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王位戦第4局は豊島棋聖が快勝、一分のスキも無い会心譜を徹底検証

time 2018/08/23

第59期王位戦七番勝負第4局、菅井竜也王位vs豊島将之棋聖の対局は、豊島棋聖が119手で勝利し、通算成績を2勝2敗のタイに戻しました。


一分の隙も無い完璧な指し回しで勝ち切った豊島棋聖の会心譜を検証します。

出典:Abema TV

温故知新

先手の豊島棋聖のゴキゲン中飛車を牽制する立ち上がりに対し、菅井王位は四間飛車を選択しました。その後、居飛車穴熊を匂わせる豊島棋聖に対し、後手が飛車を3筋に振り直して石田流を目指すという、20年以上前に見られたような懐かしい戦型へ進みました。

午前12時過ぎの局面。先手は当初の予定通り▲9八香から穴熊に囲う手も有力ですが、振り飛車側は後手番の上に9筋を突き超し、さらに飛車を4筋から3筋へ振り戻したことで通常よりやや手が遅れています。そこで豊島棋聖は▲4六銀と繰り出し、△5三角に▲2四歩、△同歩、▲6八角と積極的に仕掛けました。部分的には広く知られた攻め筋で、当然菅井王位も想定されていたと思われますが、この後の展開を見ると結果的に豊島棋聖の判断は正しかったようです。

苦心の封じ手

▲7七角に対して菅井王位が68手目を封じました。この局面で既に30分以上考えられていましたが、定刻の18時になっても菅井王位の考慮は4分ほど続きました。

形勢はこの時点で豊島棋聖が優位に立っていたようです。駒の働きは後手の3筋の金銀が遊んでいるため大差、駒の損得は5三のと金が大きく実質的に先手の駒得、玉形も先手に軍配が上がるなど、後手は主張点を見つけることも難しい情勢です。菅井王位の封じ手は△5六歩で、以降も攻守を織り交ぜながら局面の複雑化を図る勝負手が続きました。

鉄壁の自陣龍

後手も大駒を自陣へ引き付けて一直線の斬り合いを回避しつつ、△6五歩とじっと伸ばして先手玉にプレッシャーを掛けるなど、秘術を尽くして粘りに出ています。しかしここで▲5七歩と突いた手が腰の入った一手で、豊島棋聖の優勢がより明らかになりました。△同歩成、▲同金、△5四竜には、▲6一歩成から清算してから▲5五歩と先手を取りながら抑えておけば、駒の損得、駒の働き、玉形の堅さの全てで優る先手の良さは揺るぎません。

本譜は▲5七歩に△6六銀と絡みましたが、▲6八竜が絶好の活用となりました。後手玉は駒を渡すと▲6一歩成から殺到されて一気に寄せられてしまいますが、6八龍の守備力を突破するには駒を渡す攻めしかなく、指す手に窮しています。

相手から早い攻めがないと見切り、龍を活用して駒の入手を図る▲5七歩~▲6八竜は非常に味が良い手順で、優勢な局面を単純化させる典型的な勝ちパターンでした。

冷たい決め手

盤面全体を制圧した豊島棋聖が満を持して寄せに出た局面で、▲8五馬と引いた手が冷静な決め手でした。△8四歩と先手を取って受けようとすると▲6九龍が詰めろ竜取りとなってしまいます。やむを得ない本譜の△8二金にも▲6三歩成が痛打となり、ほどなく菅井王位の投了となりました。

菅井王位としては1日目からチャンスらしいチャンスが全くない展開となり、最後も3筋の金銀が盤上に取り残された屈辱的な投了図となってしまいました。豊島棋聖の▲4六銀からの仕掛けがそれほど機敏だったこともありますが、古典的な振り飛車で完敗という流れは第2局と酷似しており、後手番での戦法に苦心されていると推測してしまいます。豊島棋聖は先手番だと▲2六歩~▲2五歩という出だしでゴキゲン中飛車を指させないことが多いだけに、十八番を封じられた菅井王位が再び後手番を迎える第6局までにどのような対策を用意出来るかが、シリーズの行方を左右するといっても過言ではなさそうです。

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