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藤井六段16連勝達成!糸谷八段に快勝、最終盤では気迫のノータイム指し

time 2018/03/22

第66期王座戦2次予選決勝、糸谷哲郎八段対藤井聡太六段の一戦は、89手で藤井六段が勝利し、公式戦の連勝を16に伸ばしました。次戦は28日に王将戦で井上慶太九段と対戦します。


出典:Abema TV

藤井六段の快勝と言える内容でしたが、それ以上に目を引いたのは一直線の斬り合いに飛び込む勝ち方と、最終盤の気迫に満ち溢れた手つきでした。そこからは今後幾度となく顔を合わせるであろう相手に強さを見せつけるような、勝負師の本能が垣間見えた気がします。

機敏な仕掛け

怪力自慢の糸谷八段の得意戦法の一つでもある3三金型の力戦振り飛車に対し、藤井六段が速攻を仕掛けます。

▲6五角の揺さぶりに△5二金と受けた局面。第一感の▲2三歩、△同飛、▲3二角成には、△2四飛、▲2三歩、△4三銀で、△2六歩からの反撃も厳しく先手が自信の持てない展開です。

藤井六段は85分の長考の末、▲2五桂と決戦を挑みました。△同桂、▲2三歩、△同飛、▲3二角成で、今度は△2四飛には▲2六歩があります。糸谷八段は△4三飛と辛抱しましたが、後手玉の薄さが響く変化が多く、先手がリードを奪います。

一直線の斬り合い

△4六歩の銀取りを手抜いて藤井六段が▲4三歩と打った局面。少し前の△8四桂~△7六桂にも手抜いて飛車先を突破するなど、一貫して最短の勝ちを目指しています。

代わりに▲4六銀と平凡に取っていれば駒得の先手が明らかに優勢でしたし、実際に▲4三歩に対して△6八桂成、▲同銀、△4七歩成、▲4二歩成、△5八とならば先手も命がけの攻め合いになります。しかし、感想戦では藤井六段だけがこの先をさらに深く読んでおり、後手の勝ちはついに発見されませんでした。

糸谷八段は▲4三歩に対して△5四角とし、▲4二歩成、△2七角成、▲5二と、△4七歩成と進みます:

後手玉に詰みはなく、▲2七金と取って詰めろを掛けると△6八桂成、▲同銀、△6九角で先手がトン死します。しかしここで一転して▲5九金打と受けたのが決め手で、先手玉に詰めろ続かない形となり、藤井六段の勝ちがはっきりしました。

異様なノータイム指し

糸谷八段が△8二飛と打って最後の粘りを見せた局面ですが、藤井六段は数十秒で▲8五桂と跳ねました。そして△9二玉に▲8二竜、△同玉、▲5二飛と、ほぼ1秒以内で着手しています。解説の棋士も藤井六段が指してから詰みと断定するまでに1分以上かかるような、非常に気が付きづらい筋ですが、後手の合駒が悪く即詰みが生じています。

糸谷八段は数分使ってから△7二飛としましたが、藤井六段はまたしてもノータイムで▲7三桂成。△同玉にも1秒で▲7四歩、△8二玉に間髪入れず▲7三銀。藤井六段の対局はもちろん、公式戦全体でも稀にみるようなノータイム指しで、異様な光景でした。

勝負師の本能

かつての大山康晴15世名人には、対戦相手にコンプレックスを植え付ける勝ち方を意図的に選んでいたかのような将棋が見られます。その代表的な例が、二上達也九段との第41期A級順位戦の最終盤です:

ここでは先手の大山15世名人が勝勢で、▲5一飛成と平凡に王手飛車を掛ければ誰の目にも後手は投了するしかない局面です。しかし、大山名人はここであえて▲5三桂成と指しました。首を差し出した相手の足をノコギリで切るような一手です。二上九段は投げるに投げられず△9二飛と逃げましたが、▲6三成桂で結局は投了に追い込まれます。しかし、心理的なダメージは▲5三桂成によって何倍にも増幅されたはずです。

藤井六段の1秒指しから大山15世名人の▲5三桂成を連想してしまうのは飛躍のし過ぎかも知れませんし、藤井六段が意識的に早く指していたとも思えません。しかし、勝敗が決した局面で、通常ならまず行わないような行動だという共通点はあります。

勝負師の本能が刺激されていたのか、終局直後のインタビューでも、中学卒業に関する質問に対する口調はいつもと違って若干いら立ちを含んでいるように思えました(将棋と直接関係がない質問を飽きるほど受け続けている藤井六段が、これまで毎回丁寧に答えていることの方が、15歳という年齢を考えると驚きですが)。

管理人が知る限り、藤井六段が公式戦で本局のようなノータイム指しを見せたのは、昨年7月に公式戦初黒星を喫した、対佐々木勇気六段戦のみです(ただしこの時は敗勢の局面を追い上げようとする中での指し手なので、本局とは意味合いが異なります)。比較的世代が近い糸谷八段や佐々木六段を、今後幾度となく戦うことになる強敵と認識しているからこそ、無意識のうちに指し手に気迫が表れたのではないでしょうか。

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