2018/10/16
史上最多となる29連勝を達成し、その後も高勝率をキープしている藤井六段。あまりの凄さに形容詞が思いつかない記録の数々ですが、ここでは統計学の観点から、藤井六段の成績が如何に凄いのを示すいくつかのデータを計算してみました。
29連勝について
- 特定の期待勝率の棋士が「デビューから29連勝」する確率は以下の通りです
- 期待勝率 29連勝する確率
- 50% 約5憶分の1
- 60% 約3百万分の1
- 70% 約3万分の1
- 80% 0.15%
- 90% 4.7%
- 95% 22.6%
- 期待勝率 29連勝する確率
- 「デビューから」という条件を緩和してみます。比較対象として、2018年2月21日現在、羽生竜王の通算対局数は1962局、勝率71.17%です。この成績をもってしても、「羽生竜王と同じ勝率の棋士が同じ対局数を戦い、どこかのタイミングで29連勝以上する確率」は9.6%しかありません。羽生竜王の実際の連勝記録は22連勝です。
- 対象を全棋士に広げると、棋士数を312(新四段の古森四段の棋士番号)、通算対局数を730局(全棋士平均)、期待勝率を平均50%及び標準偏差10%だと仮定すると、「全棋士の中の誰かが、どこかのタイミングで29連勝以上する確率」は約70%です。
さすがに「全棋士の誰か」が「いつか」29連勝を達成していた確率を考えると、統計学的には実現していてもおかしくはない記録、ということになるようです。やはり真の凄さは「デビューから」という点に集約されますね。
勝率83.6%について
- 藤井六段の対局数(67局、56勝11敗)から求められる勝率の標準誤差は約4.5%です。言い換えると、藤井六段の期待勝率は「95%の確率で74.7%と92.5%の間にある」、と言えます。
- トップ棋士はトップ棋士同士で対戦することが増えるため、藤井六段の勝率と単純比較はできません。そこで、主な棋士の「初タイトルを獲得した前年度までの成績」を比べてみます。
- 谷川浩司九段:203勝100敗、勝率67.0%、95%信頼区間61.7%~72.3%
- 羽生善治竜王:162勝43敗、勝率79.2%、95%信頼区間73.4%~84.6%
- 渡辺 明棋王:122勝54敗、勝率69.3%、95%信頼区間62.3%~76.1%
羽生竜王はデビューから4年目まで勝率79.2%と、さすがに高い勝率を残されています。藤井六段は現時点でそれを上回っていますが、この両者の成績は信頼区間が重なっているので、統計学的には両者の期待勝率が著しく異なるとは言えません。
また、羽生竜王と渡辺棋王はプロ5年目、谷川九段は7年目に初タイトルを獲得しています。これらの中学生棋士の成績を現時点では上回っている藤井六段がこのまま高勝率を維持すれば、プロ4年以内、つまり高校在学中のタイトル獲得も十分あり得ると言えそうです。
2020年、将棋界は東京オリンピックにも負けない盛り上がりを迎えるかも知れませんね!