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菅井王位が藤井七段に勝利、天才をねじ伏せた中終盤の底力を徹底検証

time 2018/09/03

第44期棋王戦挑戦者決定トーナメント、菅井竜也王位vs藤井聡太七段の対局は、菅井王位が133手で勝利しました。


非常に長いねじり合いの末に天才をねじ伏せた菅井王位の正確無比な中終盤を検証します。

振り駒の不運

菅井王位の先手で中飛車対居飛車の急戦形に。藤井七段はこれで振り駒が行われた対局では直近12局で後手番が実に11度(!)も続いています。

先手は中飛車らしく銀を繰り出して玉頭勝負へ持ち込もうとしていますが、後手も飛車先突破が見込める形でまずまずの仕掛けを得た形でしょう。しかし菅井王位がここで▲7四歩と垂らした手がお互いの距離感を見切ったさすがの一手でした。

△7七銀成の突破が目に見えていますが、以下▲同金、△同歩成、▲同桂、△8九飛成、▲6五桂と進むと、一方的に飛車を成られても銀桂が捌けていることが大きく振り飛車が指せるようです。このような変化を瞬時に見切り、序盤からかなり早指しで飛ばした菅井王位の大局観が光りました。

ただし、▲7四歩に対して藤井七段が△7五銀、▲4六角、△6四銀と臨機応変に引き上げたのも好判断で、実際の形勢はまだ難解です。しかしこの辺りから両者の残り時間に大きな差がついたこともあり(持ち時間4時間の対局で一時は2時間以上開きました)、実戦的には菅井ペースの流れになりつつあったのかも知れません。

後手が一歩リード

中盤の殴り合いの末、後手が△5七銀と打った局面。菅井王位は▲同角と応じましたが、△同角成、▲6三歩成、△8九歩成、▲5三と、△6八馬、▲4二と、△同金、▲6八金と一直線に進んでみると、直後の△7七歩成が味の良い追撃となり、後手がリードを奪いました。

▲5七同角では単に▲6三歩成と踏み込み、△6八銀成、▲同金、△8九歩成、▲9一角成と進める手も有力でした。

長期戦が仇に

6三の角で▲8一角成と成った局面。藤井七段は△6九飛成、▲5八銀と使わせてから△7九飛成と指しましたが、以下▲5四馬、△5一香、▲7六馬が粘り強い指し回しで、先手玉の耐久力がかなり上がったことでよりが戻りました。

感想戦では菅井王位は△6九飛成に代えて△5七桂を気にしておられたようで、▲3九金と効かしてから△6八飛成とすれば、先手は本譜のように手順に玉を固められないため後手がリードを保てたようです。藤井七段としては、先手の戦力を受けに使わせて息長くさす方針だったと思われますが、この後菅井王位に巧みに攻めをつながれてしまいました。

執念の粘り

先手が細かい手筋を駆使して徐々に後手玉に迫っています。苦戦を意識されていたであろう藤井七段はここから△7四竜と粘りに出ました。持ち時間が切迫する中(菅井王位は2時間近く残しています)、指し手のみならず手つきからも藤井七段の執念が感じられましたが、以下▲4二桂成、△同金、▲4六角成、△5二香、▲5四歩が冷静な対応で、菅井王位が僅かなリードを維持したまま推移しています。

王位の貫禄

▲3四銀と打った手に対し、△6四角、▲4六角、△同角、▲同歩、△8八角と進めた手順が直接的な敗因となり、▲5一角が4二金を睨みつつ▲6一歩成を狙う痛打となりました。ただしここでは代わる頑張り方も難しく、持ち時間が有り余っている菅井王位に正確に対応されるとどうしても後手が勝てない局面だったようです。

本局は中盤までは藤井七段がやや指せそうな局面が目立ちましたが、菅井王位の抜群の大局観と振り飛車の経験値に裏付けされた早指しに対して長考を余儀なくされたことで、実戦的には持ち時間の差により勝ちづらい展開となってしまいました。終局直後の藤井七段は首が90度近く曲がるほどガックリと項垂れていましたが、中終盤で一手のミスも見られなかった菅井王位の正確な指し回しを称えるべきでしょう。

菅井王位は藤井七段への対抗心を様々な場面で公言されている珍しい棋士ですが、1年前の初対戦に続いて本局でも見事に貫禄を見せつける形となりました。両者の直近の活躍を見ると、より大きな舞台で激突する日も遠くはなさそうです。

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