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永瀬七段が佐藤名人に快勝、激戦の王座戦本戦屈指の好カードを徹底検証

time 2018/05/15

第66期王座戦挑戦者決定トーナメント一回戦、佐藤天彦名人vs永瀬拓矢七段の対局は、永瀬七段が69手で勝利しました。


藤井聡太六段が一早くベスト8進出を決め、最年少タイトル挑戦記録が掛かっている王座戦の一回戦屈指の好カードとなった将棋を検証します。

佐藤名人(左)、永瀬七段。出典:日本将棋連盟

名人戦を睨んだ戦い

先手となった永瀬七段の角換わりを佐藤名人が受けて立つ形となり、後手が早繰り銀に構えました。

8-9日に行われた名人戦第3局でも、佐藤名人は後手番で得意の横歩取りではなく角換わりを採用しています。長い七番勝負を見据えての変化球なのか、それとも横歩取りから序盤早々に大決戦となった第1局の変化の中に自信の持てない順があったのかは分かりませんが、いずれのケースでも名人戦で回避した横歩取りを本局で指すとは考えづらいため、ある意味予想された戦型ではあります。

ここまでは▲4八金と▲2五歩の違い以外は名人戦第2局と同じ進行です。その将棋は△6四銀から先攻した羽生竜王に佐藤名人がうまく対応して快勝しましたが、本局では佐藤名人がいきなり△7五歩と仕掛けました。善悪はともかく、後手番でも積極的に主導権を握りたいという強い意志が感じられる強行策で、現代将棋の風潮と、昨年の電王戦のPonanzaとの戦いをきっかけに変化している佐藤名人の棋風をを如実に表しています。

ただし、本局では相手が棋界屈指の受け将棋の永瀬七段ということもあり、この積極性は結果的には実を結びませんでした。

利かないブレーキ

後手は突き捨てた歩を飛車で取り返しましたが、代償に△7二金と玉から離れる形を強要されています。ここで△8四飛と戻り、△7五銀~△8六歩を見せつつ第二次駒組へ移行していれば、バランスの良い後手陣に対して先手から打開する構想も容易ではないため、一局の将棋でした。

ただし、この局面は直前に△8四飛~△7四飛と取ったばかりであり、かつ先手には▲6八玉~▲7九玉という明らかに大きなプラスの手があること、そして序盤に△7五歩といきなり仕掛けた積極策の流れを踏まえると、佐藤名人としては流れを落ち着かせる構想は指しづらかったのだと思われます。

本譜は△5五銀、▲5六歩、△7六歩とさらに斬り込みましたが、▲5五歩、△7七歩成、▲同桂と自然に応じられて形勢を損ねました。銀交換を果たしたものの先手陣は▲6七銀+▲7八金の連結が依然として堅い一方、後手は歩切れや飛車の狭さ、そして5三の地点が薄い△4二玉への無言の圧力となっている▲5五歩や▲7七桂の存在が気になる形です。

負けない将棋

攻めを繋げるしかない後手が銀を捨てて強襲を仕掛けた局面ですが、この瞬間に▲1五角と打ったのがぴったりの反撃でした。合い駒がない後手は逃げるしかありませんが、△5二玉や△4一玉には▲3七飛、△2九角成に▲8四銀から飛車を入手され、次の▲5一飛が激痛となるため支えきれません。本譜はやむなく△3一玉とかわしましたが、▲3七飛、△2九角成に▲5一角成と手順に急所の地点に成られたのが大きく、粘りが利かない形になりました。

最終盤で後手が△1八飛と「キャンセル待ち」をしたところですが、△5七香を受けた▲5八銀が当然ながら手堅い決め手でした。後手玉は受けが利かない形なため、△5七香、▲同銀、△7八飛成と首を差し出しましたが、香を入手したところで▲3二銀成から即詰みに打ち取った永瀬七段が勝利しました。

永瀬七段は昨年度は8割弱の高勝率を収め、順位戦B級2組昇級という結果も残したものの、3月に棋王戦でフルセットの末に敗れたことでどうしても惜敗の印象が強く残ってしまいました。しかし他棋戦では安定して上位に食い込む活躍を続けており、1月の朝日杯では敗れた佐藤名人に雪辱を果たしたことで、王座戦でも挑戦まで残り3連勝と迫っています。過去2度のタイトル挑戦では羽生棋聖と渡辺棋王にいずれも2勝3敗と惜敗しているだけに、比較的世代が近い中村王座がタイトル保持者である王座戦では、3度目の正直のチャンスを虎視眈々と狙っていることでしょう。

一方の佐藤名人は、名人戦第2局の快勝で復調を予感させていましたが、その後の第3局と本局は一転して完敗となってしまいました。19日から始まる名人戦第4局までは日がありませんが、地元福岡で行われる正念場の対局で嫌な流れを払拭することは出来るでしょうか。

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