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大橋四段が谷川九段に勝利、好調同士の白熱のねじり合いを徹底検証

time 2018/04/28

第68期王将戦1次予選、谷川浩司九段vs大橋貴洸四段の対局は、大橋四段が勝利しました。


谷川九段(左)、大橋四段。出典:日本将棋連盟

8割に迫る高勝率を挙げているデビュー2年目の大橋四段と、昨年度はその大橋四段を含め若手実力者を何度もねじ伏せて健在ぶりを示した谷川九段による熱戦を徹底検証します。

光速流の仕掛け

後手の大橋四段の横歩取りに対し、谷川九段は早めに▲3六飛と引き上げるオーソドックスな構えに。青野流や勇気流と比べると穏やかな展開になりやすい戦型ですが、谷川九段は今月17日には絶好調の高見泰地六段を相手に▲3六飛型から速攻を仕掛けて一方的に攻め倒しています。

本局でも谷川九段には「穏やかな展開」にするつもりは全くなかったようです。

後手の△3四銀が先手の飛車にプレッシャーを掛けていますが、▲2八飛と引いた手が決断の一手でした。一見すると消極的な一手のようですが、実際は飛車の当たりを避けたことで次に▲3三角成~▲8二角、▲5六角、▲2三角などの複数の狙いが生じており、後手の動きを催促しています。

後手としても△7四飛で先手の飛車の可動域を牽制していた以上、勢い△7六飛と取るしかなく、▲3三角成、△同桂、▲7七歩、△7四飛、▲2三角、△1四角、▲3四角成、△同飛、▲2三銀と大決戦に突入しました。先手が好調に攻めているようですが、▲7七歩と壁にされたマイナスも大きく、形勢は難解です。また、▲2三角では▲5六角、△1四角では△4二金の変化もそれぞれ有力で、▲2八飛以下の手順の成否は微妙でしたが、序盤から一切の妥協を許さない最近の谷川将棋の厳しさが感じられる指し回しではありました。

自然な疑問手

先手の猛攻が一段落したこの局面で、谷川九段は▲7六歩と自陣に手を戻しましたが、△1二角、▲7七桂、△7一玉、▲1六歩、△8三歩、▲1五歩、△3五角、▲2八飛、△2六歩と進んでみると、飛車が角と持ち駒の銀の目標にされる展開となり、やや形勢を損ねたようです。先手からは1筋を伸ばすくらいしか有効手がないと見切った△7一玉と△8三歩の陣形整備も、地味ながら着実にポイントを挙げています。

本譜の進行を考えると、2四飛は2三角と刺し違える構想が勝った可能性が高く(じっと△1二角と引いたのはそれを避けた一手でした)、一例として▲4一飛、△2二銀、▲2三飛成、△同銀、▲1一飛成、△3一歩まで進めてから▲7六歩と突けば、持ち駒の飛車角だけでは後手から厳しい攻めはなく、長期戦模様にはなりますが先手も十分戦えました。

混沌の玉頭戦

後手の攻めが先手玉の急所を捉えたようですが、谷川九段が手抜いて▲7四歩と攻め合ったのが巧みな勝負手でした。△6七歩成と形を乱される手は通常ならかなり痛いのですが、本局では▲同金、△8九飛に▲5六歩と角の利きで受けた形が意外に耐久力を持っていました。以下△6四歩、▲6二歩、△同玉、▲3五飛と進むと、後手は自然な指し手を積み重ねていたにもかかわらずいつの間にか形勢は互角に戻っています。

均衡が崩れる

お互いに7筋に爆弾を抱えているため必然的に左辺に目が行く局面ですが、ここで▲6五歩と打った手が疑問手だったようです。後手の角筋を止めながら▲6四歩を見せた手ですがこの瞬間がやや甘く、△7六歩、▲同金、△7五香から7筋突破を果たした後手が優位に立ちました。

▲6五歩では▲3三歩と竜を活用することが急務だったようです。△同金、▲3一竜に、△3二金なら▲6三歩~▲1一竜で▲5五桂を狙い、△7六歩なら▲7三桂と攻め合えば依然として難解な形勢でした。本譜は結果的に終局まで▲2一竜が取り残されてしまいました。

先手の必死の抵抗に対し、大橋四段が△5八金と入ったのが洒落た決め手でした。▲同玉は△7六角から詰むため▲3九玉と逃げるしかありませんが、△8八成香、▲同角、△同竜、▲同銀、△3六桂と進み、寄り形となりました。

1月に行われた王位戦のリーグ入りを懸けたこの両者の対戦では谷川九段が先輩の貫禄を示しましたが、本局は中盤の見ごたえある力比べの末に大橋四段が堂々たる指し回しで借りを返しました。8割に迫る高勝率を挙げた昨年度に続き、今年度はここまで早くも5戦全勝とますます勢いを加速させています。これまではプロ入り同期の藤井聡太六段の陰に隠れてしまった感は否めませんが、大橋四段が大舞台に絡む活躍を見せる日は刻々と近づいていそうです。

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