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藤井七段が森下九段に勝利、老獪すぎる中盤の勝負術を徹底検証

time 2018/07/21

第77期C級1組順位戦、森下卓九段vs藤井聡太七段の対局は、藤井七段が104手で勝利しました。


森下九段の鍛えの入った粘り腰と、藤井七段の常人離れした老獪な勝負術がぶつかった熱戦を検証します。

出典:Abema TV

緩急自在

先手の森下九段が得意の矢倉を目指したのに対し、藤井七段は相手に飛車先を切らせる間に早繰り銀を進める現代調の立ち上がりに。

両者共に持ち時間を惜しみなく投入する順位戦らしいスローペースとなりましたが、いつの間にか後手が攻勢を取れそうな上に2枚の桂も活用出来そうな形で作戦勝ちを築いています。ここで△6五銀と戦いを挑む手も有力でしたが(▲5五銀なら△7六銀で飛車先が受からない)、藤井七段はじっと△5四歩と力を溜めました。▲5五銀を消しながら▲4五歩には△5三角を用意した柔軟な一手で、じわじわと中盤のリードを広げる藤井七段らしい腰が入った一手でした。

ただし、本譜は森下九段が1時間近い長考の末に▲7四歩、△同飛、▲7六歩と辛抱したのが好判断で、先手もやや苦しいながらピタリと追走してチャンスを伺います。

最善の頑張り

後手が一方的に銀を手持ちにしながら右桂も活用して好調のようですが、次の▲3五歩が受からないため攻めを急かされている局面でもあります。そこで藤井七段は△9八歩、▲同香、△9七歩、▲同角、△9五香と攻め続けましたが、▲6五銀が当然ながら鋭い切り返しです。△同歩とは取れない(▲5三角成~▲8五角)ため△7二飛と引きましたが、▲8六角、△6五歩、▲9五角と進み、銀と桂香の二枚替えでは後手良しとも言い切れなくなって来ました。

この辺りは藤井七段がやや攻めあぐねている印象でしたが、代案も難しく、それだけ森下九段が最善の受けを続けていたということなのでしょう。

老獪すぎる受け

先述の▲9五角以下、△8八歩、▲同金と利かした局面。先手陣へのとっかかりがなく非常に手が見えづらいところですが、ここから藤井七段は△6三金、▲8六角、△7五歩(!)と渋すぎる対応を見せました。

この局面では角の働きでは後手が勝っているため、先手の角を働かせない(金や角と交換させない)ことが重要だと見ているわけです。厳密には最善なのかどうか判断しかねますが、常人には何時間あっても思いつかない構想であることは確かです。

本譜は△7五歩に対し、森下九段が▲2七香、△6四角、▲2三香成と踏み込んだため、△3七角成から一気に終盤へ突入しました。ただし、▲2三香成では一度▲4六桂と辛抱する手も有力だったようです。

深夜の決着

依然として優劣不明の戦いが続き、藤井七段が先に1分将棋に突入しています。しかし、残り6分の森下九段がここで▲3八銀と逃げた手が疑問手で、ついに形勢が傾きます。以下△4九香成、▲2三歩に△4六桂が厳しい追撃となり、後手の攻め合い勝ちがはっきりしました。

▲3八銀では▲4八香とバリケードを築くように受けていればまだまだ激戦が続いていました。

本局は藤井七段が作戦勝ちを築いたものの、そこから森下九段が最善の頑張りを続けたことで両者1分将棋となる直前まで力比べの均衡が保たれた状態が続きました。そんな中、決戦の直前に力を溜めた△5四歩や、相手の角を封じる△6三金~△7五歩など、随所に藤井七段の常人離れした着想も見られました。

ちなみに、投了1手前の局面では森下玉に長手数の即詰みが生じていましたが、藤井七段は確実に敵玉を追い詰める手を選んでいます。大勢に影響はない局面だったとはいえ、詰将棋選手権4連覇中の藤井七段が詰みを逃した場面はこれまで見た記憶がありませんでしたが、持ち時間6時間の順位戦での森下九段との濃密なねじり合いがそれほど疲労度が溜まるものだったということでしょう。

勝った藤井七段はこれで順位戦2連勝スタートとなり、昨年度から続く順位戦連勝記録も12に伸ばしました。歴代1位は森内俊之九段が若手時代に達成した26連勝で、まだまだ先は長いですが、既に多くの記録を塗り替えて来ている藤井七段なら可能性はありそうです。

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