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豊島八段が羽生棋聖に快勝、初タイトルへ好スタートを切った抜群の安定感を徹底検証

time 2018/06/06

第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局、羽生善治棋聖vs豊島将之八段の対局は、豊島八段が99手で勝利しました。


出典:Abema TV

最先端のバランス

振り駒の結果、豊島八段の先手となり、大方の予想通り早いペースで角換わり腰掛銀へ進みました。

後手が△6五同銀と先攻した手に対して、手抜いて▲5八玉と寄った手が不思議な一手。初見では驚きの感覚ですが、この局面自体がまだ前例のある形で、類似形も含めるとプロ間では知られている一手のようです。意味を説明することも難しいのですが、将来△7五歩や△6五桂と7七銀を目標に攻められそうな形なので当たりを避けつつ、△4七銀、▲同金、△3八角の傷を消しているということなのでしょう。△5六銀、▲同歩と5七の空間を開けられる味は悪いものの、後手陣にも▲6三歩の狙いが残っており、お互いに薄い玉形でバランスを保つことが求められる将棋になりました。

本譜は▲5八玉に対し、羽生棋聖はさほど時間を使わずに△3五歩、▲同歩、△4四銀とさらに戦線を拡大しました。

攻め合い

豊島八段はここで昼食休憩を挟む長考に沈んだ末、▲4五桂と跳ねました。後に△4五銀と食いちぎって猛攻を仕掛けられることが見えているだけに思い切った一手で、ここまで突っ張られると3筋や6三に傷を抱えた後手もゆっくりは出来なくなりました。本譜は△8六歩、▲同歩、△5六銀、▲同歩、△6五桂と激しい殴り合いが続きます。

後手の猛攻の間隙を縫って、先手に待望の▲6三歩が回った局面。6二金型のアキレス腱とでもいうべき叩きで、常に応接が悩ましい形です。本局では羽生棋聖は△5二金と逃げましたが、▲7三角が非常に味の良い攻防の一手で、この辺りから徐々に先手の指しやすさが明らかとなって行きました。

△5二金では△7二金の辛抱や、手抜いて△4八桂成と攻め合うなどいくつか選択肢はありましたが、いずれも後手が少し苦しい印象です。後手としては4六や3六の空間を活かした攻めが思いの他難しく、それ以上に▲6三歩と叩かれた傷が痛い展開となっています。

スキがない快勝

後手陣に大きなくさびを効かした後に、ここで一転して▲4六銀と自陣に手を戻したのが緩急自在な指し回しでした。▲6五銀と斬り合っても先手が勝ちそうではありましたが、▲4六銀の一手で薄いながらも広さにより寄せづらい先手玉と、下段に落とされて粘りが利かない後手玉との差が明白になりました。

結果的には中盤以降は羽生棋聖に目立った疑問手が見当たらない中で徐々に形勢に差がつく展開となり、敗因は開戦直後に△3五歩と動いた構想までさかのぼらなければならないかも知れません。中盤以降の豊島八段の指し回しはそう思わせるほどスキがないもので、相手が羽生棋聖であっても全く逆転の可能性を匂わせないほどの安定感を感じさせました。

2日前の王位戦挑戦者決定戦の勢いそのままに挑戦者が先勝し、俄然面白くなった今年度の棋聖戦。羽生棋聖としては本局は後手番だったとはいえ、直近では他棋戦でもやや黒星が目立っており(4月以降は本局を含め4勝7敗)、棋聖11連覇のためには第2局は早くも絶対に落とせない正念場となります。

名人戦第5局に続き、2日前と本日の対豊島戦も羽生棋聖としては珍しくやや差をつけられての敗戦となってしまいました。終局前後の様子も心なしか疲労感が濃かったように感じられ、過密日程による調整の難しさも影響しているのかも知れません。棋聖戦第2局は16日、名人戦第6局は19-20日とまたしてもかなり接近していますが、16日までの中9日でコンディションを整えることが出来るでしょうか。

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