2018/10/16
渡辺明棋王の3勝2敗で幕を閉じた第43期棋王戦。毎年のように好成績を挙げている永瀬七段は、今年は例年をも上回る勢いで勝ちまくっていたものの、またしても後一歩のところで栄冠を逃しました。敗勢に陥った最終盤で見せた苦悶の表情は、胸を打つものがありました。

努力と才能
そんな永瀬七段の小学生時代からのライバルでもある佐々木勇気六段が、終局後に努力と才能について熱く語っていました:
「いやー・・・複雑ですね。この解説受けたときから複雑な気持ちでしたけど。まあどうせ家にいても気になるだろうなと思って見てましたけどね。まあ彼のそういう生き様を見届けましたね」
「今日メールのコーナーで才能と努力っていうのありましたけど、んー・・・私が一番恐れてることが、何ていうんですか、勝負の世界って努力絶対必要じゃないですか。でも努力して負けた時、『じゃあ次何すればいいの?』って思ってしまうことがあって・・・」
「努力しないで負けたら、次頑張ればいいわけじゃないですか。まだ頑張れる。努力して負けた時っていうのは・・・。 才能がないって思ったらこの世界ちょっときついと思いますし、どうやって立ち直ればいいか分からないんです」
「でも大体、これ自分の経験からそうなんですけど、自分の精一杯、これ以上頑張れないってくらい頑張ったって思ってやられた時っていうのも、結局は相手の方が努力してることの方が多いんですよね。 練習量でも。だから、やはり永瀬さんの努力っていう言葉は、うん、大事ですし、きっとこれ負けたからといって、永瀬さんが明日からもう将棋の駒触らないで遊んだりするイメージはないので。そういうところはすごいですよね」
「・・・私もどうしようかなぁ。永瀬さんに今日VSのお願いをしようかなぁ。どちらがいいですかね?みなさん(笑)」
(ニコニコ生放送より)
努力して負ける恐ろしさ
昨年初タイトルを獲得した中村太地王座も、王座戦後に同じようなコメントを残しています:
「今回は負けた時の恐ろしさが半端ではなかったから、深刻になっていたのかも知れません。勝負の世界で、限界まで頑張ったと思えた中で負けるのはとても苦しいことです。余白を残して負けるのはまだ納得出来る。もっと頑張っていたら・・・と自分で落としどころを作ることで自分を保てるところがありますから。でも・・・今回は負けた時の逃げ場所がなかった。もちろん、4年前も精一杯戦いました。でも、後になって振り返ったら、もっとやれたこともあったと思うんです。今回はやれることはすべてやった。だから怖かったんです」
(「将棋世界」2017年12月号)
殆どの若手棋士が常に精一杯努力しているからこそ、時として才能の違いが物を言ってしまう将棋界。その中で永瀬七段は「将棋は努力。才能はいらない」と言い切るストイックな棋士です。永瀬七段の将棋に対する姿勢を誰よりも知る佐々木六段だからこそ、重みを感じる言葉ですね。
ナガセとユーキ
ちなみに、佐々木六段は今期のC級1組順位戦で9勝1敗という好成績を挙げながら、順位が上だった永瀬七段が同成績だったたため、頭ハネで昇級を逃しています。しかし、その後に何度か永瀬七段の将棋の解説者として将棋番組に登場していますが、永瀬七段の順位戦昇級の話題が出た際も自身の成績については一切触れていません。
C級1組最終局:昇級を争う宿命のライバル、永瀬七段と佐々木六段
来年度は永瀬七段と佐々木六段のVS(二人で行う研究会)が再開され、お二人がこれまで以上に活躍する姿が見たくなりますね。
コメント
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