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今泉四段が藤井七段に勝利、天才をねじ伏せたコンセン流の勝負勘を徹底検証

time 2018/07/15

第68回NHK杯将棋トーナメント、藤井聡太七段vs今泉健司四段の対局は、今泉四段が159手で勝利しました。


史上最年少で四段昇段を果たした藤井七段と、史上最年長でプロ編入を果たした今泉四段との息詰まる大熱戦を検証します。

激しいねじり合い   

今泉四段の中飛車に対し、後手の藤井七段は左美濃で対抗しました。仕掛けの前後では堅い玉形から自然に戦いを起こした後手がやや指せそうな展開でしたが、今泉四段も徐々に持ち前の中終盤の粘り強さを発揮していきます。

その一端が図の△7七歩成に対する▲9五角でした。△7三角と打たれると1手損のようですが、▲同角成、△同桂とあえて桂を跳ねることで後々2度目の▲9五角が両取りになるように浮き駒を作っています。こう指されると藤井七段も飛車を見捨てて斬り合うよりなく、激しい攻め合いに突入しました。

鋭手さく裂

数手進み、駒得の上にと金や右桂も働きそうな後手が順調に攻めているようですが、ここで▲5三角成と切ったのが鋭い踏み込みでした。△同金、▲4二銀、△同金、▲同竜、△5二金打に、さらに▲3二竜と2枚目の大駒も切り飛ばし、△同玉に▲4三銀と一気に敵玉を露出させた先手がペースを握りました。

▲5三角成以下の攻めがこれほど厳しいとなると、さかのぼって△6八角では△6八と(!)とあえて捨てて角を引かせる手も有力でした。ただしこれはあくまでも結果論で、早指しの中で角と竜を切った先の展開に光明を見出した今泉四段の勝負勘を称えるべきでしょう。

無言の圧力

その後藤井七段にややミスが出たこともあり、先手が勝利に近づいています。ここで▲4二金と打っていれば後手玉は受け無しで、先手の快勝譜となっていましたが、△3九銀以下の王手ラッシュを覚悟しなければなりません。実際は先手玉に詰みはないもののかなり王手は続く形で、先手にとっては藤井七段の驚異の詰将棋能力がかなりのプレッシャーとなったことは間違いないでしょう。

本譜は今泉四段が▲5八金打と受けたため、△4六角成、▲3六金、△6四馬と進んで後手が息を吹き返しました。

細すぎた勝ち筋

連続して金を自陣に投入した先手は攻めがやや細くなってしまいましたが、それでも次の▲4五香を見せて相手に楽をさせていません。藤井七段は△3六桂と美濃囲いの急所を攻めましたが、▲同金、△同歩、▲4五香、△4六金に、▲4四香、△同玉、▲7三角が決め手になりました。攻守の要である△6四馬を攻められた後手は思いの他手段がなく、先手玉は桂さえ渡さなければ瞬間的に絶対詰まない形です。

当然の一手に見えた△3六桂では、△5七歩と横から攻めて6四馬は守備に専念させておけば後手がリードを保っていたようです。しかし、横からの攻めに強い美濃囲いを最終盤でわざわざ横から攻めるのは非常に違和感のある方針で、△3六桂だとはっきり負けると読み切らない限りは30秒将棋で他の手を選択することはほぼ不可能でしょう。

コンセンの強さ

今泉四段は「コンセン」の愛称を持つほど中終盤の混戦で力を発揮する実戦派で、プロ入り前は持ち時間が短いアマチュア棋戦でほぼ無敵の強さを誇るなど、早指しを得意とするタイプです。本局の終盤戦はまさに無敵のアマチュア時代を彷彿とさせる指し回しで、見事に難敵を撃破されました。

一方の藤井七段は以前早指しはどちらかというと得意ではない、と語っておられましたが、それでも今泉四段には大変失礼ながら初戦敗退は波乱と言えるでしょう。何が起こるか分からないテレビ棋戦の怖さが現れた形となりましたが、今年度は勝ち進んでいる他棋戦でのさらなる活躍に期待しましょう。

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