将棋を100倍楽しむ!

豊島棋聖が王位奪取!一分のスキもない快勝譜を徹底検証

time 2018/09/27

第59期王位戦七番勝負第七局、菅井竜也王位vs豊島将之棋聖の対局は、豊島棋聖が127手で勝利し、4勝3敗で王位を奪取しました。


僅かなリードを最終盤まで保って勝ち切った、新王位の強さが際立った快勝譜を検証します。

出典:Abema TV

相穴熊

第6局まで先手番が全勝してきた流れを受け、注目された振り駒はと金が3枚で豊島棋聖の先手に。戦型は第6局と同じく後手の菅井王位が四間飛車穴熊を採用したのに対し、豊島棋聖は居飛車穴熊から手損を厭わず角交換を挑み、さらに銀冠穴熊へ組み替える意欲的な指し回しを見せました。

先手が▲7八金と寄った瞬間に菅井王位が△8四角と打ち、豊島棋聖が▲6六歩と応じた局面で封じ手を迎えました。直前の▲7八金は5七銀が浮くだけに思い切った一手で、本譜の△8四角以外にも△3九角や△6九角のような打ち込みにも用意がないと指せない一手でした。菅井王位としては無条件で玉を固められてしまうと陣形差が目立ってしまうため、この瞬間の開戦は必然でしょう。

封じ手は最も自然な△6六同歩でした。一気に決戦に突入する可能性もありそうでしたが、豊島棋聖が▲3七角と、△7三角と防ぐ自陣角を放ったため、以下△6七歩成、▲同金、△7二銀と進み、一転して渋い応酬が続きました。

王者の大局観

浮き駒だった金銀を活用しつつ飛車も左辺へ転換させ、先手の2筋突破が間に合わない展開に持ち込んだ後手がうまく指しているかと思われましたが、ここで▲7七桂(!)が形に捉われない手厚い一着でした。いわゆる「穴熊のパンツを脱ぐ」手は相当な覚悟が必要ですが、長期戦になれば今度こそ▲2四歩が間に合って来ます。そこで菅井王位は△4六歩、▲同歩、△7三角とさらに動きましたが、▲7五歩と玉頭の厚みを活かした攻めが絶好の一手となり、徐々に先手がペースを掴んで行きます。

後手としてはほぼ目一杯駒を活用出来ているだけに、この辺りで何かリードを奪える順がありそうでしたが、本譜に変わる案も難しかったようです。逆に言えば、▲6六銀~▲6五歩~▲7七桂と厚みを主張して指せる、と見切っていた豊島棋聖の大局観が光りました。

最速の勝ち

後手が▲5一角の飛車取りを手抜いて6七のと金を△7七とと寄った局面。▲同金と取ると△6九飛成でいきなり逆転模様ですが、金取りを手抜いて▲6二角成と踏み込んだのが厳しい一着でした。△8八とと王手で取らせるだけに怖い順ではありますが、▲同飛、△6二金の瞬間に▲9四歩、△同銀、▲9三歩と一気に畳みかけます。

△9三同桂に対し、36分の考慮の末に▲8二角成と切った手が、勝ちを読み切った決め手でした。以下△同玉、▲7三銀、△同金、▲同歩成、△同銀に▲7四香が詰めろとなり、絶対に詰まない玉形を活かした先手の一手勝ちが明らかになりました。

本局は豊島棋聖が序盤の僅かな模様の良さを最終盤まで維持して勝ち切った印象で、菅井王位の敗着を特定することは極めて困難でしょう。逆に言えば、ほぼミスが見当たらなかった菅井王位の指し回しをもってしても一度もチャンスを見いだせなかったという事実は、現在のトップ棋士同士の戦いにおける「振り飛車」と「後手番」の苦労の多さを物語っているのかも知れません。

終局後に二冠達成の感想を求められた豊島新王位は、「少し前からすると想像もつかない」と謙遜されていましたが、幼少期から棋界の注目を一身に集めていた才能からすれば、昨年度まで無冠に甘んじていたことの方が今となっては信じられない事実でしょう。王将戦では挑戦者決定リーグに在籍し、順位戦も3連勝スタートを切るなど、他棋戦でも相変わらず高勝率を収めている新王位が、一気に豊島時代を築いたとしても何ら不思議ではありません。

宜しければクリックをお願いします
ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
bougin にほんブログ村 その他趣味ブログ 将棋へ
 



down

コメントする







 当サイトについて

ベンダー

ベンダー

将棋界の最新ニュース、独自のコラム、詳しい棋譜解説から将棋めし情報まで、将棋を100倍楽しむためのコンテンツをご紹介します。
当サイトはリンクフリーですが、記事・画像の無断転載は固くお断り致します。相互リンクをご希望の際は、サイト下部のお問い合わせフォームよりご連絡下さい。
管理人の棋力はアマ五段くらい。好きな棋士は谷川浩司九段、「将棋の渡辺くん」に登場する渡辺棋王、佐々木勇気六段の話をする三枚堂達也六段、「りゅうおうのおしごと!」に登場する空銀子女流二冠です。

メールマガジン登録

当サイトの更新情報をメールでお知らせします。受信箱を確認して登録手続きを完了して下さい。