2018/10/16
第76期A級順位戦プレーオフ第1局が行われ、豊島将之八段が久保利明王将を157手で破りました。感想戦が終わったのは午前1時過ぎ。両者はこの32時間後には鳥取で王将戦第5局を指すことになります・・・
また、順位戦プレーオフでは豊島八段は10日に佐藤康光九段と対戦します。
穴熊の食いつき
序盤の駆け引きの末に豊島八段が注文を付ける形となり、久保王将は四間飛車穴熊へ。居飛車が作戦勝ちを収めますが、後手も穴熊の遠さを活かして巧みに勝負形へ持ち込みます。
金銀4枚の先手陣は目がくらむような堅さに見えますが、ここで△9九金(!)と打った手が実戦的な妙手でした。▲8八玉ですぐに取られてしまいますが、△8九金、▲同玉、△6九飛成、▲8八玉、△6六桂と進み、後手の攻めが大幅に加速しました。先ほどまで玉頭を守る手厚い守備駒に見えた8六銀が、△6六桂と横から攻められてみると一転して上ずった悪形になっていますね。
あわや千日手!?
22時を過ぎた局面。先手が耐え忍ぶ展開が続いていますが、次に▲8四歩と突ければすぐに後手玉の寄りが見える形なので、後手もゆっくり出来ません。
ここで△6六銀と指せば、▲6七金、△同銀成、▲6八歩、△7七成銀、▲同銀、△6六銀打、▲8六銀打・・・で何と千日手になる可能性がありました。対局開始から12時間以上経過し、ざわついた関係者も多かったことでしょう。
本譜は△7七馬と切りましたが、この後の進行を見ると結果的には先ほどの千日手の変化を含みに△6六銀を選んだ方が良かったようです。
鮮やかな決め手
先手陣も次の△8六銀が非常に厳しい形ですが、この瞬間に▲7一竜と切ったのが目の覚めるような決め手でした。△同銀、▲8三桂、△8二玉、▲7一桂成と進み、以下は詰めろの連続で豊島八段が押し切りました。
終盤の豊島八段は自陣に何度も何度も駒を投入し、絶対に負けないという気迫を感じさせる差し回しで「スキがない将棋」の神髄を見せつけました。しかし、名人挑戦まではまだ4連勝が必要で、本局の32時間後(!)に始まる王将戦第5局はカド番と、後がない戦いが続きます。
ちなみに、本局が行われていた裏では、NHK杯準決勝の豊島八段の対局も放送されていました。過密日程は勝ちまくっている棋士の宿命ではありますが、豊島八段としては今期こそは高勝率を形ある結果に繋げたいところでしょうか。