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将棋名局集「▲6七金」:大山vs谷川 第50期A級順位戦

time 2018/03/03

今期のA級順位戦は史上初の6者プレーオフとなりましたが、A級順位戦最終局では過去にも数多くのドラマが生まれています。本局はその中から、大山15世名人が現役最後の年に4者プレーオフへの進出を決めた一戦です。


出典:読売新聞

第50期A級順位戦

1992年3月2日
大山康晴15世名人(5勝3敗) vs 谷川浩司4冠(6勝2敗)
対局場:東京「将棋会館」
持ち時間:各6時間

名人通算18期、A級・名人在位は45年連続など、不滅の大記録をいくつも打ち立てた大山15世名人。しかし晩年は体調を崩されることも多く、この年は6回戦を終えた後に3勝3敗に2度目のがん手術を受けています。しかしそこか7,8回戦と連勝し、69歳にして最終局まで挑戦の可能性を残していました。

対する谷川4冠はまさに全盛期の真っただ中。この年も7割を超える勝率を挙げ、残り1期に迫った永世名人の資格獲得に向けて順位戦も首位を走っています。

大山15世名人の向かい飛車に対し、谷川4冠は居飛車穴熊へ向かいます。

後手は序盤早々に先手の急戦策を回避するために6四歩と突いていますが、それを見て大山15世名人は▲6八飛、△3一金、▲6五歩と動きます。以下、△8六歩、▲同歩、△6五歩、▲同飛、△6四歩、▲6九飛と進み、先手の飛車先が軽い好形です。

大駒の働きの差が大きく、駒損ながら先手がやや指せる局面です。ここから▲4四桂、△4一角に▲5五歩が絶品の味。7三角の潜在的な睨みを消しつつ、6六竜の可動域を増やし、さらに将来的な5筋からのと金攻めを見据えた一石三鳥の一手で、後手から早い攻めの手段がないことを見越しています。

後手に一瞬のチャンス

後手に一瞬のチャンスが回ってきた局面。本譜は△9五角と逃げましたが、▲4三銀、△5三金、▲3四銀成とされ、先手の抑え込みがより強固になりました。△9五角では代えて△2三角とこちらの角を使うことが急務で、▲8四歩に△4四金(▲同歩は△6七角成)と急所の桂を取り払えば、後手の攻めは依然としてやや細いものの穴熊の堅さも大きく、大変な勝負でした。

受けの決め手、▲6七金

谷川4冠も必死に攻めの糸口を探しますが、先手は成り駒で盤面を制圧し、スキを与えません。

そしてここで▲6七金(!)が後手の望みを完全に打ち砕く受けの決め手でした。後手の攻めは完全に切れていて、先手はと金を量産するだけで勝てる局面です。

大山将棋の名局には、序盤の革新的な新構想や、終盤に派手な決め手が飛び出すものはあまり見られません。しかし、優勢な局面を確実に勝ち切り、不利な局面で決め手を与えない勝負術は、他の棋士の追随を許しません。万が一にも逆転を許さない本局の手厚い指し回しからは、そんな大山将棋の神髄が垣間見えます。

69歳、しかもがん手術を受けたばかりの状態で、時の4冠王を相手に完封勝ちを飾った大山15世名人。プレーオフでは残念ながら敗退してしまいますが、現役最後の年となったこの年の棋譜を見るだけでも、大山15世名人が如何にずば抜けた棋士であったかが分かります。

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