2018/10/16
公式戦15連勝中と、昨年の連勝フィーバーを彷彿とさせる勝ちっぷりを見せている藤井聡太六段。奇跡の連勝記録再更新へ向け、最大の試練となりそうなのが、今月22日に行われる糸谷哲郎八段戦です。
元竜王で順位戦A級というトップ棋士でありながら、将棋界有数の個性派棋士でもある糸谷八段の経歴をまとめました。
主な活躍
- 1988年10月5日生まれ(29歳)、広島県出身
- 1998年:奨励会入会
- 2006年:四段、新人王戦優勝
- 2009-2010年:NHK杯2年連続準優勝
- 2014年:竜王獲得、八段昇段
- 2016年:王座戦挑戦
- 2018年:A級昇級
「怪物」伝説
2006年、17歳でプロ入りを果たした糸谷四段。奨励会時代から実力に定評がありましたが、デビュー戦で若手実力者の橋本崇載六段を破ったことで一気にその名を知らしめました。
一手損角換わりの出だしから、後手の糸谷四段の金銀が中段へ繰り出した異様な珍形になっています。橋本六段は▲3五歩、△同金、▲4四角と果敢に攻め、▲5三角成と▲3五角、△同銀、▲2三飛成の両狙いで技が決まったかに思えました。
▲4四角以下、△4八歩、▲同金、△6二玉、▲6六歩、△4五金、▲1七角、△5四銀、▲3五歩、△同金、▲同角、△同銀、▲2三飛成と進みます:
糸谷陣は相変わらずバラバラで、先手に飛車先を突破されてしまいましたが、ここでは何と既に後手が優勢になっています。△1二角、▲2二竜、△7一玉がぴったりの返し技で、▲1一竜に△8九角成と進み、いつの間にか両者の玉の安定度が逆転してしまいました。そして糸谷四段はこれ以降受けの手を一手も指さずに先手を攻め倒してしまいます。
終局後、橋本六段は観戦記者に「怪物です。強すぎる」と漏らしました。力戦型を苦にしない腕力と超が付くほどの早指し、そして橋本六段いわく「一手指すたびに僕の顔をじろじろ見る」眼光鋭い対局姿も相まって、糸谷四段にはこれ以降「怪物」という異名が定着しました。
哲学を専攻するスイーツ男子
プロ入りから1年後の2007年に、糸谷四段は大阪大学文学部に合格し、哲学・思想文化学を専攻します。卒業後はさらに大学院へ進学し、大学院在学中に竜王を獲得したことで異色の高学歴タイトルホルダーとなりました。2017年には修士課程を修了し、トップ棋士としては修士以上の学位を持つ初めての例となりました。
大のスイーツ好きとしても知られ、関西将棋会館の棋士室を訪れる際は差し入れを持参することが多いそうです。同じくスイーツ好きで、糸谷八段の奨励会時代に幹事を務めていた畠山鎮七段とは、どちらがよりおいしいスイーツを差し入れられるかを競うライバル関係にあります。
カードゲームでも無類の強さを発揮し、マジック・ザ・ギャザリングでは2010年の日本選手権でベスト16に入りました。さらに、2017年7月には初体験だったポケモンカードゲームの大会に参加し、「ポケモンワールドチャンピオンシップス」のチャンピオン経験者などが参加する中で優勝を飾っています。
クセになる美声とトーク力
体形に似合わない(?)独特な高い声と観客を飽きさせないトーク力で、解説者としても人気な糸谷八段。
昨年末にはニコニコ生放送で「DJ糸谷哲郎(ダニー)と将棋フレンズの大忘年会SP」という異色の将棋バラエティーが放送され、DJダニーのトーク力が存分に発揮されました。一方、昨年棋王戦挑戦も果たした新進気鋭の後輩、千田翔太六段との対局ではきっちりと勝利を収め、トップ棋士の実力も示しています。
トップ棋士にして個性派、という唯一無二の存在
羽生竜王を始め、将棋界のトップには秀才型の棋士が多く、ファンからするとイベントなどできさくに話しかけることは出来ても、いじるとなると抵抗を覚えることが多いのではないでしょうか。その中で糸谷八段は一流棋士でありながら非常に愛されやすいキャラクターで、普及にも熱心という将棋界にとって貴重な存在です。
藤井六段の圧倒的な人気を考えると、22日の対局では糸谷八段がヒール役に回らされてしまいそうですが、コアな将棋ファンの中には、「怪物」が圧倒的な腕力で天才をねじ伏せる様子を見てみたい方も多いのではないでしょうか。
コメント
[…] 藤井六段の連勝記録に立ちはだかる最大の難敵、糸谷哲郎八段とは? […]
by 藤井六段16連勝なるか?「怪物」糸谷八段と本日激突 | 将棋を100倍楽しむ! 3月 22, 2018 1:00 pm