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藤井六段優勝の16年前、杉本七段の人生を変えた朝日杯

time 2018/03/11

藤井聡太六段の師匠として、今やお茶の間で最も有名な棋士の一人となった杉本昌隆七段。今月8日に行われた藤井六段との師弟対決では、局後のインタビューでやや目を潤ませながら弟子を称える姿に心を打たれた方も多いのではないでしょうか。


出典:毎日新聞

そんな杉本七段は、2002年に行われた第20回朝日オープン将棋選手権で準優勝しています。全棋士参加棋戦での準優勝と言えば大変な実績ですが、実は杉本七段はこの活躍が結婚のきっかけにもなっていました。

杉本七段の人生を変えた朝日杯

杉本七段の披露宴で司会を務めた、神吉宏光七段の新郎新婦紹介の言葉です:

新婦は、兵庫県西脇市で生まれ、高校まで過ごした後、名古屋市立栄養専門学院を卒業、現在は栄養管理士の資格を持つ、運動全般の指導員としてご活躍です。

体力増進をファンに勧められて、新郎が通っていた施設に、新婦が就職されたことから二人の物語が始まります。

はじめて友美子さんの指導を受けた杉本六段は、明るくて優しそうな人だなと一目ぼれしてしまいました。しかし友美子さんにとってはワンオブゼム、何も特別な印象はなかったそうです。将棋と違って女性には全然強くない杉本さんのことです。九つという年の差もあって、二人の仲は遅々として進みませんでした。

そんな二人に転機が訪れます。ある日曜日の午前、何気なくテレビのチャンネルを廻した友美子さんの目に、見憶えのある顔が映ったではありませんか。何と、あのおとなしい杉本さんが、気迫をみなぎらせて将棋を指している、そういえば、職業はキシとか聞いてたけど、キシってこういう人のことなんだ。それにしても、まるで別人のよう。

友美子さんは、盤面や解説には退屈しながらも、時々映る杉本さんの顔を、男らしいと感じながら見続けたのでした。

テレビ見ましたよ、と友美子さんに云われた時、本当ならここから、序盤中盤と指し進めて行くところなのに、臆病な杉本六段は、まだ、対局を開始すべきかどうか、長考に沈むばかりだったのです。

そんな新郎が見るに忍びなかったのでしょう。神様はキューピットをお遣わしになりました。友美子さんの目に、杉本六段朝日オープン準決勝進出の記事が触れたのです。その記事を読んだ後、職場で新郎に会った友美子さんは、杉本さん、がんばって次も勝って下さいねと激励してくれたのです。ハッと我に返った新郎は、ここで勝負手を放ちました。では、僕が勝ったら食事につき合ってくれませんか。新婦はノータイムでニッコリ頷きました。

こうして二人の仲は急速に深まり、晴れてきょうの佳き日を迎えることとなったのですが、実は新郎が告白するには、「あの勝負手は今思えば次善手だった。最善手は、次の将棋に勝ったらではなく、優勝したらだった。そう約束していれば、あの時タイトルは―」

そらアキマヘン。そんなん虻蜂取らずになってたらどないするねん。(大笑い、拍手)

(「将棋世界」2004年3月号)

杉本六段の準決勝の相手は中原誠永世十段。当時全盛期は過ぎていたとは言え、タイトル通算64期の言わずと知れた大棋士です。しかし、将棋の神様が味方したのか、杉本六段は四間飛車穴熊から会心の差し回しで快勝しています。

ちなみに、森下卓九段も自身が決勝に勝ち進んだ際に、対局場に勤めていた現在の夫人と出会っています。朝日オープンは棋士にとって何かと良縁に恵まれる棋戦のようです。

杉本七段の人生を変えた朝日オープン将棋選手権。それから16年後に、藤井六段が公式戦初優勝を飾ったのが同じ棋戦だということも、運命の巡り合わせでしょうか。

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