが、▲2八金が最後の決め手でした。3七金が動くと▲3六角、△同角成、▲5六銀打で詰むため、後手は指す手がありません。藤井七段はこの局面で1分将棋に突入した末、1手も指すことなく無念の投了となりました。

勝った斎藤七段は挑戦者決定戦で渡辺明棋王と対戦します。破竹の勢いで勝ち進んできた後輩を完璧に近い内容で下した勝利からは、最近の充実ぶりが如実に感じられました。昨年の棋聖戦以来自身2度目となるタイトル挑戦へ向け、否が応でも期待が高まる一局でした。

一方の藤井七段は竜王戦に続き王座戦でも決勝トーナメントで散ってしまいましたが、敗れた2局は一手のミスもなかった斎藤七段と増田六段の強さを称えるべき内容でした。本局はタイトル挑戦が現実味を帯びていた舞台だけに、終局直後のインタビューではさすがに悔しさがにじみ出ていた気がしましたが、近い将来にタイトル戦に登場する可能性は依然として高いでしょう。

現時点で最速で挑戦者となる可能性があるのは棋王戦(2019年2~3月)です。

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