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将棋名局集「▲4八金」:森内vs羽生 第63期名人戦第2局

time 2018/02/23

名人戦で幾多の名勝負を繰り広げた森内九段と羽生竜王。「鉄板流」森内九段の対局の中でも屈指の受けの妙手が飛び出した一局です。


第63期名人戦七番勝負第2局

2005年4月25日
森内俊之名人(0勝) vs 羽生善治4冠(1勝)
対局場:三重県鳥羽市「戸田家」
持ち時間:各9時間

前年に名人を獲得し、自身初の3冠となった森内名人。しかし、その後渡辺明六段にフルセットの上に竜王位を失うと、王将戦でも羽生3冠にストレートで敗れて失冠するなど、2004年度は苦しい一年となりました。

一方の羽生4冠は、2004年度は名人こそ失ったものの、その後王位、棋王、王将に復位するなど、7割7分の高勝率を挙げ、A級順位戦も危なげなく勝ち抜いて来ました。

第1局は羽生4冠の快勝で幕を開けます。この対局を含め、直近の対羽生戦で8連敗を喫していた森内名人は、先手番となる第2局では早くも正念場を迎えていました。

羽生4冠の1手損角換わりに、森内名人は棒銀で対抗。しかし後手が飛車を4筋へ転換して棒銀を牽制すると、▲3六銀と出て銀の繰り替えを見せます。

まだまだ駒組が続きそうな局面ですが、羽生4冠はいきなり△3五歩と仕掛けます。△7二玉以下の展開との比較は難しいと思いますが、3二の金があまり持久戦に向かない構えであることや、この瞬間の双方の玉型を比べると8二銀より8八銀の壁の方がより悪形である、という判断なのでしょう。

▲4七銀と穏やかな展開を目指す手もありそうでしたが、森内名人は強く▲同銀と応じ、△4五歩、▲6五角、△4六歩、▲4四歩と切り返しました。

2筋突破が受からず、歩を渡すと▲9二歩が厳しい後手が忙しいようですが、△6四角、▲2六飛にばっさりと△4六角と切ってしまうのが好判断でした。▲同飛、△5五銀、▲4八飛、△5六銀、▲同歩、△2四歩と進み、手順に先手の二つの狙いが消えています。ここではやや後手が指せそうです。

△6四角以下の手順は先手の駒をさばかせる意味もあるので一見指しにくそうですが、この場合は非常に働いている5六角と4六銀を盤上から除去できることと、それによって後手の4一飛の活用のめどが立ったこと、さらに▲5六同歩と先手玉のコビンを開かせることができることなどが大きいのですね。

先手玉の玉型の悪さを最大限につきながら、自陣はいつしか7二玉、5三金と引き締めている、羽生4冠の構想力が光ります。

「鉄板流」▲4八金

後手が△4五歩と打って先手の角道を遮断した局面です。森内名人が頑強に粘り、いつしか壁銀がいた8八の地点まで玉が逃げ延びていますが、△4五歩と角道を止められ、持ち駒の少ない先手は△6七成銀の詰めろが非常に受けにくい状況です。

しかし、ここで▲4八金(!)という絶妙手が飛び出します。△同成銀と取るしかありませんが、▲6六香で攻守逆転です。▲4八金と捨てる犠打によって、先手玉に詰めろがかからないどころか、有効な攻め筋すら見当たらなくなってしまいました。

さかのぼって△4五歩では△7八馬と切り、▲同銀なら△6八成銀、▲同玉なら△6九金と、とにかく▲4八金の体当たりを食らっても攻めを続けられるように指すことが急務でした。しかし、相手に駒を渡す攻めであり、先手玉をすぐに受けなしに追い込めるわけでもないので、指しづらい手ではありますね。

ここで▲7三成香と寄ったのが気がつきにくい決め手で、先手の勝ちが決まりました。△同桂に▲5二角成で、詰めろの連続で寄せ切れる形です。

▲4八金は、ゴール目前へ迫った△5七成銀という相手の司令塔に対して、後ろから追いついたセンターバックがファールにならない絶妙なタックルでボールを奪ったようなスーパープレーでした。オールドファンの方なら、中原vs米長戦の▲5七銀を思い出したのではないでしょうか。

対羽生戦の連敗を止めた森内名人は、この後フルセットの激闘の末に名人位を死守しました。そして2016年に佐藤天彦名人が誕生するまで、名人位は10年以上に渡ってこの二人が独占し続けることになります。

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