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斎藤七段が中村王座に勝利、初タイトルへ前進する勢い溢れる指し回しを徹底検証

time 2018/09/20

第66期王座戦第2局、中村太地王座vs斎藤慎太郎七段の対局は、斎藤七段が138手で勝利し、通算成績を2勝0敗としました。


やや無理気味な攻めを巧みに繋げた斎藤七段の勢い溢れる指し回しを検証します。

出典:Abema TV

用意の作戦

先手番の中村王座が角換わりを選択し、序盤早々に仕掛けました。

玉や金を一歩も動かさないまま、いきなり▲3五歩と仕掛けたのがいかにも現代的な発想でした。部分的には既に知られている仕掛けではありますが、1筋の突き合いもない段階での開戦となるとかなり珍しく、開始から30分と経たないうちにこの局面を迎えたことからも中村王座の深い研究が伺えます。

△同歩、▲4五桂に対して△2二銀や△3四銀として△4四歩を狙われる手が気になりますが、▲1五角や▲6六角などの筋があるため先手の攻めを振り解くのは容易ではないようです。本譜は斎藤七段が△4四銀と上がったため、▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲2九飛と進み、一転して先手は桂の働きと持ち歩を、後手は歩得を主張する持久戦になりました。

主導権を奪還

玉形を整えた先手が再び▲2四歩、△同歩、▲同飛と合わせて揺さぶりをかけた局面。平凡に△2三歩では▲3四飛と歩の裏に滑り込まれる手が厳しいため、後手は△3七歩成、▲同金と成り捨ててから△2三歩と受けました。▲2九飛と引かれた局面は歩得と3筋の垂れ歩が消えてしまいましたが、代わりに得た手段で△7五歩、▲同歩、△8六歩と反撃に転じます。

後手としては数手前まで6二金を動かしながら千日手辞さずの構えだっただけに、攻勢に回れたのは不満の無い展開でしょう。ただし長引けば先手の持ち歩や後手玉の薄さも物を言いそうな局面でもあり、実際の形勢は難解です。

強襲

数手進み、先手が3筋から攻め合いに出た局面。△4五桂の一手に見えましたが、斎藤七段は何と△4五銀(!)と食いちぎりました。▲同歩に△2五桂が狙いの一手で、7六の傷や3七の浮き駒を抱えた先手は▲同飛とは取れないだろうと主張しています。

それでもあえて▲同飛と取る手も有力でしたが、中村王座は夕食休憩中も対局室から一歩も離れず長考を続けた末に▲4七金と辛抱しました。後手は当然△7六桂と追撃します。

茨の道

ここで▲7七玉と自然にかわしておけば後手の攻めは細かった気がしますが、中村王座は▲7九玉、△8八歩、▲7七桂と、後手の攻めを徹底的に切らしに行く順を選びました。7六の桂を取りきってしまえば先手が一気に勝勢になるため、受け切り勝ちを目指す方針は魅力的ではありましたが、そこで△8九角と打ち込んだ手が見えづらい妙手で、金駒の入手が確実になった後手の攻めは簡単には切れなくなりました。

この後も中村王座は頑強に受け続けましたが、後手が小駒だけの攻めを巧みに繋げて徐々に盤上を制圧して行きます。

受けが利かなくなった中村王座が、豊富な持ち駒を活かして最後の勝負に出た局面。ここで強く△7三金と上がった手が決め手でした。攻めを催促された先手は、駒を渡さずに詰めろを続ける手段がありません。

本局は中村王座が序盤から積極的に動きましたが、斎藤七段が中盤で巧みに体を入れ替えて反撃に転じました。厳密にはやや攻めが細そうな印象でしたが、中村王座の頑強な受けを巧みにかいくぐって寄せ切ってしまった技術はさすがでした。一方の中村王座は早くも後がなくなってしまいましたが、次局以降に底力を発揮出来るでしょうか。

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